4月27日 フリーウェイ

 
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今朝は快晴だ。
雪は少し残っているようだが、これぐらいなら走行に問題はないだろう。
 
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うん、これなら行ける。
昨日は寒さに凍えながら歩いたこの道も今は涼しく爽やかだ。
あの雪は一体何だったんだろうな。
 
ところで、ここフラッグスタッフを出てからのルートが悩ましい。
選択肢が多いのではなく、フリーウェイを進む以外に道が無さそうなのだ。
 
 
途中にウィンズロー、ホールブルックなどいくつか町もあるようだから補給は問題ないだろう。
しかし、ロサンゼルスからここまでずっと避けてきたフリーウェイを、ついに走る時が来たか。
怖い思いをしそうでもあるし、一方ではペースが飛躍的に上がるかもしれないという期待もある。
 
フラッグスタッフで2日も休んだにもかかわらず、あいかわらず左足の痛みはひかない。
寝ていれば気にならないのだが、起きて体重をかけると途端に痛む。
痛みの強さといい長引く時間といい、やっぱり骨がどうにかなってるんじゃないのか?
いずれにせよ俺は進むしかないんだけどな。
 
毎度のことながら地図で想像していたよりも広いフラッグスタッフの街を、足をひきずりつつ歩く。
信号の多い街中は歩き、I-40の入口まで来たら乗り始めるつもりだ。
いつもの調子で写真を撮らせてくれ!と現れた陽気なおじさんとの撮影に応じた直後、
今度はヒョロ長ーい青年が近寄ってきた。
コイツは怪しいと思って思わず身構えたのだが。
 
「ひょっとしてキミは足をケガしているんじゃないのか?クルマで送るよ。」
 
宿から少し歩いただけでも足の痛みに困っていたところだ。
ここは厚意に甘えてフリーウェイの入口まで乗せていってもらおう。
 
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この気のいい兄ちゃんはマーク。
クルマに自転車用のキャリアが付いていたので一輪車も余裕で運搬できた。
きっとサイクリストなのだろう。
 
ところで彼はモルモン教徒であり、仕事もモルモン教会に勤めているようだ。
個人的にはモルモン教徒といえば、アイスランドで世話になった愉快な連中を思いだす。
モルモン教の詳しい教義やらはまったく知らないし興味もないが、
とにかく人助けにやたら熱心というところはこのマークも同じのようだ。
もしこの先で困ったことがあったら、
次の町ウィンズローにいる私の友達に電話するようにと名刺と電話番号まで渡してくれた。
ありがとうマーク。
 
ちなみにモルモン教の総本山はユタ州のソルトレークシティにあるらしい。
ソルトレークに寄る可能性は皆無だが、もし行ったらどれだけの人助け攻撃に遭うのか想像もつかないな。
 
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ついに、ついにフリーウェイに進入だ!
 
とりあえず明確に歩行者は不可。
しかし自転車はダメとは書いていないので、おそらく可。
一輪車はどうか知らんが、一輪車なんてウィリーした自転車みたいなもんだろ。
 
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はーい、一輪車はいりまーす。
 
よし、路肩の広さはこれぐらいあればまず合格だな。
ビビリながらしばらく走ってみるが、まあ快適。
 
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歩行者禁止と書いてあったので、走行中に降りて歩くことができない。
よって、出口で降りてはちょっと休憩&股を休める。
思ったよりも頻繁に、15キロ以内ぐらいごとに出口があるからありがたい。
 
途中の標識によると、ニューメキシコ州の州都アルバカーキまではあと480キロもあるな…。
ああ、果てしないわ。
関係ないけど遠くの山、白いねー。
 
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フリーウェイでとにかく怖いのは大型車。
 
トレーラーや、いかにもアメリカっぽいコンボイなどの大型トラックが、それはもうバンバン通る。
しかもトラックは基本的に2車線の右側を走り、俺はそのさらに右側の路肩を走っているので、
トラックが放つ走行風の影響をモロに受けるというナイスな位置関係なのだ。
今日は緩い追い風だから走行風でフッ飛ばされるというほどではないが、
これが横風だったら結構怖い目に遭うのではなかろうか。
 
