６月16日 橋と空間
たとえドーナツばっかりでも、朝食があると助かる。
町を出ればしばらく何もないだろうと覚悟していたが、意外にもちょうどいいポイントでコンビニ休憩。
そろそろ欲しいと思った場所に補給地点があると実に嬉しい。
SUNOKOという、このへんでよく見るガスステーション。
どう見ても簀の子しかイメージできない。
道も２車線で、昨日までに比べると妙に整備されている。
これはおそらく、すぐ右側の敷地すべてが広大なアメリカ軍基地になっているためだ。
こんなところで野宿するのはやめたほうがいい。
地図上でも非常に存在感の薄い集落、ペニーファームズ。
何もないのはわかっていた。
水と食料さえ十分に持っていれば、何もないほうが進むのは進む。
手作りバス停？
日よけにはちょうどいい。
しばらく座っていても、バスらしきクルマが来る様子はまったくない。
ウシがいたから反射的に乗っておいた。
隣にはブタがいた。
グリーンコーブスプリングスという町に着いた。
ちょっと天気も怪しいことだし、峠のてっぺんにあるガソスタで休むことにする。
その名もズバリ、HILLTOP FOOD MART。
あ、またスノコだ。
この古めかしい店では、古めかしいおっちゃんたちにやたらと話しかけられて困る。
何度聞かれても答えはこうだ。
やりたいからやってるだけ。チャリティじゃない。
この店、向いに最近できたっぽいあの綺麗なガスステーションにもうじき潰されるんじゃなかろうか。
余計なお世話だが。
グリーンコーブスプリングスの町で少し雨宿りをしてサラッと脱出。
次にたちはだかるのはこれ。
長ーーーい橋。
１．５キロはあり、上り下りの傾斜がキツく、路肩は非常に狭い。
大きな声では言えないが、グーグルマップのルート設定で乗り物に「自転車」か「徒歩」を選ぶと、
この橋は通れずに大きく迂回させられてしまう。
ナイスガイなユニサイクリストは通っちゃいけない橋なのかもしれない…。
しかし、明確にダメとも書いていない。
しばらく橋の手前でタイミングをはかり、行くと決めると一気に走り抜ける。
橋、終了。
ああああーーー怖かった。
１．５キロの狭い空間は本当に怖ろしい。逃げ場がないのだ。
橋の上から眺める広大な川の景色は美しかったが、写真を撮るような余裕はまったくなかった。
よしよし、ともかく、越えてしまえばこっちのもんだ。
セント・オーガスティンが近づくにつれ、ありがたいことに道が良くなってきた。
歩道やバイクレーンを安全に走れるなんていつぶりだろう。
ずっとこんな道のりならどれだけ旅が楽になっていたことか。
おっと、また水をもらった。
もうじき町なので必要でもなかったが、気持ちは嬉しい。
それにしてもここ数日、もらうものといえば水ばかり。
さすがにフロリダ人、暑いところでは何が重要かをよくわかっている。
これは、座って休むほどではない時にちょっと休憩する方法。
ブレーキをかけてタイヤを固定し、ユニサイクルのサドルに体重を預けてくつろぐ。
信号待ちや雨で路面が濡れている時に便利だ。
日本縦断の時、沖縄北部のジャングル地帯で編み出した。
セント・オーガスティン市街に入る手前の高速インターに、モーテル街がある。
その中でも一番安いだろうと予想していたこのナイツインが、聞いてみるとまさかの61ドル。
え、ネットで見たら47ドルとか書いてなかった？
ま、まぁしょうがない。
モーテルの値段なんてのはいろんな状況によって変動するものだ。
今日はここでいいや。
もっと安いところを求めて別のモーテルにアタックしようというような気分にまったくならない。
そろそろゴールかという近頃、値段はもはやどうでも良くなってきている。マジで。
おっ、高いだけあってなかなか素敵なプールもついているじゃないか。
泳いでいる人たちもいる。
そして俺はもちろん泳がない。
そんなヒマがあればベッドでゴロゴロするのさ。
コンビニで買うホットドリンクもコーヒーばかりでは飽きてきたので、
最近はホットチョコやヘーゼルナッツ風味などの色物を好んで飲んでいる。
特にヘーゼルナッツはうまい。甘いし良い香り。
アメリカ特有のこのデカいカップについては完全に慣れて、今やこれが普通になってしまった。
走行距離は75キロ。
昨日短めに抑えて休養したおかげか、今日も快適な道のりであった。
やはりアップダウンがないと全然違う。ジョージアと違って。
明日からは海沿いを走るコースになるだろう。
クルマが多そうだから気をつけようか。
