5月2日 巡礼

 
今日は2泊したアルバカーキを出る。
 
この街を出てすぐにある山を一つ越え、ひたすら320キロほど進めば次の大きな街、トゥクムカリがあるだろう。
この行程をフリーウェイで行くか側道を走るかは、現場で考えないとわからないな。
 
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宿を出てしばらく歩くと大きな川を越える。
アルバカーキの街を南北に貫く川、リオ・グランデだ。
濁った水が悠然と流れる大河。
しかしステイシーいわく、彼女が子どもの頃はもっと水量が多かったらしい。
温暖化のせいだろうか?
 
こんなカラカラの土地で川の水が減ったら深刻な問題になりそうだが、
アルバカーキといいロサンゼルスといい、乾燥した土地でも地面を掘れば地下水が豊富に出るらしい。
そりゃ地下水でも出ないとこんなところで大量の人は住めないよな。
 
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暑い中、やっとアルバカーキの中心街らしきところまで歩いてきた。
 
大きな街はとにかく進みづらい。
信号もクルマも多く、オマケに足が痛いせいでカメのような歩みだ。
今後はできるだけ大都市は避けて進むと固く誓う。 
 
歩き疲れて途中にあったベンチで少し眠っていたら、通りがかりのお婆さんに、
「ここは治安が良くないから荷物に注意したほうがいいわよ。」
そう忠告された。
そういえば昨日ステイシーもこの道はガラが悪いから気をつけろと言っていたな。
ここはニューメキシコ大学などもある通りだが、たしかにあまり治安が良さそうには見えない。
一輪車を押して歩いていると、乗れ乗れと煽ってくるキューバ人みたいなヤツもいて面倒だ。
 
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あとはあの山を越えればアルバカーキを出られる。
あの山はサンディアという名前で、スペイン語でスイカを意味するとステイシーに教わった。
夕暮れ時には山全体が真っ赤に染まるところから名づけられたんだそうだ。
きっとあの山は、アルバカーキで育った人間にとっては故郷の象徴なんだろうな。
 
それはいいんだが、ただ街中を歩いてきただけなのに、ひどく疲れた。
そして、足の痛みがかなり深刻になっている。
もともと痛い左足の裏はもちろん、最近痛めた右脚の太ももの痛みも治らない。
まる一日を休養に当ててもダメだったか。
歩いても痛いし、一輪車に乗っても痛いという、どうしようもない状態。
これでは今日はアルバカーキを出るだけで精一杯だろう。
 
今がこの旅で最もしんどいところなのかもしれない。
ひょっとしたら、これが俺にとって最後の長旅になるかもしれないのだ。
何があっても、悔いのないようにしたい。
 
山を越える途中、またしても路肩に白い自転車を見た。
交通事故死者のモニュメントだ。安らかに。
アルバカーキのコンビニでは、店員の兄ちゃんにこう言われた。
 
「どうしてそんな旅をしてるの?ミッションかい?」
 
ミッション。使命、任務、伝道。いろんな意味がある。
俺の旅の理由はそのどれでもないと思うが、ミッションかと言われたことは少し気になる。
今日はこの辺の適当な場所で野宿しよう。
街中をじわじわ歩いただけで、たった30キロしか進めなかった。
とにかく、悔いなくだ。