4月22日 砂漠が終わる

 
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朝。
砂漠だと人に見つかる可能性は少ないので、焦って撤収する必要がないのがいい。
なお、荷物は全部小さな一人用テントの中に押し込むが、36インチユニだけは入らないので外に放置だ。
 
昨夜もまた変な夢を見た。
学生時代のような戦国時代のような、わけのわからん異色の世界だった。
言語は英語だったような気もする。
アメリカに来て1週間か。だいぶ脳内に英語が侵入してきているようだな。
 
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砂漠に咲く白い花を愛でているようだが。
実は急激な脚の痛みに座り込んで耐えているところ。
 
颯爽とテントを撤収して歩きだしたら、いきなり右太ももの裏の筋肉に強烈な痛みが走った。
なんだこれ、筋肉痛?神経痛?
脚の筋肉はオーバーワーク気味だし、固い地面の上で野宿した直後は脚や腰に違和感が出たりもする。
とにかくそろそろまとまった休養が必要なのだろう。ニードルズはすぐそこだ。
しばらくジッとしていたら痛みはおさまってきた。よし、これなら行けそうだ。
 
毎度おなじみの直線道路をひたすら走っていると、道は突然、T字路に突き当たる。
ルート66のモハベ砂漠貫通区間が終わったのだ。
ここから右に曲がってもう20キロも進めばニードルズのはずなのだが。
クルマが、多い!!
ほとんど観光用の懐古的ガラ空き道路から、いきなり実用道路に出てしまった。
乗用車やトラックがバンバン飛ばしていくだけでなく、この道には路肩がほとんどない。
ここを一輪車で走るのはキツいな。
今日はもうニードルズに着けば休むつもりだし、あえて危険なトライはせず、ひたすら歩くことにしよう。
歩きオンリーになると途端にペースが落ち、かつ疲れるんだが、やむをえまい。
 
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あれ。なんで。
路肩の無い疲れるハイウェイを延々と歩いてきた先には、フリーウェイの入口だけがある。
他に一般道はない。つまり、ここを行けってことか!?
 
入口には自転車や歩行者の進入を禁止する看板はなさそうだ。
たとえ本当はダメだとしても、ニードルズまではあと10キロほど。
え、ダメだったんですか!?という感じで一気に突き抜けてしまう手はある。
しかし、フリーウェイを一輪車で走るという行為そのものに対してまだ躊躇があるのも確かだ。
どうしたものか…。
 
と、悩んでいたら。
フリーウェイに進入するかと思ったクルマが俺の前で止まり、中から若い女性が話しかけてきた。
 
「昨日もあなたを見たわよ!写真を撮らせてもらっていい?」
 
おお、これはいいタイミングだ。
撮影に応じるついでに、彼女、アンジェリーナにフリーウェイの人力走行について尋ねてみる。
 
「走っていいかどうかはわからないけど、とにかく、絶対に、危険だとは思うわよ。
 ニードルズまでクルマなら数分で着く距離だから、乗っていけば?」
 
バーストーからニードルズまでは人力で越えるつもりだったが、
危険なフリーウェイを走らなければならないとしたら話は別だ。
ここはありがたく乗せてもらうか。
しかしこのクルマには、アンジェリーナ以外にすでに2人の男性が乗っている。
その上さらに俺と荷物と36インチのユニサイクルが入る余地はあるのか?
 
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はい。なんとか入りましたよ。
3人がいろいろと試行錯誤してくれ、トランクと後部座席を複雑に活用してどうにか収まった。
俺とアンジェリーナの後部座席はさながら人間知恵の輪状態になっている。
 
車内から眺めるフリーウェイは道も路肩もきれいで走りやすそうではあるが、
やはりそこをブッ飛ばすクルマとトラックのスピードが尋常ではない。
ここは乗せてもらって正解だろう。
 
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聞き取りに苦労しながらも話をしていくと、
どうも前にいる二人の男(アレックスともう一人)とアンジェリーナは友人というわけではないらしく、
アンジェリーナは何かトラブルに遭ったところを彼らに助けられてどこかに移動中の身であるっぽい。
 
そういえば彼女の耳には痛々しい傷があって血が滲んでいる。クルマで事故でも起こしたのだろうか。
しかしそんな状態で、さらに俺を助けて乗せようとは。
アンジェリーナにしろ前の2人にしろ、サービス精神旺盛としか言いようがない。
 
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さすがにクルマ。もともとあと僅かな距離であったニードルズにあっさりと到着。
コワモテのようだったアレックスともう一人も実は陽気な性格らしく、
実に楽しそうに俺と一輪車の写真を撮りまくっていた。
重いザックを片手でヒョイと持ち上げられたのにはちょっとショックを受けたが。
 
俺を下ろし、ニコヤカに去っていく彼らのクルマは、ふたたびフリーウェイの方向へ。
え、彼ら、逆方向に行く予定だったのか!
俺のためにわざわざ遠回りしてニードルズまで寄ってくれたんだな。
ありがとう。お世話になった3人に感謝だ。
 
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ようやく着いたニードルズは、ちょっとした規模の町のようだ。
フリーウェイの出入り口付近にはモーテルがいくつも並んでいる。
本当は値段や設備などを見てじっくりと決めるべきなのだろうが、正直俺は疲れている。
値段とWIFIが使えることだけ確認して、最初に目についたここに突入だ。
 
モーテルのオーナーはどうやらインド人夫婦らしい。
愛想はあまりよくないが、とにかく身体を休められたらそれでいい。
看板には35.9ドルと書いてあったのに、カード決済のレシートを見ると39ドルとある。
なんだこれ、税金?まぁどうでもいいや、今日は。
 
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アメリカの旅といえば、モーテル抜きには語れまい。
ムダに広い、ベッドが2つもある部屋。ここが俺のアメリカ初モーテルだ。
正直、広さは半分以下でいいから値段も半分にして欲しい。
 
肝心のWIFIだが、なんと部屋の中では電波が弱すぎることが発覚。
部屋を出て事務所の前まで歩いて行かないとロクに使えやしない。不便だ。
まあこれについては自分の機器の性能の問題もあるだろうから文句は言うまい。
防水スマホはWIFIの掴みが弱いという話もあるからな。
 
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近くのガソスタまで歩いていって食料を買ってくる。
今回は祝モハベ砂漠突破&初モーテル記念ということで、
ゲータレードの他にビール(トールボーイ!)も買ってきた。
一仕事終えた後の充実した時間と言いたいところだが、急速に酔いが回ってフラフラになってしまった。
洗濯やネットの作業などやることは色々あるのにこれじゃマズい。
野宿中はもちろん、モーテルでも酒はやめといたほうが良さそうだな。
 
今日の自力移動は27キロ。クルマに乗せてもらったのは10キロぐらいかな。
意外な結末となってしまったが、なにはともあれ、最初の難関モハベ砂漠を突破だ。
 
さあ休むぞー。