かっぱの絵

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「遠野物語」の舞台である岩手県遠野郷には、
かっぱ淵と呼ばれる、小さな観光名所がある。

で、今そこにいる。

これまで商店街の買物客ばかりを相手にしてきた俺だったが、
ふと、たまにはターゲットを観光客に向けてはどうかと思い立った。
なんというかこう、行楽気分の勢いで買ってくれそうじゃないか。
まぁ幹線国道ばっかり走るのに飽きたということもある。
そして花巻からやって来たのが遠野郷の、かっぱ淵なのである。
俺の記憶では遠野で何か売れそうといえば、
遠野駅前かここしか思いつかなかった。

8年ぶりぐらいでここに来てみれば、
観光客がわりと頻繁に訪れることを知って少々驚く。

そこでさっそくTシャツにかっぱの絵を描いてみたら、
これが空前の失敗作だった。
園児でももっと味のある絵を描くだろう、てぐらいの切なさがこみあげる一品だ。

そして俺は、ようやくこの時になって初めて、
Tシャツに絵を描くことの難しさを痛感したのである。

そもそも、Tシャツに筆で直接何か描くのは簡単ではない。
紙と違ってインクが伸びず、かといって水を混ぜ過ぎるとにじむ。
これまで作ってきた自作Tシャツがことごとく文化祭レベルであるのも、
いまだにこの問題をクリアできていないという部分がかなり大きい。
先に一回洗濯しておけばノリが取れていいとも聞くが、
今の俺の状況でそれは望めないしなぁ。

いやーまいった。
こんなことすらできなかったなんて。
これが見切り発射で飛び出してきたアホの、成れの果てである。

なんとか、Tシャツの布地に鮮やかに線を引く方法は無いものか。
たいして広くもないかっぱ淵を何周も歩き回ったり、
誰かが置いたらしい、木の枝で作った竿に餌としてキュウリが1本結ばれた釣竿を川に投げて引きを待ったりしてみたが、
ついに妙案は出てこなかった。

こんなとこまで一体何しに…と今回の旅で定期的にやってくる落胆をまたしても感じながら、
ふらーと遠野駅まで戻り、
よその街に行く前に何か食べようと入ったスーパーで1斤6枚切98円の食パンを買って直後に全部食ってしまって胸ヤケを感じたあたりで急に気が変わり、
また再びこのかっぱ淵に戻ってきたわけだ。
なんでもいいから、とりあえずかっぱTシャツを1枚仕上げたいと思ってね。

それで今ササッと描いたところだ。
こいつに関しては売れるかどうかはどうでもよくなってきた。
ただ、自分ではまあまあ良い感じに描けたと思う。
さっきスーパーと一緒に寄った百均で毛の固い平筆を買ってみたところ、
こいつをうまく使えばインクのかすれやにじみを修正できそうな気がしてきた。
とりあえず2ミリ前進ってとこだろうか。

あー。
この場所はなぜか落ち着くなー。
来てよかったと思う。

でも、適当に切り上げて、そろそろ次の街に向かうとしよう。

ほなまたー