筒の中

0時過ぎから降り出した雨は、
なかなか強かった。

俺は大分駅前のアーケード街から出る気にもなれず、
結局そのまま朝になってしまった。
天気予報ではこれから雨は止むらしいので、
移動するにはちょうどいいだろう。

深夜のアーケード街は、不思議な空間だ。
低く落とされた照明のなか、
なぜか深夜にもいる通行人や、
工事の関係者が行き交うのをそれとなく感じつつ、
俺はバイクのそばでひっそりと寝転んでいた。

そうだ。
強い雨がアーケードの屋根を叩く音を聴きながら、
俺は銀子さんが作って持たせてくれた、
ラッキョの巻き寿司という珍奇なものを食べたのだった。

それは、酸っぱいようで甘いようで、
意外にもおいしくて、
俺を幸せな気持ちにさせてくれた。

まぁ、それだけの話だ。

雨を回避しつつ移動するには…と、
今はそんなことを考えている。
明るくなってきた大分の街を眺めつつ。