彼女は裏切らない


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わりと近所に、ウェンディーズというハンバーガー屋ができていた。

ウェンディーズか…。

子どもの頃、小学校の高学年か中学生ぐらいの時かな。
神戸の中心街にあるハーバーランドというところにウェンディーズがあってね。
外食をメッタにしなかった少年時代の俺が、どういう理由か忘れたが一度だけ食べに行ったことがあるんだが、

これがマズかった。

あくまで個人的に、当時の感想をただひたすら正直に描写しているのだが、

心が洗われるほどマズかった。

グルメでもなんでもない、外食にさほど味を期待していない俺をして、キッパリとマズいと感じさせるこのレベルの高さ。
普通においしいハンバーガーチェーンが他にいくらでもあるのに、なぜここのハンバーガーはこんなにもおいしくないのか。
どうやったらこんな味を作り出せるのか。何か間違ったのか。それともわざとやっているのか。
少年時代の俺にとって、そこが本気で疑問だった。

具体的にどうマズいのかはすぐに忘れてしまったものの、とにかく新鮮なマズさであったことだけは良く覚えていて、
そのウェンディーズが潰れて普通にウマいモスバーガーに取って代わられてからも、
そこを通れば自動的にウェンディーズという名前と、ロゴマークの女の子の無邪気そうというか何も考えてなさそうな笑顔のことを思い出したものだった。
どうしたわけか、ウェンディーズは俺の心の片隅に生き続けるハンバーガー屋になったのだ。

そんなウェンディーズ、日本からはほぼ撤退してしまったらしい。
しかし本家アメリカではマ○ドやバーガー○ングにいじめられながらもチラホラ生き延びており、
かと言ってわざわざ買って食う気にもならず、

「死ぬまでにもう一回ぐらいはウェンディーズに行ってまた懲りずに後悔してみるのもいいかもな・・・。」

などとという、もう他にやる事もない恍惚ジジイのような気分でいたのだが、

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なんだか今日、突然食いたくなってきた。

新築のウェンディーズを発見してしまったということと、この女の子の数十年変わらぬ胡散臭そうというか視点の定まらないスマイルに、文字通り取りつかれてしまったからだ。
一輪車の旅以降はアメリカでファーストフードなんか食いたいとまったく思わない俺だが、今日に限っては何かが違う。
よし、食うなら今しかない。
自分でも意外なほどに盛り上がってきた興奮を抑えつつ、真新しい店内に突撃だ。

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さすがのウェンディーズもそれなりの近代化を果たしており、内部は至って普通。

メニューは色々とあるのだろうが、俺はシンプルにダブルチーズバーガーでよいのだ。
ポテトその他はまったく必要ない。
え?ダブルチーズバーガーじゃなくてDAVE'S DOUBLEだ?
そんなもん知るか!

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買うものは買った。さらばウェンディーズ。
後は速攻で帰宅して試食だ。

イースターの夜、店内に客は一組しかいなかったが、ドライブスルーのほうには数台並んでいた。
どうやらそれなりの支持率はあるらしい。

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さて食おう。
ちなみに左がダブルチーズ、右は俺用ではないチキンなんとかだ。
うーん、緊張するな。
30年ぶりに食べてめちゃくちゃウマくなってたらどうしよう。

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おぉ…。

マズい。

と言ってしまうと語弊があるが、そんなにウマくない。
ファーストフードにしては味付けの薄いパティと、妙に固い紫色のタマネギ。チーズの味はあんまりしない。
平凡というか野暮ったいというか…とにかくそんな感じ。初めて作った手作りみたいな。
○クドやバーキ○のような、莫大な開発費をかけてなんとか個性を出そう、とにかく客に売りつけよう、という意欲が特に感じられない。
表現が難しいところだが、うっかりボルトが混入していたとしても、ウェンディーズなら誰も怒らないような気がする。

そんなわけで。
うむ、満足だ。
実に満足だ。

ともかく、俺は嬉しいのだ。
食べてピンと来たというほどのことはない。
だがしかし、やっぱりこの味はウェンディーズだと思った。確信した。
ありがとうウェンディーズ。
あいかわらずボンヤリしていてくれてありがとう。
あともう数年は食べないと思うけど、ひたすらありがとう。
入店、購入、試食までの短い間、高級レストランに行って極上の料理を食うよりよほど楽しかったよ。
俺はこういった体験がとてもとても好きだ。

何回も言うが、味は個人の感想だからな。
ウェンディーズが大好きという人とも俺は話が合うだろう。
たぶんな。

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あ、マズいと言えば。
この前スペイン語教室の食事会にやっつけで買って持って行ったコロンビアのコーラ。
吐き気がするほどマズかった。
これならキューバのコーラのほうがよっぽどマシだ。
コロンビアのパン(パン・デ・ボノ)はあんなにおいしいのに一体なぜだ…。