始発

上野から新宿に移動する際の、山手線でのスシ詰め体験は、
ガラ空きのワンマン列車を乗り継いできた俺にはなかなか得難いものがあった。

金夜で過密に賑わう新宿の街を、爽やかに徘徊して見学。
俺の恰好はおそらく新宿で1、2を争う厚着である。北海道から出てきたわけだし。暑い。

この日本一の繁華街エリアはいつ来ても、しばらくは興味深い。
酒気と色気と計算に満ちた、猥雑にうごめく巨大な街。

そんな場所で行き当たる女たちがまた、
夜の光に照り映えてか不思議な存在感をもって浮かび上がり、
そしてなんともいえない香りを残して過ぎ去っていくのである。
血がザーザーとざわめくのを感じる。

そして。

午前1時頃、いまだ栄える新宿を出て、なんとなく歩き出す。
わりといつもこうだ。
血のざわめきは気化までするが、燃焼には至らない。
不思議なことだ。

その代わりというか、歩く。
他にやることもないしな。
発想の道筋がいまだ中学生レベルなのはひょっとするとイケてないのかも知れないが、
これがまた意外と、新しい思いつきを生み出したりするのだから、あながちバカにもできない。
今日思いついたこのおもしろげなアイデアは、いつか実行に移すとしよう。

新宿から吉祥寺まで歩いてきた。
脚が棒である。略して脚棒。
3時間ちょい。10キロぐらいか。
休憩するつもりで駅に入ったらちょうど始発が来た。
ラッキーと言いたいところだが、
よく考えなくてもこの電車は新宿を通過してきたに違いない。
だから、行動の発想が中学生レベルだと言っている。

始発なのに乗ってる人が意外と多いもんだ。
この旅も4日目である。