6月22日 ひらめけばマンゴー

雨の降り続く宿。
3日ぶりで屋根の下にいるのに深夜は寒いぐらいだ。
一度起き出して寝袋を取り出し、ベッドの上で寝袋をひっかぶって寝る。
またも変な夢ばかり見た。
 
大学受験の頃の情景とか。
高校の同級生の頭の骨にヒビが入ったとか。
バイクのフレームに別のバイクのエンジンを載せ換えているとか。
あいかわらず意味がわからん。
 
夜中の雨は激しかったようだが、朝になった今はどうかな。
どうも背中の筋肉の張りが強いようだ。
カラダの動きに違和感を覚えつつ窓から外を見ると、ふぅ、やはりまだ雨か。
まあ腐ってもしょうがない。今日は出よう。
心身のリセットは多少できたようだし、少なくとも暑い思いはしなくていいのだから。
 
それはそうと、またしても痛くない下痢である。
なんなんだこりゃ。
痛くないし、今みたいにいつでもトイレが使える環境なら、なんてことはないものだが。
こんなこともあろうかと、成田空港で買っておいた新ビオフェルミンS!
昨日からガンガン飲みまくっているのだが、効いてないのだろうか。
がんばれ乳酸菌。
 
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カサを出る。少し英語を話せるおばさまが見送ってくれた。
雨のなかを慌しくやって来たものだから、ここの人々とは交流らしきものはほとんどなかった。
でも、それとなく親切な家族だったように思う。
 
ところで、写真を撮っていいかな?と聞いたらおばさま、ちょっと焦っている。
いかにも寝間着か部屋着なので、カメラに写るような格好ではなかったのだろう。
悪いことをした。そういうところに気がいかないからモテないのかもしれない。
今度から、女性の写真を撮らせてもらう時は注意しよう。
 
シアゴ・デ・アヴィラは地図上ではさほど大きく扱われていないが、実はわりとなんでもある大きな街だった。
落ち着いて見ればカサ・パルティクラルは他にもあったし、食料品が買えそうな店もいくつか出ている。
そこで、いかにも地元民専用のペソクワーノ払いであろう古ぼけた商店で、食料を買ってみる。
 
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コーラと、他にはカールみたいな揚げ菓子と、これは珍しいことに、板チョコもあった。
キューバで板チョコなんか見たのは初めてな気がする。
銀紙だけで包装紙がないのは少々怪しいが、しっかりとしたブ厚いチョコで食いでがあり、そこそこうまい。
缶ドリンクは、やはりCUCの店よりはちょっと安いという程度。
お菓子はそれなりに安いが、大幅に値段が違うというわけでもない。
CUCであれペソクワーノであれ、元々こういった工業生産的な食品は値が張るのかもしれない。
 
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さて、だんだん晴れてきてくれたようだ。
結果的にはカサに泊まってよかったか。
行こう!
 
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なぜかキリンがいるけど気にしたら負けだ。
 
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シエゴ・デ・アヴィラを後にして、再び長ーーーい直線道路の旅の再開だ。
 
ここでなんと、開眼である!
街を出てなにげなく一輪車に乗っていたら、ふと、ハンドルに体重をかけまくることを思いついた。
一輪車にハンドル?と思うかも知れないが、
ある種の一輪車には、サドルの先端に、手でつかめるグリップのようなモノが付いている。
 
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これ。ブレーキの上に付いているヤツだ。
正式になんて名前なのか知らないが、仮にこいつをハンドルと呼んでいる。
で、このハンドル部分に、およその全体重をかけながら走るわけだ。
 
これがいい。
ちょうど、自転車で猛烈にこいでる時の感じ。腕の力で上半身を支える。
ほとんど立ちこぎのようになるが、立ってしまうと一輪車はこげなくなるので、代わりに超前傾姿勢になる。
 
難点は、この前傾しまくりフォームだと、スッとした美しい一輪車乗りの姿勢にはならないこと。
バランス感覚を鍛えるという意味では上達しない一方だが、
それよりも今は、航続距離を増やすほうが重要だ。
これまではがんばって連続4キロも走ると股が痺れて降車していたところが、この方法だとかなりいける。
体重を支える腕が疲れるものの、そもそも脚に比べて腕はあまり使わないので、たまには使ってやろう。
 
なるほど、一輪車マラソン(という競技がある)の人たちは、こういうスキルをマスターしているのかもしれない。
そうでなければ、一度も一輪車から降りることなく長距離を走破できるとは俺には到底思えない。
だがこんなことを、琵琶湖とアイスランドを一周して日本縦断して、
さらにキューバを半分ほども走らないと気づかないとは、アホといえばアホである。
良いほうに考えれば、ここにきてテクニックの水準がこの技術を可能にするまでに向上したからこそ、
おもむろにこの方法が閃いたのだ!とも言えるか。
 
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このハンドル全加重超前傾走法をとりあえず、『クルージング』と名づけることにした。
クルージングを会得した俺は、ただひたすら走る。
一度に走る距離としては、これまでで最長レベルかもしれない。
何もない道中でもまったく集中を切らすことなく走り続け、
やがて小さな集落に入り、いつもの股ではなく、上半身を支える腕が痺れてきたのでようやく降りる。
連続10キロ以上は走ったことだろう。
 
水と食料は街で買っているので問題ないのだが、この町には見逃せないモノがあった。
果物屋だ!!
ここでついに、念願のマンゴーを入手。
値段を聞こうと話しかけると、3つで1セットだ、みたいなことを言ってくる。
それは多すぎるよ!ってことで、1つだけ売ってもらう。
マンゴー1個で4ペソクワーノ。16円?タダみたいなものだ。
 
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マンゴーを買ったはいいがどうやって食べようかと悩んでいると、
なんとお姉さんがナタを使って剥いてくれるのである。
それにしても妙にデカいマンゴーだ。
 
以前から、マンゴー満載のトラックが通りすぎるたびに強烈な甘ーい匂いを振りまかれ続け、
いつかは絶対に食いたいと狙っていたのだ。
ついにマンゴー!うまい!甘い!
うーむ、これは本当にうまい。
まさに南国の味。ねっとりと甘く、みずみずしい。最高。
 
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知ってるヤツ知らないヤツ、いろんな果物が並ぶ店。
お姉さんがわざわざひと切れずつ切ってくれるのを食いつつ、よくわからんながらも村人たちと会話する。
最後はもちろん衆人環視のなか、モンタ・デモンストレーションとなるのはもはや儀式みたいなもの。
マンゴーを食って機嫌のいい今の俺なら楽勝である。

しかし、あのデカさのマンゴーは、一人でひとつ全部食うとさすがに飽きるな。
もうマンゴーはしばらくいい感じ。
いやでもうまかった。ありがとう!
 
さあ、会得したばかりのクルージングでガンガンいくぜ!