5月1日 アルバカーキにて

 
5月になったか。
ステイシーのおかげで予定より一日早く着いたアルバカーキ。
せっかくなので、ここでもう一泊しようと思う。
 
痛めた両足を休めたいし、一泊30ドルで居心地のいい宿もみつけられた。
そしてもう1つ、大きな街に着いたら探したかったモノもある。
さあ、そうと決まれば今日は有意義に過ごすぜ!
 
イメージ 4
 
アルバカーキのロードウェイインは、俺が泊まるクラスの宿としては珍しく3階建て。
そこそこ新しいらしく内部も綺麗なほう。
これで30ドルってのが不思議なぐらいだ。この辺はモーテル激戦区なのだろうか。
 
ほんじゃまあ、今日は休養日にしたことだし、まずは買い物に行こう。
 
イメージ 3
 
陸橋から眺めるフリーウェイ。
 
ロサンゼルスにはほど遠いがアルバカーキも州都なのでそれなりに発展していて、
フリーウェイも幅広く、南北に張り巡らされている。
さすがにこの分岐が複雑に入り組む市街地のフリーウェイは自転車禁止だろうな。
仮に走っていいと言われても走る自信がない。
 
イメージ 1
 
近所のウォルマートに到着。
 
ほんと、ウォルマートはちょっとした規模の街にはほぼ間違いなくある。
今の日本で言うとイオンみたいなものだ。
慣れてくるとどこも同じな品揃えに少し飽きてくるが、便利なことに違いはない。
 
イメージ 2
 
平日なのに賑わっている駐車場。
みんな何して生活してるのかねぇ。人のこと言えんけど。
 
今日は手ぶらなので荷物や時間を気にせずゆっくりと店内を見て回れる。
しつこいぐらい時間をかけて買い物をし、モーテルに帰還。
 
イメージ 5
 
買ってきたモノ。食料と、バケツ。
 
時間をかけて選び抜いたのがこのバケツだ。
決め手は安かったこと。2ドル。
 
イメージ 6
 
ありあわせの工具と道具を使ってバケツ改造中。
 
これで何をするのかと言えば、 
 
イメージ 7
 
これだ。
一輪車にラクして乗るためのステップにしようと言うわけ。
バケツにヒモを付けて台にし、乗れたあとはヒモでバケツを回収してザックの横にブラ下げる。
アリゾナあたりからずっと考えてきたアイデアをついに実行に移す時だ。
 
素材は塗料の缶や風呂場用のイスなども考えたが、丈夫な反面で重いのが難点。
プラスチックのバケツはとにかく軽くていい。
何度か実験してみたらとりあえず乗れたので、しばらくこれでいってみよう。
 
そして夕方。
昨日からメールで連絡を取っていたステイシーが俺を迎えに来る。
なんでも写真を撮りたいのと、ぜひ友人に会わせたいということらしい。
あと、スシも食べさせたいと言っている。
 
う、アメリカでスシ…。
 
イメージ 8
 
アルバカーキにある、ステイシー行きつけの鮨屋。
ところでXUANって何。どう読むかわからん。大丈夫かこの店。
本場の鮨を食べたこともないアジア人がエセ日本料理を作ってるんじゃないのか。
 
そう思ったが、店内は意外とマトモだ。
サッポロやアサヒのビールも置いてあり、若い大将もちょっと日本人っぽく見えなくもない。
ふーん、これは期待できるかもしれない。
 
アメリカンスシをテイクアウトしたら、今度はステイシーの友人宅に移動だ。
そこはアルバカーキ北部にあるベルナリヨという町。スパニッシュ系の人々が多く住むところだと言う。
そしてステイシー自身もスパニッシュ系だということを初めて知った。
そういえばもらった名刺の名前がステイシー・サンチェスだったもんな。
 
車内では、俺がステイシーの英語をしょっちゅう聞き取れない。
 
「私はスパニッシュだから発音がおかしいのよ。」
 
彼女はそう言ってくれるが、いや関係ないな。根本的に俺のリスニング力が低すぎる。
彼女の祖先が農家でチェリーを作っていたという話のつもりだったが、
よくよく聞くとチリ(とうがらし)農家だったというような間違いはまだマシなほうで、
そもそも何の話題なのかほとんどわからないということのほうが多い。
 
一方でステイシー側としては、これほど英語が喋れない俺が、
メールのやり取りは普通にしていたことが不思議だったようだ。
辞書で調べたの?と聞いてくるが、日常会話程度のメールで辞書を使う必要などあまりない。
 
