6月20日#3 雲に惑う
いつまで昼寝してても、前には進まないよな。
さ、行くかぁ。
おー、あのサンタクララから85キロも来たか。
懐かしのリゾート地、バラデロからはもう305キロ。
今回の旅はどうにも進んでいるような気がしないのが特徴だが、一応ちゃんと進展してはいるようだ。
そして前を見る。
なになに、次の大きな街は、77キロ先のシエゴ・デ・アヴィラ。
その次が、まだまだ思いっきり先だがカマグエイ。
カマグエイはおそらくキューバ中央部で最大の都市だろう。
当面はこいつを目標にして進むことになりそうだ。
あと182キロか…。いつになるやら。
サンクティ・スピリトゥスをどうにか出る。
この街を出てさらに東に進路を取ることで、
最初は立ち寄ろうと思っていた観光名所の古都トリニダーに通じるルートとは完全に決別となる。
ま、帰りに気が向いたら寄ってみるのもいい。
それはそうと。どうにもしんどい。
街の出口にあるガソスタ兼カフェで、またしても休憩。
雨の行軍によるダメージは、自分で思っていたよりも深刻らしい。
少しでも元気を出そうと、カフェにあったピザとレッドブルで気合いを入れる。
ここのピザは町の店先で売られているピザの5倍の値段で、それなりにボリュームもある。
が、さほどうまくはない。
町のピザが庶民的な屋台なら、ここのはコンビニによくあるチンするだけの冷凍食品なのだろう。
ただモクモクと流し込むのみだ。
さてさて、どうしたものか。
店の女の子の笑顔にだいぶ救われたんだが写真はない。
街を出て。
ちょっと蒸し暑いぐらいの道を、ひたすらユニサイクリング。
今みたいに雨が降ってさえいなければ、路肩の草原でいつでも休むことができる。
一輪車で旅をするには、今ぐらいの気候が最良の状態かもしれない。
ただ体調はベストとはいえず、ゆっくりとした休養が必要だと感じる。
それと、余裕をもって首都ハバナに戻るためには、やはりこのペースでは間に合わないかもしれない。
とはいえもう、成り行きにまかせるしかない。
とはいえもう、成り行きにまかせるしかない。
よく考えたら、すごい状況だよな。
このご時世に、日本のことや世界のことをまるで知らなくて済む。
インターネットも繋がらないし、テレビやラジオだって身近にないのだ。
そんな今、ここでしかできないことも、あるはずだと思うのだ。
貴重な時間なハズなのだ。
しかしこういう時に限って、こういう時ですら、大して何も思い浮かばない俺なのである。
ほんとに、なんのためにキューバに来たのだろう。
対向車線から走ってきた、家族を乗せたクルマが、なんと俺にトリニダーの場所を尋ねてきた。
おいおい、あえて俺にトリニダーの場所を聞くか!?
そして一輪車は見事にスルーか!?
ま、ちゃんと教えてあげたけどな…。
ま、ちゃんと教えてあげたけどな…。
それから黙々と走っていると、今度は背後から救急車に取りつかれ、シャレでサイレンまで鳴らされたよ。
そんなことしていいのか?日本なら始末書ものだぞ!
ふっ、なんにもない道のりのわりに、今日はなんだか賑やかである。
昨日の今ごろは雨で苦しんでたなぁ。
またそのうち身悶えることになるんだろうなぁ。
サンクティ・スピリトゥスから30キロ。ハチボニコ?とかいう町にきた。
町の入り口に汚そうな宿もあったが、ここでは泊まらず。
あれが綺麗なら少しは心が揺れたのだが。
せっかく雨が止んでいるのだ。この際もうちょい進んでおきたい。
夜中にまた降ったりしなければと願うばかりだ。
CUC払いのチェーン店であるエルラピッドにまたお世話になってしまった。
CUCの店はペソクワーノの店より物価が高いのだが、あまり喋らなくていいし、人が少ないのでくつろげる。
スペイン語での会話が面倒な時には、ついついこちらに走ってしまうわけだ。
それにしても、このエルラピッドを利用する人間と、それ以外の庶民との隔絶感がすごい。
一般キューバ庶民にとって、CUC払いの店はなかなか敷居の高いものらしいことがよくわかる。
今回はピザとかコーラではなく大きいボトルの水が欲しいかったのでこの店に直行したのだが、
そんな俺を町民から見たら、ブルジョア!金持ち外国人!てな感じなんだろーなーと思う。
まぁそうやって俺が金を使うことで、彼らの生活にも少しは還元されているのだろう。
さあいこうか。
そろそろ夕刻が近い。
ペースは悪くないが、このまま今日中にシエゴ・デ・アヴィラまで行くのはムリっぽいな。
そうなると、今日も野宿の気配が濃厚なのである。
セーブマネーばんざーい。
ああもう、疲れた。
適当な路肩の草の上で寝てみる。
テントを張る場所はさすがにもう少しよく考えるべきだが、
あまりにも疲れるとそのへんの判断力が薄れてくるのが危険だ。
実際は写真の感じよりもっと暗いので、おそらく誰にも見つからないだろう。おそらくな。
内部。
テントというより蚊帳。それで充分。
今日は74キロ進んだ。
雨が止んだ夕方からは調子がよく、おなじみのハイパーモードがキューバでもちょこっと出たかな。
それはいいんだが、テントの中、暑い。そして狭い。自分の荷物がジャマ。
しかしこの時刻、テントの外は蚊の楽園だ。
夜のキューバの蚊は本当にシャレにならない。
蒸し暑くて窮屈でなかなか眠れずにいたら、22時頃になって、おもむろに雨降ってきたよ!!
くそっ、きやがったか!
パラパラ雨のうちに超速攻でテントを撤収完了、即移動再開。
パラパラ雨のうちに超速攻でテントを撤収完了、即移動再開。
そこから1キロも歩かないところに、なんと奇跡的なまでに広くて綺麗なバス停が!
ラッキー!!
難を逃れて一安心したところで、ドバーッと本降り。
夜中のスコール。すべてを洗い流すような。
やばかった。まさに危機一髪。
ああ、やっぱり降ったかぁ。
そんな気は、実はちょろっとしていた。
今日はおとなしく、さっきの町で見つけた汚い宿にでも泊まっとけばよかったんだな。
反省だ。
今後の作戦も考えなおそう。
暗いが広いバス停の隅っこで、俺は今、そんなことを考えている。