一歩

イメージ 1

青森駅前にて入ー念な下調べの末、
ついに開業。

いやもうその、
こっ恥ずかしいのなんの。

想像するのと実際やるのとじゃ大違いだって。
しかも並べる商品がまた、
見れば見るほど中学生の文化祭レベルやし!

しかし、この一歩を踏み出さないことには前に進めん。
意外としわくちゃになっててビビったTシャツを震える手つきで3枚並べて、
ついに念願の、店開きである。

時刻は午後4時。
人通りはそこそこある。
廃業したホテルの前に並べられた怪しいTシャツ群を、なんと3分の2ほどの人々はチラッと見ていくではないか。
やはり何か一種異様な気配がTシャツと俺自身から放出されていると考えてまず間違いない。

そこで俺はといえば、
昨夜ありがたくも泊めてもらったリノさんと共に考えた『ご当地Tシャツシリーズ』第1弾として、
金魚ねぶたの絵を描いていた。
これはねぶた祭の時に出てくる超小型の金魚型ハリボテらしいのだが、
実物を見たこともないのに妄想で描いた結果、
なんとも厳しい作品に仕上がったことは言うまでもない。

だが真の問題は、なんとなく完成した金魚ねぶたを陳列した後に起こった。

店を出すということは、
すなわち店主が店番をしなくてはならんということだった。
そしてその仕事の最たるものは、待つこと。これに尽きる。
ではどうやって待つか。
ここはやはり、ギターを引っ張りだすしかあるまい。

颯爽とギターをかまえ、そして適当にコードをジャカジャカと弾いてみる。
これでも一応「ギターを弾いてる人」ではある。
だがしかし、
それも2時間ぐらいずっとやってるとだんだん手が疲れてきた。
これで声も出そうもんなら結構つらそうである。

と、そんな時。
一人のおばさんが並べたTシャツをじーっと見ているのに気づく。
これまでも高校生やらOLやらがしばし立ちどまってくれることはあったが、
中でもこのおばさんの停止時間は新記録だ。
ここはもう声をかけるべきだろう。

「…こんにちは。」

「あらーお兄さん、どっから来たの。」

「…神戸です。」(でも実は北海道在住だとか語りだすと長いのでパス)

「へー、あらこれは?」

「あ、それ、金魚ねぶたのつもりなんですよ。どうでしょう?似てますか?」

「アハハ、かわいいわねぇ。
そのギター、何か曲弾けるの?」

「…いえ、まだロクに弾けないんですよ。」

「あらそうなの。じゃあ、がんばって。」

「ありがとうございます。」

これが、俺の初めての客との全会話記録である。

そうか…。そうよな…。
ギター持ってりゃ何か一曲ぐらい歌えると誰でも思うよなぁ。
やっぱ適当にコード弾いてる場合じゃなかった。

いつしか時間は7時。
Tシャツを並べて3時間はたった。
品物を見てくれる人は結構いるが、買うどころか話かけてくれたのはあのおばさん一人だけ。
まぁ、今日は出店できたことだけでよしとしよう。
やってみればいろんなことがわかったしな。
ギターのこともそうだし、
やはり客商売というのは客とのコミュニケーションが重要みたいだ。
仏頂面じゃあ誰も近寄らんよなぁ。
うむ。やはり経験に勝るものはない。

その後、店じまいをしてバイクに乗り、
青森市を出て今は七戸という町の道の駅にいる。
今夜はここで寝て、
明日は八戸あたりで青森県第2ラウンドとしゃれこむぜ!

ほなまたー。