「日本人は英語の読み書きはできるけど聞き取りができないんだよ。」
 
そう言っといたが納得してくれただろうか。

クルマはやがてベルナリヨに着いた。
友人宅は古い家とは聞いていたが、小さくてプレハブのような家だ。
そしてこのあたりには似たような家がたくさん建っていて、
スパニッシュ系アメリカ人の生活ぶりを垣間見るような気がする。
アメリカだからと言ってデカい家ばかりではないのだ。
 
イメージ 9
 
アメリカで鮨!
この家にはステイシーの友人ジョシュとその息子アントニオの2人が住んでいるようだ。
とはいえ彼らについて詳しいことはまだ全然知らない。
 
とりあえず、みんなで鮨を食う。
意外とうまい。ちゃんと鮨の味がする。やはりあの大将は日本人だったのか。
 
イメージ 11
 
ジョシュとステイシー。
 
見てわかるように、ジョシュはギタリストで音楽好き。
家の中には大量のCDと楽器が置かれている。
彼はテレビクルーとして、撮影のために世界中を訪れては現地の音楽を学んで来たのだそうだ。
中でもジプシーと共に暮らしながら撮影旅行をした経験は彼の中に深い印象を残したようで、
ギターで弾いてくれたジプシー音楽はなかなかグッとくるものがあった。ビデオで録画しとけばよかったな。
 
ジョシュはギタリストであると同時に絵描きでもある。
彼の描いた画集を見せてもらったが、これまた上手なものだった。
特に彼のルーツであるらしいアステカの神々を描いた作品など。
あらゆる芸術に通じ、性格は物静かで温厚。世の中には大した人物がいるものだ。
 
で、俺はと言えば、
 
イメージ 10
 
足を治療されている。
 
俺が旅の途中で足をケガしていると知るやいなや、
ジョシュは家の奥から包帯とアイスパックと、何かの瓶を持ってきた。
この瓶の中身はなんとアルコール漬けのマリファナで、スパニッシュの伝統的な薬なんだと。
えっ、マリファナ。これが。
オマケに乾燥したマリファナの葉を持ってきて、匂いを嗅がせてもらったりもする。
へー、マリファナってこんな香りがするのか。
 
マリファナはニューメキシコ州では違法らしいが、
ジョシュもステイシーも資格を持っているので問題ないと言う。
スパニッシュにとってマリファナは身近なもので、ステイシーはケーキにすら入れて食べるそうだ。
マリファナといえばドラッグという感覚だったが、世界にはそういう文化もあるんだな。
もう何がなんだかわからなくなるよ。
 
イメージ 12
 
そういえばまだ写真を撮ってないじゃないかということで、外は暗いので家の中で一輪車の撮影。
 
右のアントニオは学校で映画の勉強をしているそうだ。この夏には長編映画の撮影に挑みたいと言っていた。
ステイシーとザックを背負った俺、どちらが重いのかが気になる。
 
イメージ 14
 
ベルナリヨでの和やかなパーティを終え、アルバカーキに戻る。
ジョシュはウチに泊まっていけばいいと言ってくれたが、宿の代金を先払いしてるしな。
のっぺりと広いアルバカーキの夜景は、それなりにきれいだ。
 
イメージ 15
 
ステイシーは仕事上で色々と悩みを抱えているらしい。
ジョシュにも何事か相談していたし、なんだか大変そうだ。
当たり前だがアメリカで生きていくのもラクではないのだろう。
 
イメージ 13
 
ステイシーは俺を送り届ける前に自宅に寄り、俺の足用のマッサージオイルとアロマオイルをくれる。
 
アロマオイルはその場で何種類かのハーブオイルを調合してくれたもので、
日焼けや唇の割れなどに効くから持って行きなさいとのこと。
そしてこのマッサージオイルのほうは案の定というか、スパニッシュの伝統、マリファナ入りだ。
 
これを塗り込んでマッサージすることで足の治りが早まるならありがたい。
しかし、マリファナだもんなぁこれ。ニューメキシコ州では一応違法だ。
資格のあるステイシーと違って俺がこいつを持っているのはちょっとマズいのでは。
まあいいか、これも彼女の気持ちだしな。なるべく早く使い切ろっと。
 
ああ、今日はゆっくり休むつもりが充実の内容になってしまったよ。