6月13日 フロリダが暗い
野宿と違ってモーテルからのスタートは余裕がある。
ネットで今日の予定ルートをもう一度調べてから、ノロノロと出発。
本日唯一の目的は、フロリダに入ることだ。
途中までハイウェイを来たが、ここから右折して裏道に入る。
知らない土地で近道はあまりするべきではないが、
これぐらいの範囲で下調べをした上でなら大丈夫だろう。
クルマも少ない裏道を淡々と走る。
人と話すこともなくいい感じ。
たまに庭から駆け出してくる犬だけが、忙しく動く。
さほどキツい坂もない。誰とも出会わない。
着実に進める環境だ。
今日はテンションを上げて会話などをしなくてもいい日なのだろう。
休憩中、木陰に吹く涼しい風が何よりのごちそうだ。
暑く、静かな時。
あまり期待もしていなかった集落にガスステーションがあった。
スナック以外にも手作りらしいハンバーガーが買えて上々の収穫。
容器のCBってのがちょっと謎だったが、食うとわかる。
なるほど、チキンバーガーだな。
ここがフロリダの州境、ステートライン。
州境のあたりは周囲を湿地帯に囲まれた、ひたすら陰気な道のり。
フロリダということでなんとなく明るい光景を想像していたのにとんだ期待はずれだ。
立ち止まると無数の羽虫にとりまかれるし、州境にいてもゆっくり写真を撮ることすらできない。
舞台をフロリダ州に移し、しばらく走り続け、だんだん道も良くなってきた。
あたりに充溢していた怪しい陰気さも少しは減ってきたようだ。
南国の楽園らしさにはまだほど遠いけどな。
ところでさっき、リアカーみたいなものを押して歩いている男を追い抜いた。
彼も長い旅をしているのだろう。
あれこそはおそらく宗教的なミッションというやつだった。
誰かのために。何かのために。
人それぞれ、いろんな事情がある。
フロリダに入って最初にある大きな街はジャスパーという。
昨夜のネットでの調査によると、そのジャスパーより手前にはモーテルが3つもあるハズだった。
3つもあればどこかで泊まれる。余裕だ。
しかし、これが甘かった。
最初のモーテルがあるハズの場所には何もない。
さらにグーグルマップでガスステーションがあるハズだった場所にも何もない。
おやおや。こういうのはIT大国アメリカでは珍しい。
とはいえ、そんなモノがアテにならない場所なんて世界にはいくらでもある。
ITに全部おまかせというような楽勝生活はまだしばらく来ないだろうよ。
予定を修正して少し寄り道し、インターステート(州間高速道路)の出入り口で無事にモーテルをみつけた。
経験上、高速道路のインター付近には大抵モーテルとガスステーションがある。
買い物に行ったモーテル向いのガスステーションの中にバーガーキングが入っていたので、
ためしに買ってみる。
これがなかなかにうまい。
WIFI目的で何度も入ったマクドナルドよりも味はよほどいいと思う。
肉のジューシーさと野菜のボリューム加減が秀逸。
思わずハマりそうだがこの先バーガーキングに入る機会はそうないだろう。
マクドナルドと大して変わらない値段で、このうまさ。
日本ではほとんどハヤっていないのが不思議なぐらいだ。
たぶん、食べ物屋が成功するかどうかは必ずしも味だけにはよらないのだろうな。
今夜もシャワーのついでに適当に洗濯。
そしてヒーターの上に載せて乾かす。
モーテル連泊記録中なので、今の俺はアメリカ横断旅行中ではそれなりに清潔であるに違いない。
ふぅ、今日の走行、73キロ。