飛鳥19歳

九州の旅のシメを飾るのが、
まさか日曜の博多になるなんてな。

長崎から福岡まで一気に走ってきて、
散々な雨予報のハズが、
なぜか終始良いお天気。
昨日以来湿りまくりの防寒着(北仕様)がグングン乾くという、この素敵。
逆に言えば、とても暑い。

知ってはいたが、博多周辺は相当な都会だ。

「博多駅の構内じゃみんなモノ広げて売ってるよ!」

宮崎で少し話したトラックの運ちゃんがそう言ってたので、
まさかと思いつつもまずは博多駅を調査するも、
さすがに構内で売ってるヤツはいなかった。
まぁ、そうだろうよ。

それじゃあ、てことでやって来たのが、
博多から1駅の、
今俺がいる天神というエリアだ。

ここはどうやら福岡一の繁華街らしい。
ここならどっかでTシャツを広げられるだろう。

例によって、バイクを置いて天神周辺を散策。

さすがに広い。そして人が多い。
おおっ、都会やな!

穴のあいた長靴で歩き回るのもだいぶ慣れたが、
こうも広いとちょっとなあ…。

それに、さっきから誰か人を捕まえて、
この辺でモノ売ったりギター弾いたりできるところを聞きたいと思っているのだが、
どうも皆さん忙しそうだ。
携帯片手にカツカツカツカツ歩く、天神の皆様。
北の大地から出てきた俺風情に声をかけるスキはない。

やがて、天神の繁華街の中にある公園に行きついた。

ここでちょいと休むか。

そう思った時、
目の前25メートルに、
カラフルなチューリップハットをかぶり、
黒いエレキギターを構えて、
アンニュイさ全開で座りこむ女の子を発見。

来た…。
あの全身を包む、ただならぬ雰囲気を見ろ。
天神のミュージックシーンについて聞くなら、
もはや彼女しかいないだろう…。

…そんな彼女、飛鳥さん(19)が、
よもやギターを買って3日目だったなんてあたり、
自分の第7感の腐り具合に改めて自信を持った次第である。

それはいいとして。

彼女に長々と話を聞いた結果、
天神でのモノ売りはやはり夜が主体であり、
同業者が多いという大体の場所もわかった。
そして飛鳥さんが買ったばかりのギターを抱いて寝るほど気に入っており、
モノ作りが好きで、
絵を描くこともわかった。

彼女はこれから用事があるらしい。
俺はどうするか。

夜まで寝てるか、
どっか適当な場所で昼の部でも開催するかな。

俺のTシャツに興味を持ってくれた飛鳥さんに、
気が向いたら後で俺の商売風景を見に来てくれるように言い、
俺はまた、アテもなく天神の街を徘徊し始めた。