5月16日#1 アーカンソーのやり方
今日でアメリカに来てやっと1ヶ月。
やっと?いや、もっといたような気もする。
来たばかりというには変に慣れたところもあるし、長くいるというほど自由自在じゃない。
そんな感じ。
野宿地点から走り始めて10キロでフリーウェイのレストエリアを発見。
ここでまたしても濡れたテントとシュラフを乾かす。昨夜の夜露でもうビショビショなのだ。
ほんっと、気候が変わったよなぁ。
今はこれと言って短期の目標もないが、まぁこの際だから早く着いてしまいたいよ。
マルドロウという小さな町で朝食の図。
奇特な色合いでおなじみのパワーレードに、やたら幅広いその名もメガサンドと、フライドチキン。
店で揚げたとおぼしきチキンが1ドルなのにうまい。
と思ってたら、通りがかったナイスなじいちゃんからハンバーガーの差し入れが!
このじいちゃんの何がナイスかって、セリフがシブいのだ。
「ハンバーガーを2つ買ったんだが、私にはちょっと多いんだ。だからキミが1つ食べてくれると嬉しい。」
いや、この人は絶対俺に渡すために2つ買ったんだよ。
それをこうやって気を遣わせないように差し入れてくれたのだ。
なんでもストレートに表現するのがアメリカ人というイメージもあるが、
中にはこういう奥ゆかしい人もいるってことだ。
どうもありがとう!
このハンバーガーもうまい。けどさすがに多い。
すでにチキンとメガサンドを食ってさらにハンバーガーだからな。
こうなるとわかっていればせめてメガサンドはやめておいたものを。
しかし最近は脚に筋肉がついてきたせいか、すぐに腹が減るから問題はないだろう。
さて。
アーカンソー州は、フリーウェイ上に特に標識もなく、あっさりと始まる。
祝オクラホマ脱出の写真を撮ろうと思ってたのに、どこが州境なのかすらサッパリわからなかった。
『スピード違反はヘリコプターで追跡するぞ! アーカンソー州警察』
という標識を見て初めてアーカンソーに入ったことを知るというこの情けなさ。
アーカンソーに入ってすぐのレストエリアで昼寝。
ところで、アメリカには至るところにバーベキュー設備がある。
フリーウェイのレストエリアには大抵こういうのがあるし、
場所によってはトイレもないくせにバーベキュー台はあるという徹底ぶり。
ウォルマートやホームセンターでも必ずバリバリ大量に売り出している。
まったくアメリカ人はどんだけバーベキューが好きなのか。
野外で野宿はしても肉を焼いて食べたいなんて特に思わない俺にとっては理解できない現象だ。
レストエリアのベンチで延々と寝ていたら、キャンピングカーの老夫婦がゲータレードをくれる。
なんだかえらく感激してくれてた。
アメリカではこういうデカいキャンピングカーで旅をしている老夫婦がたくさんいる。
アメリカは広いから長い時間をかけてじっくりと見て回るのだろうが、
途中で飽きてこないのかなーとつい考えてしまう。ビッグなお世話だ。
長いことダラダラしたレストエリアを出た瞬間。
うおっ、なんだこの看板は!
『歩行者、自転車、パレード、その他の動力のない乗り物は禁止』
テキサス、オクラホマとなーんにも言われなかったのに、アーカンソーに来て急にコレか。
何を今さらって感じもする。
しかも歩行者自転車以外にも、パレードだのその他全部だのと妙に念入りな禁止っぷり。
これがアーカンソーのやり方か!
すっかりフリーウェイ慣れしていたので途方にくれてしまうが、ダメとなれば仕方ない。
下道に降りてハイウェイ(アメリカの高規格道路)の路肩を走行しましょう。
ひさしぶりのフツーの道。
路肩は狭く、クルマは多く、信号もいっぱい。とってもダルい。
しかもフリーウェイのようにズドンと一直線に伸びていないので、やたらと遠回り。
ヤバい、この調子ではこれからロクに進めないぞ。
まさかアーカンソーに来てこんな目に遭うとは。ガックリだ。
気力が落ちると体力も落ちる。
このあたりはヴァン・ビューレンというそこそこ大きな町のようで、
路肩がほとんどなくクルマだらけの道のりは危険でしかなく、少しずつ歩いて進むほかはない。
いっそのこと今日はモーテルで休んで明日から仕切り直そうかとも思うが、
明朝モーテルを出た途端にこんな街中じゃあやっぱり朝からゲンナリするだろうし、
もう少しだけ進んでおいたほうがまだしもマシかもしれない。
ややこしい市街地を地図を頻繁に確認しながら進み、
ようやく町を抜け出せそうなあたりでスーパーを見つけた。
よし、ここでまずトイレを借り、食料を買ってから町を出て今夜の野宿地を探すとしよう。
店内ですべての用事を済ませて、爽やかに外に出る。
すると、外のベンチにチェーンで固定している俺の一輪車とザックを、
じっと眺めているデカい男がいる。