5月5日 テキサスまで
インド人スタッフが無愛想なアメリカーナモーテル。
しかし、朝食が付いていた!しかもシリアル!
これは嬉しい。シリアルのような栄養価の高いモノを食べたいとずっと思ってたんだよ。
インドのおっちゃんも実はいい人そうなのだが、それが少々わかりにくい。
朝食を食べているこの事務所棟の入口はなぜか二重扉になっていて、
ドアを2回開けないと入れない仕組みだ。
で、そのドアは絶対に開けたら閉めて欲しいらしく、出て行く時は毎回必ず「ドアを閉めてくれ!」と言われる。
2回も開けたり閉めたりするのは正直めんどくさいんだがなぁ。
そして、おっちゃんの妻であろうおばちゃんに至っては、さらにレベルが高い。
挨拶しても目も合わさず適当な身振りしか返さないくせに、
事務所から出てきた時に遭遇した日にゃあ、「ドアは閉めたのか!?」と大声でまくしたてる。
おいおい、アンタはなんでそんなにエラそうなんだ。
一度本気で聞いてみたい。インド人側の言い分ってやつを。
先日フリーウェイでコケて破れたズボンを適当に縫う。
たまのモーテルなので、チェックアウトの10時ギリギリまで粘ってのんびりしているのだ。
ここを出ればまた果てしないアウトドアなのだから。
もうしばらく贅沢を噛み締めていたいが、しょうがない、そろそろ出発しよう。
今朝はゆるやかな追い風だ。
これぐらいの風が一番いい。走っていて涼しいから。
追い風ってのは、あまり強いとむしろ暑かったりする。
なぜなら、前から来る走行風を後ろから来る追い風が打ち消してしまうからだ。
これがまた、ムアーッとくる奇妙な温かさでねー。
追い風は基本的には旅を大いに助けてくれるものなのに、なかなかうまくいかんものだな。
通算10回目ぐらいのバケットスタートでバケツが大きくへこんでしまった。
丈夫そうに見えたバケツだったがやはりプラスチックはダメか。
体重60キロでさらに重い荷物を背負った俺が跳び上がる時にかかる力は相当なものなのだろう。
さあどうしよう。
曲がったこのバケツに何か補強をするか、もしくは別のやつを探さないといけない。
しかしいずれにせよ、今は何もできない。大きな街に行かなくては。
ついさっきまでは調子が良かったのに、一輪車に乗れなくなった途端、しんどい旅になる。
風もいつしか強い横風に変わってしまった。
トゥクムカリから40キロほど進んで、ようやく San Jon という町に着いた。
歩いてばかりは疲れる。
強風に弄ばれてもうフラフラだ。
すげー色。でもつい買ってしまう。それがパワーレード。
ジュースと甘いモノは、店にたどりついた時のささやかな楽しみであり、
次へ向かうためのモチベーションであり、エネルギーの手っ取り早い補給源でもある。
日常生活ではこんな組み合わせはまず選ばないな。
さて地図によると、この町はニューメキシコ州で最後の町になるらしい。
次のテキサス州は目前だ。
どうせこの先テキサスまで何もないならここからまたフリーウェイに戻るかー。
・・・と思ってフリーウェイに乗ってみたが、なんとこの区間、まさかの自転車禁止。
えー、今までずっとOKだったのに、なんでここに来ていきなりダメなんだ。
ここから先は地図によればフリーウェイしか道がなくなるんだぞ。
人力旅行者はここまで来て引き返せってことか?
ひょっとして、これがテキサスのやり方ってやつなのか!?
テキサスに入る前からテキサスの洗礼を受けてしまったのかと思って焦ったが、
次のフリーウェイ入口にはちゃんと自転車OKと書かれていた。
なんだそれは。ビビらせるなよ。
まあとにかく、これで一輪車に乗ってテキサスに入れそうだ。
夕方。
道は良く風も良く、一定の距離ごとに路肩で捕まり乗りができる棒もあり、快調。
ニューメキシコとはここでお別れし、テキサス入りだ。
バケツが潰れたことで旧道を走るペースは一気に落ちたのに、
フリーウェイに戻ってみれば、この区間にはたまたま捕まりやすい棒がたくさん刺さっていて順調に走れる。
自然も人工物も、ここを一輪車が走ることなんて一切想定していないにも関わらず、
ほんのささいなことが1日の走行距離に大きく響く。
それが何かおもしろい。
テキサスの夕焼け。
一瞬どこまででも走っていたいような気になる。
でもいつかは疲れてユニを降りる。
そして路肩の適当な場所で寝るのだ。
今日の走行、73キロ。