6月21日 いてもいつかず
広いが暗いバス停にて、雨宿り野宿。
雨漏りや蚊の来襲に耐え忍びつつ、なんとか眠れたか。
蚊には唯一露出している顔ばっかり咬まれたよ。
もう5時半。いやむしろ寝すぎ?
なぜならバス停には、今朝もやはり2人の労働者がバス待ち中なのである。
なんというか、ちょっともう慣れてきた。
どうやら雨はやんでくれたらしい。
こいつはラッキー!さて、いくかぁ。
通りすがりのマハグアという町。
看板の文章をうまく訳せないが、これといって問題はない。
ところで。
どうも腹の調子がイマイチなのだ。
俺は子どもの頃から腹が弱いことで有名なので、下痢による腹痛にはある程度慣れている。
しかし今回は、腹が痛くもないのに突如、液状便が出てきた。
なんだこりゃ。これまであまり体験したことのない症状である。
でもまあ、スッキリ。
そりゃあ同じ下痢でも痛くないに越したことはない。
キューバの生水のせいだろうか…。
思い当たるフシがたくさんあるだけに、いつか来るものがついに来たという感じもする。
地図を見ると、サンクティ・スピリトゥス以降はしばらくずっと直線の道路が続きそうだ。
でも直線だろうが曲線だろうが、キューバの道はあいかわらずクルマがデッドヒートしている。
これには本当に気を付けなければ。
サンティアゴ・デ・クーバまでの行程は、そろそろ半分を越えているようだ。
期間内に間に合うのだろうか。まるでわからない。
途中でまたしても軽く雨に降られたりもしたが、どうにか35キロ走って、シエゴ・デ・アヴィラに到達。
街に入ると道が二車線!
そしていきなり晴れて暑い!
久しぶりの晴れ間。そうか、晴れってこんな感じだったか!
で、さっそくガソスタ兼カフェに突入。
ともすれば単調な旅。
街に来たら、店に入って水を買ってコーラを飲むぐらいしか楽しみがない。
しかしこれは初めて見た。
キューバ産コーラに、よもやダイエットバージョンがあろうとは!
味は腑抜けてるけどな。
これならいつものキューバコーラでいいやーって思ってたら、外はいきなりのごっつい雨。
晴れてみたりザンザン降ってきたり。
ああもう、今日はどうなってしまうんだ。
急に降ってきた強い雨のせいで、さすがのキューバ人も雨宿りの場所を求めてあちこち走り回っている。
そんな光景を快適な場所から眺めるのは少しいい気分だ。
この雨がずっと止まなかったら、そんな余裕もきっとなくなる。
雨宿りでヒマだったので、ついまたCUC払いのコンビニピザを買ってしまった。
今日こそ町の屋台か何かで、前から食べたかったマンゴーを買おうと思ってたのに。
生意気なことに、この店のピザにはいくつか種類があるようだ。
俺はどうせよくわからんので、その中から『ケソ』って書いてたヤツを頼んでみた。
で、ケソって何。
ピザが出来上がり、実物を見てもなおわからん。
なんとなくイメージ的にシーフードでも乗っていそうだったが何も乗ってないし。そりゃゲソだ。
それはいいとしても、ひょっとしてキューバのピザって具が乗ってないのがスタンダードなのだろうか。
店内には客とおぼしき小太りの黒人女性が一人いて。
その若いんだかどうだかよくわからない彼女になぜかビールをねだられるも、笑ってスルー。
俺はお人良しではない。ただの旅の守銭奴である。
しかし、俺が注文したピザは、なぜか店員ではなく彼女が持ってきてくれるのであった。
なんなんだ、システムがさっぱりわからん。
他には、おっさんどもが昼間っからキューバの缶ビール、クリスタルで酒盛り中。
雨でヒマなのか。それともいつもヒマなのか。
こういうの、世界中どこにでも見られる現象のような気がする。
今日も雨か。しかも強い。
この雨脚の中、今いるこの店を出れば、また濡れネズミ決定だ。
さあ、考える時がきた。
うーん。
うーん。
ずーっと、ここに居るわけにもいかんよな。
行きましょうかー。
少し小止みになったところを見計らい、思い切って外に出てみる。
折り畳み傘をさし、一輪車を押して、シエゴ・デ・アヴィラの街を歩く。
やっぱりなぁ。
しばらく歩いただけで、せっかく乾きはじめていた靴も上着もぐしょ濡れだ。
しかもだんだん冷えてきたよ。
こんな時、俺はどうすべきだろう…。
歩きながら悩んだ末、この街でカサを探すことに決めた。
通り沿いに一軒みつけてベルを鳴らしてみるが、誰も出てこない。
やれやれ。せっかく泊まる気になったというのに。
カサを探しながら歩いているうちに、思ったほど広くなかった街を出てしまいそうになる。
うわぁどうする、このまま雨の中を行くか。戻って探し直すか。
昨日、一昨日と雨に降られながらの野宿で、俺もそろそろ限界に来ているようだ。
いつもなら街を出てしまいそうなところを踏みとどまり、足は元来た方角を向く。
本能は休養を求めている。
さりとて、カサ・パルティクラルのアテはない。
人に聞こうにも、この雨だ。街中を歩いている人はごく少ない。
そんな中、人力車タクシーでゆるゆると走るおいちゃんをみつけた。
とっさに呼び止め、カサを知っているかと聞いてみる。
ちょうどその時、雨を逃れようと、同じ人力車に駆け込んできたクロヒョウみたいな兄ちゃんが出現。
タクシーのおいちゃんと兄ちゃんは、
「この街にカサ・パルティクラルなんてあったっけ?」
みたいなことを真剣に討論しはじめ、
二人して「あそこだ!」と結論を出したようだ。
しかし、この通り沿いとか言っているあたり、おそらく俺がさっきノックして誰も居なかったところだろう。
そこはダメだと言ってみたが、難しいニュアンスは伝わらない。
結局、そこにまた行ってみることに。
初人力車!
