4月26日(月) アイスランドに爽やかな笑いを

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起きたら雪。
それでも、今日は出発。

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大量の食料はリュックの中に詰められるだけ詰めて、
あとはしょうがないので上に積む。
お世辞にも見事なパッキングとは言えないが、落ちなければそれでいいんだ。
見栄えよりも食料の確保が最優先!

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朝8時半。
様々なことを経験し、一瞬住みたいとまで思ったエギルスタズィールを出る。

エギルスタズィールから次の町までは208キロだとずっと思いこんでいたのだが、
この街で買ったワンダフル詳細地図によると、
ここから166キロ先のミーバトン湖畔にもレイキャリーズという町があることが判明した。
最難関無補給地帯の走行距離が40キロも減るとはありがたい。
やはりマトモな地図は役に立つ。

さぁ、行こうか。

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昨日、テレビの撮影をしたカーブ。
この湖は昨日も岸辺が凍っていたが、今日は雪のせいでさらに寒々しい。

果たして俺のニュースは今日の夜に流れるんだろうか。
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東側には真っ白い山脈が広がる。
アイスランドの中心部をのぞけば、あのあたりは特に雪の多いエリアなのかもしれない。
ヒャッティとサントラの住むセイズィスフィヨルズルは、あの山のむこうだ。

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朝は雪で驚いたが、じっくり好天を待っただけあって、今日の天気は良さそうだ。

それにしても…わかっちゃいたが、食料、重ッ!!
しかもリュックの上に重いものを乗せたせいでバランスが取りにくい!

普通、大荷物のパッキングは重いものを上にするのが良いとされているハズ。
でも一輪車につけたキャリアにリュックを乗せて走るという特殊な事情により、
俺のリュックは全体の重量バランスがわりと下寄りになっていたのだ。
今をのぞいては。

だがしかし、この重さはすなわち食料のゆとり。
食えば減って軽くなっていくだろうし、そう考えると意外と気にならない。

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昨日の朝、ジェイソンのレンタカーでやってきた橋に到着。
一度通ったハズの同じ道でも、クルマとユニサイクルではほとんど同じ道のような気がしない。
スピードによって見えるものは違うんだ。

昨日は気づかなかったけど、なかなか立派な橋である。
これがまだできてない時は渡るのがさぞかし大変だったことだろう。

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橋の上。昨日も見たけどやっぱり今日のほうがちょっと白い。
橋の上から川をのぞきこむ時、そこから落ちて流される自分を想像してしまうのは俺だけか。

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今日はおおむね追い風。よい道。よい天気。妙に速い。
止まると寒いが、走ると暑い。
ひょっとすると、ユニサイクルツーリングに最も適した環境がまさに今なのかもしれない。

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特にがんばっているつもりはないのだが、スイスイと進める。
エギルスタズィールで2日連続でのんびりと温泉に浸かったのもよかったか。

俺のマウンテンユニサイクルには今のところブレーキはあってもミッションはない。
そのせいか、風がなければ何も考えなくても自然に時速10キロぐらいの一定スピードで走ってしまう。
実際にはそこに気候や路面状況などの環境要素が加わるので、結局、
環境によって走るペースはあらかた決まってしまうということらしい。
それより早くすることも、遅くすることも難しい。
自分の意思によらず、まわりに走らされているというようなこの感じが、不思議とイヤではない。

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16時過ぎ。街から50キロの地点で、ガソリンスタンドの標識を発見。
ここは農家の宿があるところだ。
本来なら6月まで営業していないのに、ヒャッティが電話して泊まれるように交渉してくれたあの宿だ。

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なかなか大きく、立派な建物ではある。
スフルトルスタズィールというややこしい名前らしい。

さて、どうするかな。
ヒャッティがわざわざ電話してくれたのだから、泊まるのもいい。
でも今日は天気もいいし、調子もいい。
しかもまだ16時半。その気になればあと5時間は走れる。

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うーん、悩むな。
ヒャッティいわく、この宿からむこうには長ーい上り坂があって、
そこからは標高の高い高地のような場所を延々と走ることになるそうだ。
確かに遠くに長そーーーな坂道がチラッと見える。

今のうちにできるだけ進んでおきたい気もするが、この先は100キロ以上何もない。
そして今夜は、ひょっとするとニュースに俺が出ているかも知れない。
それはやっぱりライブで見たい。

