5月17日#1 ブランドンと

 
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昨夜は雨に降られ、クリス宅のベランダに逃げ込んでセーフの図。
 
深夜だったので庭から無断でこの場所に移動したのだが、ここならたぶん怒られることはないだろう。
さっさとテントを撤収し終えた頃にクリス&クリスティー夫妻が出てきて、
 
「おっ、昨夜は雨だったのか?それはすまなかったな。」
 
と、なぜか謝られる。
 
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クリスティーが、雨で冷えた夜を過ごした俺が求めてやまなかった熱いコーヒーと、
何かお守りのようなキーホルダーをくれる。
 
チェロキー族の呼び方で自分の名前を書いたメダルだそうだ。
これを持っていると何か現実的な意味で役に立つというようなことを語ってくれるが、
残念ながら俺にはその説明がよく理解できない。
 
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これは昨日の俺。
クリス夫妻はフェイスブックを活用していて、昨日からの俺との交流の様子や数々の写真をアップしていた。
クリス宅の庭でWIFIを使わせてもらっていた俺もそのページをチェックすることができ、
多くの彼の友人たちが俺に興味を示してくれる様子を楽しむことができた。
 
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これは祭りの夜。マーシャルアーツ道場にて。
 
それにしても、クリスのフェイスブックからもらってきた画像は、
いつも自分で撮っている自分と表情が違っていておもしろい。
人から見るとこんな感じなんだな。
 
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そしてクリス宅出発前、今の俺だ。
 
家の前からバケットスタートで走り去るところまでを克明に動画で撮るクリス。
動画撮影でiPadを覗き込む彼らに手を振って、さようならだ。
 
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正直、不安な出会い方をしたクリス夫妻だったが、今はキッパリと会えて良かったと言える。
フリーウェイを下りて下道を進んでこなければ、彼らに会うこともなかったな。
さらばピッツァボーイ。
 
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クリス宅から来た道を引き返して、昨日クリスと出会ったスーパーにまた来る。
今日もトイレをありがとう。
庭泊まりはトイレに困ることがよくわかったよ。
しかしまぁ、デカいパンである。ガーリックパン。油こってり。腹いっぱい。
 
このスーパーでパンその他の買い物をしてレジに並んでいるとき、
ちょうど前にいた細身の男性から、おもむろに話しかけられる。
彼はブランドンと名乗り、なぜか俺のことを知っているかのように話す。
 
あ、ひょっとして、あの人か。
クリスのフェイスブック上で、俺について熱く語ってくれていた彼の友人。日本が好きな空手家。
そうだ、彼はたしかブランドンという名前だった。
 
ブランドンは仕事に行く途中であまり時間がなさそうだったが、
俺に色々と話したいことがあるようで、レジやスーパーの前でしばらく語り合うことに。
アメリカではレジ前でいきなり井戸端会議を始めるハタ迷惑な人々によく遭遇するのだが、
まさか俺自身がレジ前で人と話しこんでしまうことがあろうとは思わなかった。
 
彼は日本と空手が本当に好きで、何人もの日本人の空手家と知り合いなんだそうだ。
そして3人目の娘さんの名前は、タカラ。
 
「日本語で大事なモノという意味だろう?」
 
そのとおり。いい名前だ。
そんなブランドン、実はまだ若くして癌に侵されている。
前向きに治療中ということだが、空手家なのに非常に痩せているのはそのせいか。
3人の小さな子どもを抱えて今後どうするのか、とても悩んでいるとのこと。
それなのに、
 
「本心ではキミにはぜひウチに泊まっていって欲しいんだ。
 だがウチには小さな子どもたちもいるし、どうしてもそれができない。本当に残念だ。」
 
こんなことを何度も言ってくれる。
自分が大変な時に俺のことなんてどうでもいいと思うのだが。
初めて会ったばかりの人物だが、きっと彼はこういう人柄なのだろう。
ほんの短時間の会話だったのに、彼の痩せた笑顔が深く印象に残る。
 
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ブランドンと別れ、スーパーを出たら、すぐにヴァン・ビューレンの町の出口だ。
標識に書いてあるのはどれもフリーウェイの案内なので俺は乗れないが、
たぶんこのまままっすぐでいいんだろう。まぁなんとかなる。
 
そんな時、俺を追い越したサイクリストが停止して話しかけてくる。
かと思ったら、後ろから来たクルマのドライバーがクラクションを鳴らして話しかけてくる。
おいおい、前後から同時に話しかけてくるなよ!
 
サイクリストとは少し話してニコヤカに写真を撮られて走り去って行ったのだが。
もう一人のドライバーのオヤジさんのほうは、結構あれこれと質問してくるのだ。
そして、
 
「今ハングリーか?朝メシを食いに行こう!」
 
こんなお誘いが。
いやぁ、ついさっき巨大なガーリックパンを食ったばかりなのだが…。
しかしなんとも断りにくいこの押しの強さはなんだ。
まぁ悪い人ではなさそうだし、ちょっとおもしろそうだから一緒に行ってみるか。
 
彼のピックアップトラックに荷物一式を乗せ、よくわからん道のりを走って、
やがて高速インター横のドライブインっぽいレストランへ到着。
 
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彼の名はクリス。昨日のクリスと名前がかぶってややこしい。
しかし、アメリカに来て知り合った人々の中で名前がかぶるのはこれが初めてだ。
アメリカ人の名前なんてマイケルやメアリーばっかりかと思っていたら、実は結構バリエーション豊富なんだな。
 
そんなクリスは教会に行く途中。そうか、今日は土曜日だった。
レストランはバイキング形式で、好きなモノを好きな分だけ食べられるのが嬉しい。
この機会に野菜をたくさん摂っておかねば。
メニューにはキャットフィッシュ(ナマズ)ってのもあるが、これについては深く聞かないほうが身のためだろう。
 
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クリスご推薦、ルイジアナソース。
実に思いっきり容赦なく辛そうだ。これも使用しないほうが身のためだろう。
 
彼は豪快な性格のようだが、俺の健康状態については細々と心配してくれる。
ウチでシャワーを浴びていくか?とか、昼寝をしていくか?とか。
今が朝じゃなければ泊まって行けという話になったのではなかろうか。
 
ところで、アメリカのレストランに入ったのもこれが初めてだ。
アメリカのレストランといえば、チップという未知の文化が気になるところ。
クリスがどうやってチップを支払ってくれるのかよく見ておこうと思ったのだが、
なんと彼はチップどころかレジでも店員さんと何か喋っただけで、
金も払わずにそのままサラッと店を出てしまった。
なんだそれ、ツケか?馴染みの店なのか?
まさか無銭飲食じゃないよな?…ないよな!?
 
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どこをどう走ったのか知らないが、ヴァン・ビューレンの出口からレストランを経由して、
アルマという町のあたりまで送ってもらう。
ありがとうクリス!ごちそうさま。
 
ここからついに、下道であるハイウェイ64号の旅の始まりだ。
曇りの天気が少し気になるな。