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インターステート40号(通称I-40)は、アメリカを東西に横断する大動脈である。
日本では考えられないほど長大な高速道路だが、無料なのでフリーウェイとも呼ばれる。
俺もおそらくオクラホマ州ぐらいまではこの道との縁が切れないだろう。
路肩は広く道はきれい。
だが路肩にしょっちゅう落ちているバーストしたタイヤの切れ端とガラス片には注意が必要だ。
 
人が一生懸命ユニサイクリングに励んでいる時、なんとおもむろにパトカーが並走してきた。
おおっ、ついにアメリカの警察のお世話になるのか!?
 
「ひょっとして、ここを一輪車で走っちゃマズい?」
 
「いや、問題ないよ。それよりクールじゃないか!安全のために後ろからゆっくり追走しようか?」
 
「いやいや、大丈夫。一人で走れるよ。ありがとう!」
 
えらい話のわかる兄ちゃんで助かったが、後ろからついてこられるのはたまらん。
好きな時に下りて股を休めたりできないだろうが!
しかしこれで安心した。この区間は一輪車で走っても大丈夫なんだな。
警察のお墨付きを貰えればもう安心だ。
 
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ちなみにこのあたりの制限速度は75マイル。時速にすると120キロ!
クルマの流れはもちろん日本より速い。
他に道がないとはいえ、そんな高速道路を一輪車で走っていいなんて信じられないな。
 
高地であるフラッグスタッフをスタートしてから、道はずっと下りで風も押してくれている。
しんどい上りはクルマで来たのに下りは快適にユニサイクリング。
我ながらズルをしてると思う。 
 
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ウィンズローに到着。
 
フラッグスタッフから約100キロの距離を、特に苦労もなく走り切れてしまった。
下りで追い風とは言え、フリーウェイの走りやすさは相当なものだ。
これはいい。遅れ気味のペースを一気に巻き返せるかもしれない。
 
 
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ウィンズローでは水と食料を買いたかっただけなので、スーパーでサッと食料を買う。
 
そのままこの場所で食べていたら何人かの人々に話しかけられたが、みな優しそうな人たちだった。
それだけでなんだかこの小さな町全体がいいところのような気がしてくるから不思議だ。
しかし、旅の間はどんな町も、ただ通り過ぎるのみ。
 
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ウィンズローからさらに進み、ジョセフシティという小さな町の手前のあたりでそろそろ止まっておこう。
今日の走行は116キロ。アメリカで初の100キロ超えだ。
やっと思う存分に走れたという感じ。
 
今日はほとんど歩いていないので左足裏のケガには響いていないが、
そのかわりというか、右フトモモの筋肉に少し痛みがある。
延々と続く下り坂を調子に乗って飛ばし過ぎたせいだろう。
 
一輪車は、前に回転させる脚力だけでなく、逆方向にかける力も重要だ。
その力で前後のバランスを取ったり、減速させたりする。
しかしついついスピードが乗ってしまう下り坂では、その減速させる脚力を知らない間に酷使しがちなのだ。
日本縦断の時には箱根の下りで調子に乗りすぎて左右のフトモモの筋肉を痛め、
数日間一輪車に乗れないほどのダメージを負ったことがある。
今回もそうならなければいいが。これからは気をつけよう。
あと、せっかく付いてるブレーキをもっと使いこなさないとな。
 
本日、ポリスとの遭遇は2回。
最初の兄ちゃんはナイスガイで何の問題もなかったが、次に遭ったおばさん警官には歩くなと怒られた。
ちょうど股が疲れて歩いてた時だったんだよなー。
 
「それに乗らないんなら、フリーウェイを降りてもらうわよ!」
 
そう言ってはいたが半笑いだったから、たぶんそこまで厳しくはないんだろう。
呆れてただけかもしれないが。
 
今夜はフリーウェイの路肩、茂みに隠れて寝る。
本当に誰にもオススメしないヘタなロケーションだ。
誰にもみつかりませんように。