5月21日 ジャパニーズ・ビートル

 
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リトルロックのはずれにあるモーテル、ブロードウェイ・イン。
そろそろ出発の時間だ。
中は広くてそこそこ快適なのだが。
 
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昨夜はこの窓からクスリの売人が声をかけてきたんだよな。
カーテンを閉めていたのに、その隙間から。
 
そこから考えると、この部屋ではかつてクスリだのハッパだのをやった連中が何人もいるってことになる。
そうなると売春だってあるだろうが、そのわりにはこの部屋は比較的キレイに保たれていると言える。
あのインド人オーナーの仕事が意外に行き届いてるってことだろうか。
 
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モーテルを出たところでこんな看板が。
 
CATFISHはナマズのことだ。
アーカンソーに入ってから、こんなナマズ料理の店をいたるところでみかける。
ナマズがうまいかまずいかは知らないが、そんなにたくさん需要があるのだろうか?
実際ここ、ツブれてるしな。
 
ちなみに、アーカンソーでやたらしょっちゅう見かけるもの。
ナマズ料理店、いろんな宗派の教会、そして酒屋。
 
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これは何かと思えば、歩道上に据え付けられている空気入れ。
ちょっとした工具類もワイヤーで繋がれている。
空気が抜け気味だったのでありがたく使わせていただだこう。
 
日本にもこんなのあったらいいのになーと思うぐらい便利で親切な設備ではあるが、
俺は昨日からこの道でサイクリストを見かけたことが一度もない。
治安が悪いと言われるこのエリアでこの設備、なかなか違和感がある。
 
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さあ、リトルロックを脱出して、ふたたび田舎に突っ込むぞ。
 
このあたり、ちょっと北海道の景色に似ている。
 
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今日はアーカンソーに入って初なんじゃないかという追い風。
実に快適だ。こういう時はドンドン進もう。
 
それにしても、脚にパワーがついた。
ムリそうな体勢からのスタートや、しんどそうな上り坂も、今では脚力で突破してしまえる。
ロサンゼルスから走り始めて1ヶ月してようやく長旅用の脚ができてきた感じだ。
脚のケガに泣いた時は本当にどうしようかと思ったが、よくぞここまで超回復してくれたよ。
 
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バケットスタートの成功率もかなり上がった。
鉄製バケツは何度飛び乗っても壊れる気配がないし、今やこれはなくてはならない装備だ。
  
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カーライルという小さな町でやっと水を買えた。
 1つ手前のロノークで買うつもりだったが、店がみつからなかったんだよな。
 
町の数がずいぶん増えたこのあたりでも、予想を外してしまうとちょっとした飢餓状態に陥る。
なるべく最小限の荷物しか背負いたくない人力旅にありがちなミスだ。
 
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カーライルの次にある、ヘイズンという町の公園っぽいところの木陰でぼんやりしている。
 
ぼんやりしていると、向こうからおじさん2人が歩いてきて、声をかけてくる。
服装からして近くの工場からやって来たようだ。
お決まりの話をしているうちに、「ウチのオフィスで休んでいかないか?」と誘ってくれる。
ちょっと先を急ぎたい気持ちもあるが、せっかくだから寄ってみるかな。
 
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連れて行かれた先は、なんと穀物の工場だ。
俺も日本で農業関係の仕事をしているんだと言うと、ずいぶん嬉しそうに工場を案内してくれる。
 
ここは米、麦、豆などの種子を管理しているところだな。
俺が北海道でしている仕事とあまりに似ているので驚く。
 
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ものっすごく、親近感の湧く工場風景である。
今すぐにでもここで働けそうな気すらする。英語が話せればだが。
 
工場長っぽい彼いわく、水が豊富なアーカンソーはルイジアナと並ぶアメリカの米どころだそうだ。
そういえば途中で稲っぽいモノを見たのでもしやとは思っていた。
しかし植え方が日本と違って適当なので、イマイチ稲という自信がなかったんだよな。
アメリカ米は果たしてどんな味がするのだろうか。
 
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非常に興味深い工場見学を終えると、事務所でコーラやポテチ、ポップコーンなどを手渡され歓迎される。
シブいなー、アメリカの働く男たち。
会話はあんまり通じないが、おたがいのやっていることに興味があるので話題はある。
 
本棚にあった害虫図鑑を眺めていたら、ジャパニーズ・ビートルという昆虫の名前をみつけた。
ジャパニーズ・ビートル、和名はマメコガネ。
日本からの輸入品に混入して渡米してきた害虫であるらしい。
 
「このジャパニーズ・ビートルってやつ、悪い虫なの?」
 
「ああ、そいつはかなり悪いね!」
 
「そっか。ごめんね。」
 
日本を代表して謝っておいた。
 
 いやー、実に楽しい工場見学だったなぁ。
素敵な出会いのおかげでニコニコしながらヘイズンの町を出る俺であった。
工場からスタートする時は職員みんなに注目されて緊張したけどな!
 
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ヘイズンを出て、大きな川を越える。
立派なコンクリートの橋のそばにあるこれは、昔使われていた跳ね橋だろう。
船が通るたびにコイツを上下させていたんだろうな。
よく聞く、古き良きアメリカ、ってやつをほんの少し見つけたような気分だ。
 
工場でおっちゃんに教わった、野宿に最適だという川沿いパークの場所が結局わからず、
時間もまだ多少はあるのでそのまま直進することに。
が、途中でおもむろに道の路肩がなくなってしまう。
道の両側が湿地帯のエリアに突入してしまい、道幅が極端に狭くなったのだ。
 
しまった、こんな時間に。
陽の落ちた空は急速に暗くなる。左右はテントも張れない湿地。
そして何より最悪なのは、夕暮れの湿地帯に蔓延する、おびただしい虫だ。
暗くて道が見えないのでサングラスを外したいが、外すと虫が目に当たる。
こうなるともう顔を下げて走るしかない。
こんな悲惨なところで止まるわけにはいかない。
暗くなったとしても、絶対に抜ける!
 
次の町まで5マイルと書いてあったが、実際にはもっとあったハズだ。
股の痛みをこらえ、ただこんなところにいたくないという一心で、なんとか湿地帯を抜けた。
もうすっかり暗い。
 
次の町、ブリンクリーまであと4マイルの地点。
ここで完全に暗くなり、ひどく疲れたので、適当に見つけた橋の下で休むことにする。
しかし湿地帯を抜けはしたが、ここは実にマズい場所だ。
家がすぐ近くにあるのだ。
しかも犬を飼っているらしく、吠え声がいつまでもやまない。
俺の存在を察知しているのだろうか。家人が出てきたら厄介なことになる。
だが、俺はもう疲れた。
とにかくこの橋の下に速攻でテントを張り、ぐったりと寝てしまおう。
明日はめいっぱい早起きしなくては。
 
今日の走行は、101キロ。
アップダウンがなく追い風なのが良かったが、ラストの湿地帯突破が特に効いた。
汗が乾かない。
蒸発した水分が、またテントを濡らしてしまうことだろう。