4月20日 アンボイ・ロード

 
星がきれいな夜だった。
珍しく高校の時の夢を見た。しかし登場人物は中学のメンツっぽい。
いずれにせよ、あいかわらず勉強をまったくしてなくて焦っているという内容。
こういう夢は、通常の生活ではまず見ない。
旅に出たことで刺激を受け、いろんな記憶がミックスされているのかもしれない。
 
外はまだ暗いけど、テントを撤収して、さあ行くか。
 
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アンボイ28、ニードルズ102。
アメリカの距離表示はキロメートルではなくマイルなので、キロにするには1.6を掛ける必要がある。
つまりアンボイまでは約50キロだ。
そこに店があればいいが、あまり期待はしていない。そのために昨夜は大量の水と食料を買ったのだ。
2ガロン(約7キロ)近い水を背負うと、非っ常ーに重い。
 
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アンボイへの道のりは、残念ながらまたしても走りにくいヒビ割れ路面だ。
センターライン寄りのほうがまだしもヒビ割れが少ないのでまんなかを走っている。
クルマはほとんど通らない。
忘れたころに、1台通る。
そしてその前後は、風の音しかしない。
 
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休憩中、気まぐれにパノラマ撮影。
ラドローまではルート66と並走していたフリーウェイからもだいぶ離れ、
見える範囲ではもうこの道以外には何もない。
なかなかえらいところに来たものだ。
 
こういう旅を、やりたくてやっているのか?と言えば、ちょっと違うかもしれない。
ときどきこんなようなことでもしないと、なにやら生きていて、いたたまれないような気持ちになるからだ。
 
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ラドローから気合いで50キロ走り、アンボイまで来た。
期待してなかったのに、なんとガソスタが!その隣にはモーテルもある。(やってるかどうかは知らないが)
 
アメリカのガスステーションには、ほぼ必ずフードマート(売店)が付属している。
いわばアメリカにおけるコンビニのようなものだ。
よっしゃ、ここで補給ができる!
 
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まずは携行用の水と、ここで一息つくためのジュースを買う。
この店にはなぜか渇望していたスポーツドリンクが置いていなくて炭酸ばかりだったが、たまにはいい。
 
それにしても今日は暑い!暑い!
砂漠には日陰すらないので、人工の屋根の下で休めるのは本当にありがたい。
このベンチでしばらく休憩&昼寝をさせてもらおう。
そうだ、しばらく休むのなら、スマホの充電をさせてもらえないだろうか?
 
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店のオーナーに頼むと、「Go ahead!」と快く充電させてくれた。
外の看板にはROY'Sと書いてあるので、たぶん彼はロイなのだろう。ありがとうロイ。
 
ちなみにこの先にあるエセックスという町に店があるかと聞いたところ、ないとのこと。
それどころか、人も住んでいないという話だ。ええーー。
つまりこれからニードルズまで、120キロぐらい何もないということか?
それでは最悪のケースを考えた場合、やたら重い7キロの水でも心もとない。
途中に民家でもあれば水を分けてもらう必要があるかもしれないな。
あればの話だが。
 
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充電に時間がかかるので、ザックの後ろにつける看板を書いてみた。
文章はいろいろ考えたが、シンプルにCA(カリフォルニア)からFL(フロリダ)まで。
この表記でアメリカ人ならわかってくれるだろう。
これでもう頻繁に「どこまで行くの?」とは聞かれなくなるハズだ。
 
この看板、日本で作っておこうと思ったのだが、時間とヤル気がなくてね。
そういや日本縦断の時も途中で書いたんだったな。
出来はともかく、やはり実地で作ると集中力が違う。
 
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看板を見てさっそく話かけてくれたライダーカップル。
 
てっきりまたハーレーかと思ったら、ビクトリーというアメリカの別のメーカーのバイクだそうだ。
へー、そんなの初めて聞いたよ。なかなかカッコイイな。
それにしてもアメリカのライダーはみんな薄着だ。ケガは怖くないんだろうか。
 
結局、この店ではたっぷり2時間ほども休ませてもらった。
出ようと思った時はちょうどライダーだのドライバーだのがたくさんいて、36インチユニは注目度抜群。
ムダに緊張するシーンだが、敷地の砂の上を蛇行しながらもどうにか走り去ることができて、グッジョブ俺!
 
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アンボイ以降、どういうわけだか舗装の具合が急に良くなった。
だが一方でクルマの数が急に増え、それはそれで走りづらい。うまくいかないものだ。
それにしても暑い。
じっくり休んだはずなのに、進まないったらない。
 
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なんかもう、まっすぐな道を見てもなんとも思わなくなってきたな。
ここは広大なアメリカの、ごくごく一部のエリアに過ぎないのだ。
ただひたすら暑い。水が重い。
そしておでこが光っている。
 
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デジタルズームでわかりにくいが、なんと人が歩いている!
あれはさっきロイの店にいた旅行者風の男だろう。まさか徒歩で砂漠を行くつもりだったとは。
パッと見でかなり軽装に見えるが、水などは大丈夫なのだろうか?
 
一輪車で追い抜く際、同じ旅人どうしの感覚で軽く挨拶をしたら、
「水持ってないか?」
というまさかの答えが返ってきた。
 
おいおい、挨拶を返すでもなく、いきなり水の催促かよ。
アンボイの店を出てすぐに人から水をもらおうとするなんて、見通しが甘すぎるんじゃないのか?
さっさとヒッチハイクでもしろよ。
こいつはちょっと好きになれないので一気に引き離してしまいたいが、
悲しいことに一輪車旅は股を休めるため、どうしても数キロ走っては下りる必要がある。
そしてこの砂漠では、次にまた乗車することが容易ではない。
そんなわけで、ヤツの陰は俺の背後からなかなかいなくならないのであった。
 
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わかりづらいけど、これがアメリカ名物、銃の標的にされる標識。
モハベ砂漠の標識は結構な頻度で撃たれた形跡がある。
 
俺が撃たれなければそれでいいんだが、
道ゆくドライバーなんかはどれぐらいの確率で銃を携帯しているのだろうな。
今のところ、アメリカに来てまだ銃を目にしていない。
これはラッキーなことなのだろう。
 
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今日は74キロ走って終了。昨日と同じ距離だ。
昨日と違って朝から走り続けたんだが意外と距離が伸びなかったな。アンボイ以降は特に進まなかった。
やはり暑さと重さのせいだろう。これが難所ってことか。
 
ここは見渡す限り何もない荒野なので、暗くなればどこにテントを張ろうが問題ないように思う。
しかし今日は、後ろから歩いて迫ってきているであろうヤツのことが気になる。
テントに気づいて夜中に接近してこなければいいが。
念のために護身用の携帯ナイフや催涙スプレーを近くに置いて寝る。
砂漠でヘビやサソリ以外にも警戒すべきものがあるとは。
厄介なことだ。