そういうわけで、悩んだあげくに今日はここで泊まることに決定。

まずは建物に入り、受付にいた大きなおばさんに泊まりたい旨を話す。
彼女はヒャッティが電話してくれた件については特に知らないらしく、
それでも普通に泊まれるわよーということで、
スリーピングバッグ・アコモデーションの部屋を見せてもらう。

この宿の場合、普通の部屋とスリーピングバッグ部屋の違いは、
単におばさんがベッドの掛け布団をどっかに持ち去っていくということだけだ。なんじゃそりゃ。
一泊の値段を聞くと、さぁ?と返される。なんじゃそりゃ。
どこからか英語を喋らない爺ちゃんが出てきて、紙に『3500』と書いた。まずまずだ。決定。

そしてこれが大事なこと。

「ここで、テレビを観させてもらえないかな?午後7時からのニュースだけでいいんだ。」

でも、これが意外とややこしそうなのだ。
テレビは集会所のようなホールに1つだけあるそうだが、
ホールは夜にはカギを閉める決まりになっているらしく、通常は夜にテレビは観られない。
おばさんと二人で悩んでいると、
そのうちここの実質的な経営者らしいカウボーイみたいなおじさんがやって来た。

「ニュースが観たいのかい?明日の天気なら晴れだよ。」

「天気じゃなくて、俺はニュースそのものが観たいんだ。」

「うーん…。わかった。じゃあ特別に観られるようにしてあげよう。」

「ありがとう!」

やったぜ!!粘り勝ち。

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宿の部屋。
すでにシャワーついでに洗濯して、色々乾かしまくり。
温水暖房装置の上に服を乗せておけば、朝までには大抵乾くから便利だ。

なんとなくヒマだったのでアイスランドに来て2回目の洗濯をしたのだが。
これって、意味はあるのだろうか。どうせ明日にはすぐ汗だくになるんだし。
まぁ、気持ちの問題だな。

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宿の壁に貼られてる地図。
当たり前のようにアイスランドが中心でおもしろい。
こうやって世界中の大半の人々は、自分の国が世界の中心だと信じて育つのに違いない。

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今日はマトモなディナー!
と言っても、いつものヌードルを備え付けの食器で食べてるだけ。
それでもテント内で食べるのとは気分が違う。
ちなみにアイスランドに来てからダイジェスティブビスケットのおいしさに目覚めた。

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レインディアの皮。あったかそう。

このあたりでは古くからレインディアを狩る文化があったらしく、
写真や古い銃などが色々と展示されていた。

さて。そんなことをしているうちに、ついに午後7時がやってきましたよ。

普段はカギがかかっているハズのホールに行ってみると、
一人のお婆さんがイスに座って携帯で何やら話しこんでいた。
俺が入ってきたのを見つけて、目とジェスチャーで「あのテレビをどうぞ。」と教えてくれる。
どうやらテレビが観たいと言った俺のために、わざわざここで待っていてくれたようだ。
いかにも農家がやっている家族経営の宿らしい心づかいが嬉しい。

そして、ニュースが始まる。
いくつかのトピックが紹介された一番最後、おもむろに俺が登場。思わずその場で爆笑。
シッカちゃんとの長かったインタビューが簡潔にまとめられ、
俺のあんまり聞きたくない変な英語が、なんとアイスランド語字幕になっている!!

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アイスランド語字幕…果たして意味は合っているのだろうか。
大して複雑なことも喋ってないのでたぶん大丈夫だろうけど。



動画バージョン。
これが意味不明なアイスランド語だ!

注目箇所は3つ。

見栄を張っていつもより相当速く走ってるとこ。
俺のニュースの前と後でナレーターのおねえさんが明らかにニヤニヤしているとこ。
インタビュー時の背景に、あつかましくもジェイソンが映っているとこ。

いやー、自分のことながら、あんなに笑えるもんだとは思わなかった。

遠くからテレビを観ていたお婆さんも、
今ではなぜ俺があれほど7時のニュースにこだわっていたのか、完全に理解してくれただろう。

やっぱりここに泊まってよかった。

インタビューで喋っていた内容は、
これまでアイスランドで多くの人に聞かれ、答えてきたことだ。

ユニサイクルの旅にアイスランドを選んだのは、
広く、人とクルマが少なく、涼しく、安全で、日が長いから。

これはもう今まで何回言ったかわからない。
俺がここに来た理由なんて、そんなに知りたいものなんだろうか?
知りたいものなんだろうなぁ。

明日から何かが変わるのか、変わらないのか、楽しみだ。