5月6日 待ちながら思う

 
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テキサスのフリーウェイは高速道路らしくない。
 
アメリカのフリーウェイは他の一般道や土地とは完全に区切られているのが常識だと思っていたが、
テキサスに入ってからはその境界が見当たらず、その気になれば自由に出入りできてしまう。
適当だなーおい、テキサスよー。
 
今日はいい風だ。掴んでユニに乗れる棒もいい位置にある。
ゆっくり行こう。
スポンサーがいるわけじゃない。
サポートカーがついて走っているわけでもない。
チャリティーを募っているわけでも、何かを伝えたくて旅をしているわけでもないのだから。
  
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本当にごくたまーーにある、フリーウェイの休憩所。
設備はあいかわらずトイレぐらいしかないのだが、周囲がさらになんにもないのでやはり立ち寄ってしまう。
 
アメリカの中でもテキサス州は特に広い。面積は日本の2倍だ。
しかし俺が通るルートはテキサス北部をかすめるほんの300キロぐらいで、
その途中にはアマリロという大きな街があるらしい。
街かー。街に着いたら潰れたバケツの代わりを買わないとなー。
 
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見事に淡々とした光景。これがテキサス。
これまでに出会ったアメリカ人のうち何人かが同じようなことを言っていた。
 
「テキサス?広大なところだ!で、すぐに飽きる。」
 
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ベガという町まで来た。
 
朝は穏やかだった風が、ここにきて急に強くなる。
それも今までにないほどの強烈な横風、そして砂塵!
立っていられないほどだ。
ここはひとまずガスステーションに避難!
 
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ガソスタに逃げ込んだはいいが、今度はここから動けないじゃないか。
 
しかし幸いというかなんというか、ここの男性店員は態度が悪い。
こんなところに長居もしたくないので、しばらく休んだらまたしても強風の中へ躍り出るのである。
手作りらしいサンドイッチはちょっとうまかった!
 
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見えにくいけど、遠くに巨大な風車がたくさんある。風力発電だろう。
日本でも時々みかけることがあるが、規模がまったく違う。
フリーウェイに沿ってずーっと風車が並ぶ様は圧巻。
そしてこれはつまり、このあたりは年がら年じゅう風が強いということだ。
 
テキサスのフリーウェイはどこでも乗り降りできてしまうので、
早く移動したい時はフリーウェイを、風が強くて怖い時は側道を、と行ったり来たりしている。
たまたま側道を走っていた時、いきなりフリーウェイでバーンという大きな破裂音が鳴り、
走っていたコンボイの荷台付近から、何か黒い物体が天高く弾け飛ぶのが見えた。
 
うわ、タイヤだ。
バーストしたな。
 
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たくさんあるタイヤが1つぐらいバーストしてもアメリカのトラッカーなら気にせず突き進むのかと思ったが、
やはりそれは問題があるようで、路肩に停車して何やら作業をしている。
 
アメリカのフリーウェイの路肩には夥しい量のバーストしたタイヤが散乱しているが、
バーストの瞬間をリアルタイムで目撃したのはこれが初めてだ。
本当に花火ぐらいの勢いでタイヤが空に舞い上がったのにはたまげた。
あの時、側道ではなくフリーウェイの路肩にいたらと思うと怖ろしい。
場合によっては走行不能になったクルマが路肩に突っ込んでくる可能性も充分ありうるからな。
 
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どうにもならん右からの強風は、いつまでも続く。
少しでも風をやり過ごせる陸橋の下で休憩しよう。
 
一度休憩してしまうと、もう動く気になれない。
アマリロまではあと50キロもないが、カラダは疲れているし、出て行ってもこの風では大して進めまい。
こんな時には思い切ってのんびりしてみるのもいい。
 
とりあえず、タイヤに空気を入れてみる。
思いのほか空気圧が減っている。危ない危ない。
次は縫い物だ。ズボンのダメなところを補修しまくる。
えー他にやることは、そうだ、爪切り。
さらに耳そうじ。
待てば海路の日和あり。
そのうち風向きも変わるだろう。
 
…おや、ちょっと風が弱まったかな。
よっしゃ、待った甲斐があった。
行くかー。
 
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長い休憩を終え、走り始めて間もなく。
何か袋を掲げてこっちを見ている2人組を発見。
 
彼らは親子で、俺に水と食料を手渡すべく待っていてくれたようだ。
あらー、こういうの、ひさびさ。
そしてテキサスで初のマトモな会話。
嬉しい。乾きかけていた心が救われた気分だ。
 
彼らは水だけではなく、貴重な情報もくれる。
これから向かうアマリロにあるウォルマートの位置だ。
おかげで迷うことなくアマリロでの買い物ができる。
どうもありがとう!
2回ぐらい名前を聞いたけど覚えにくくてすぐに忘れてしまった。ごめんね!
 
その後。
フリーウェイを走っていると、パトカーにくっつかれる。
これは止められて職質コースかと思ったら、運転しながら携帯で写真撮ってやがった。
おいテキサス州警!仕事しろよ!!
  
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しかしその直後にはちゃんとスピード違反を取り締まっておられました。
へーやる時はやるんだねぇ。
 
夕方の風が緩んだ間に距離を稼ぎ、アマリロの入口までたどり着いてしまった。
うっかり街に入ってしまうと野宿場所探しが大変だ。
しばらく右往左往して悩んだ末、どうにか今夜の寝床が決まった。
明日は朝から教わったウォルマートに行くとしよう。
 
ふぅ。やっとアマリロだ。
今日の走行、94キロ。