6月14日 湖影


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早朝、忘れないように受付からいただいてきた、コーヒーとハニーバン。

コーヒーはマズいし朝食といってもハニーバンだが、
こんなものでも朝食付きかそうでないかでは大きく違う。ひたすら気分的に。

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モーテルを出ると、さっそくお迎えしてくれる黒いヘビ。
ビビりつつ近づいて写真だけ撮り、念のために大きく迂回してパス。
跳ぶなよ。

このタイプの黒ヘビに遭遇するのは2度目だ。
路肩によく落ちているタイヤの切れ端とそっくりなので紛らわしいことこの上ない。
フロリダってヘビが多いんだろうか。こわいな。
跳ぶなよ。

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もうじきジャスパーの町が現れてくるだろう。

でも、このまま木陰に座り込んで、優しい風にずっと吹かれていたい。
疲れてるのかなぁ。

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ジャスパーに着いた。
思ったほど大きくはない市街は、何かのイベントで賑わっている。
そういや今日は土曜日か。

祭りだからか、なんらかの寄付を募る人があちこちにたくさん立っている。
が、今の俺には寄付をする理由も、されるいわれも無い。


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走りやすい穏やかな直線路を走り。
次に通りがかるのは、小さな町ホワイトスプリング。

道の広さ、快適さに肉体がついていかないのか、今日は3、4キロも走るとすぐに股がダルくなる。
道に走らされる感覚と言おうか。
ペースは悪くないのだろうが、気分爽快というほどでもない。
せっかく環境がいいのにこれは贅沢か。
店のおっちゃんにはこう言われる。

「疲れてるねぇ。」

まあねぇ。

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壊れかけのポスト群。

この手のポストはどことなくアメリカの田舎の風物詩っぽい。
丈夫そうなポストならユニ乗車時の手すりに使ったりもするが、これはムリなやつだ。
折れそう。抜けそう。

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本日何度目だかわからない休憩中。

はぁ。
これまで一体何度、こうやって路肩で休憩してきただろう。
アメリカだけでも数百回。
ほかの土地を合わせれば何千回になるか。

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ひょっとすると。
走っている時よりも、路肩にこうやって寝ころんでいる時のほうが、
その土地を深く感じているかもしれない。

風や空の色や、荷物の重さ、疲れた身体、それらがいっしょくたになって記憶をつくる。
一輪車の旅ならば、フレームやサドル、タイヤのゴツゴツした感触も含まれる。
そういえば、車輪の素材をゴムにして、
さらに中に空気を充填したチューブまで入れようと考えたヤツは大したもんだよなぁ。

さあ、レイクシティまではあと5キロぐらい、かな。

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レイクシティ。今度はなかなか大きな街だ。
背後から大きな黒雲が近づいてきてポツポツ降り始めたので、避難がてらのガソスタでバナナを買う。
コンビニでもたまに置いてある新鮮な果物は貴重だ。

この街は大きいわりに大したことはなかったが、
交差点を過ぎたあたりでパトカーから声をかけられたりはした。
車道の一輪車走行について文句を言われるのかと思ったら、

「写真を撮りたいから乗ってみせて欲しい。」

とのこと。
いつもどおりである。
少しだけ違ったのは、最後に「サンキュー、サー!」と言ってもらえたことかな。
ちょっとカッコイイじゃないか。

あとは、アメリカでも父の日というのはあるようだ。
レストランの看板に、「Don't forget dad (お父さんを忘れないで)」と書いてあって笑った。
父親の権威が強いと思っていたこの南部においても、影の薄い父というのは結構いるらしい。

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レイクシティを過ぎてしまったが、実は今日、この先で行くアテが特にない。
次の町までは遠すぎるからムリとして、その途中にモーテル関係がいくつかあるにはあるらしい。
近頃は有料宿泊が続いているから今日は野宿でもいいんだけどな。

やがて、何か町っぽいところに着いたけど、ここは何て名前なのだろう。
ただインターステートと交差するだけの、名もなき出入り口か。
ローカルのモーテルが1軒あるようだ。
しかしそのモーテル、一泊44ドルはいいがネットがなかった。
安くていいと思ったのにこれは残念。

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それならもう野宿でいいかと思ったところ、
潰れてそうに見えたこのモーテルが、なぜか営業していた。

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これ。
うーむ、怪しい。廃墟っぽい。
呼んでしばらく待ってから出現した受付のインドばあちゃんもちょっと廃墟っぽい。

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一泊55ドルでネットも使えるとのことで、ここに決める。

しかし案の定、WIFIは自分の部屋まで届かず、
ネットを見るには受付の近くで座りこむ必要があるのだった。
まぁ、こういうのにはもう慣れた。

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55ドルもふんだくるだけあって、少なくとも部屋は広い。
しかし明らかに2つもベッドはいらないのになぜこんな部屋をあてがわれるのか。
このモーテルに限って客がいっぱいということはあり得ないので、
交渉次第では少し安いシングルの部屋に替えてもらうことはできたのかもしれない。
もちろん面倒なのでやらないが。

思えば、アメリカのモーテルにも色々と泊まってきた。

中身はほとんどどこも一長一短。
値段は俺が泊まるボロいモーテルクラスなら、30から60ドルの間ぐらい。
無料のWIFIはほとんどあるが、たまにないこともある。
しかしあっても電波が弱かったり回線が遅かったりと、大して期待してはいけない。
ほかにも、風呂のお湯がぬるいとか、照明やエアコンが壊れているとか、
コンセントの差込口がユルユルとか、そういったマイナスポイントがどこでも最低1つはある。

今考えると、あのニューメキシコ州で不愛想なインド人が経営していたアメリカーナモーテル。
あれが一泊たったの30ドルで朝食にシリアルもついていて最高だった。
まさかあのモーテルを最高評価にする日がこようとは。
最近はここも含めて朝食が付かないところが多い。
高いくせに。

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買い物に来たコンビニの兄ちゃん。
最初はぶっきらぼうだったが、なんとなくの会話から一輪車旅について話す流れに。
ユニサイクルを見たいと言うのでわざわざ宿から持ってきた。
クレイジーとしきりに言っておられたが、これぐらいでクレイジーなわけがなかろう。

走行84キロ。
明日はそろそろ、海をめざしてみようか。