でも俺と兄ちゃんと一輪車とデカいザックで、もうギューギュー詰め。
人もモノも一緒くたに押し込んで、縮めるようにしてムリヤリ乗る。
連れていかれた先は、やはり先ほどの家。
ここは居ないと思うよ、と言うのだが、
クロヒョウ兄ちゃんは実にしなやかな動きで人力車から降り立ち、カサのドアに突撃してくれるのだ。
何度かベルを鳴らしても、やはり誰も出てこない。
ほらな、居ないって言ったろ。
しかし、なおも押しまくる兄ちゃん!
凄まじい執念である。
だから居ないって…。
え、うわ、婆ちゃん出てきたよ!!
しつこく押せばいずれは出てくるのがキューバ流なのか!?
とにかく兄ちゃんありがとう!
本気で感心したので厚く礼を言うと、ニヤリと照れ笑いをするナイスガイである。
本気で感心したので厚く礼を言うと、ニヤリと照れ笑いをするナイスガイである。
人力車のおいちゃんには言われるままに1CUCを払い、彼らとはそこでお別れだ。
どう考えてもボラれ価格だが、今回は手間をかけたのでヨシとする。
てなわけでー、ひさびさのカサ・パルティクラル!
今度は離れの2階だ。
ボロめな家の外観のわりにカサ部分は広く綺麗で、ちょっとお高い25CUCを取るのもそこそこ納得。
セーブマネー万歳の身としては散財ではあるけど。
まあいいや、とにかく休養だ。
なんせ今日はもう、雨のことを考えなくてもいいのだ。
宿のおばさんに聞いた天気予報は明日もまた雨らしいが、今は気にしない!
応接間と呼んでいいほどリッパなリビングと、広大なベッドルーム。
実に素晴らしい。
昼過ぎのこんな時間からチェックインするのが惜しいぐらいだ。
そしてここまでちゃんとした家なのに、なぜトイレに便座がない。
2階にはベランダがあって、そこにも気持ち良さそうなベンチがあったりする。
でも雨降りだとどーしよーもない。
まずは、シャワーと洗濯だな。
雨は依然として強く、外に買い物に行く気にもならない。
あまり傘をさしているところを見ないキューバ人ですら、今日は傘の人が多かったぐらいだ。
もし、この雨の中を先へと進んでいたら、今ごろは相当な濡れ方をしていたことだろう。
本当はもう少し進みたかった。でも今日はこれでよかったのだと思う。
天気予報を観るべくテレビをつけていたら、なんと英語のドラマの字幕翻訳を放映している。
どうなってるんだこの国は。アメリカ&英語文化が嫌いなんじゃなかったのか?
それと、放映するドラマのチョイスがまた2、30年ぐらい古いモノっぽかったが、これはまたなんでだろう。
キューバが何を考えているのか、いよいよわからない。
キューバが何を考えているのか、いよいよわからない。
あ、今日の走行は39キロ。
昨日たくさん走ったおかげで、平均一日50キロ以上という目標のペースはなんとか守れている。
昨日たくさん走ったおかげで、平均一日50キロ以上という目標のペースはなんとか守れている。
だが明日が朝から雨なら、次はわからないな。
だって、生きてるんだからしょうがないじゃないか。
過去は変えられない。未来は変わるしかない。動かないのは今の一点のみ。
そして、今の俺がやりたいことと言えば、ひたすら眠ることだけだ。