白熱別府湾

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

イメージ 5

イメージ 6

イメージ 7

イメージ 8

国道10号線を宇佐市から更に南下すると、
やがて国東半島の根本付近を貫通して別府湾に抜ける。
この貫通部分はおそらく峠になっているハズで、
できればここは暗くなる前に越えておきたい。
まだ40キロ近く先にある別府には、今日中には着けないとしても。

少し急いで快速歩道を突っ走っていると、
今日はなぜだかよくクルマから声援が飛ぶ。まるで土日だ。
あれ、今日は金曜日で平日じゃなかったのか?
そのうちついに、俺を待ち受けて呼び止める青年が現れた。
おお、イケメンだ。
こんなオシャレな人物が俺に興味を持つのは少し意外な気もしたが、

「これで長距離だとマタが痛くなりませんか?」

という質問を聞いて、彼はタダ者ではないと感じるのであった。
そう、ずっと乗ってるとマタが痛い。それも結構痛い。
だがそれに気づいてくれる人はほとんどいないのだ。
ひょっとしたら彼も一輪車乗りなのかもしれないが、聞きそびれる。
そんな彼は、スポーツドリンクと飴をセットにして手渡してくれるのであった。
久しくなかったこういう展開、嬉しい。
ありがとう!!

さぁて気分も盛り上がったところで、ガンガン進みますか。
歩道はまっすぐ延びている。
マタの具合と相談しつつ、あとはひたすら走るだけだ。

でも、それだけではあまりにもつまらない。
そんな時によくやるのが、歩道上に落ちてる物体潰し。
例えばこの辺で言うと、
トラクターのタイヤが置いていった土塊を潰すのが快感で楽しい。
ザクッザクッといい感触がするんだ。

そんな折、またしても歩道上に土塊群を発見したので、
これまた優雅なスラロームで潰していく。
そして最後の一塊が…、なんと異様に硬かった!!
一輪車のタイヤは意外なほどの抵抗を受け、そのまま派手に転倒。
いってぇぇぇーー!!

お、おい!!
なんでおまえだけそんなに硬いんだ!ちゃんと空気を読め!
おまえのことは、もう一生忘れないからなッ!!

あー、痛かった。
ズボンの右ヒザはちょっと破れてるし。
遊びもほどほどにせんとなぁ。

そんなこともありつつ、ようやく峠の入口らしき地点に到達。
そこにはパーキングエリアがあって、
なんとそこからこっちに熱く手を振るカップルがいる。
写真を撮っていいですかー?と聞いてくれるので、
それならそっちに行きますよ!と、俺もパーキングに入った。

彼らはこれからこの峠の先にある、
ハーモニーランドというところに行くそうだ。
ほぅ、ハーモニーランド。遊園地かな。
そしてこの時初めて知ったのだが、今日って祝日だったんだな。
どーーーりでよく応援されると思った。

とはいえ、こうして実際に声をかけて交流してくれる人は少ない。
俺を呼び止めるのは勇気がいることだろうし、
そこまでするのならそれなりに興味を持ってくれているのだろう。
そう思うので、こんな時は出来る限りのサービスをしたい。
撮影用に走って見せるぐらいは楽勝だぜ!

よし、さらに気分が盛り上がったところで、今こそ峠に突入だ。
しかしこの立石峠というところ、
カップルのお兄さんに教わったとおり、大して険しくはない。
ダラダラと緩い上りが続き、最高点は147メートル。
峠ソムリエの俺から言わせれば、この程度は峠とも言いがたい。

最初の峠を越えると国東半島の根本あたりなのだろう、
山香町という山村めいたのどかな地域をひた走る。
そして、このあたりでついに日が暮れてしまった。
しかもマズイことに、ここに来て国道10号線鉄壁の歩道伝説が崩れる。
しょうがない、ここは耐えどころだ。

この冬の旅、ユニサイクルに付けたライトが尋常ではないぐらい活躍している。
日照時間が短い今の時期においては、
これナシにはロクに距離が伸ばせなかったところだ。

歩道がしっかりありさえすれば、夜間走行はもはや当たり前。
今みたいに急に歩道が途切れても、
前後ライトを点滅させてどうにか慎重に進む方法も取れる。
今回の無歩道区間は幸い数キロで終わってくれたが、
それでもライトがなければほとんど立ち往生であった。

歩道が復活し、見つけたコンビニでイケメンの彼にもらった飴を食う。
どうやらクライマックスは近そうだ。
2つ目の峠をサッサとのぼり詰めると、
そこには噂のハーモニーランドがあった。
盛大にイルミネーションを灯らせていて美しく、そこだけ別世界だ。
さっきの仲良さげなカップルも、
今ごろはハーモニーランドでラブラブなイブイブを楽しんでいるのだろう。
そしてそのとき俺はと言えば、イノシシと対面していた。

なんだかのっそりと暗闇から出現したデカ黒いイノシシ(たぶん)。
ヤツもしばらく俺が何者なのかよくわからなかったらしく、
ハーモニーランドとは全く関係ないところで俺たちは熱く見つめ合う。
そしてヤツは、いきなり何かに気づいたように猛ダッシュで逃げ去っていった。
…フッ。貫禄勝ちか…。

こうして俺は、2つ目の赤松峠も極めた。
またしても100mちょいのささやかな峠だった。
これを下ればおそらくは…おおおお、やはり!!

眼下には、待ち焦がれた別府湾が。
大きく逆Cの字に、点々と明かりを灯して。
やっと着いた、突き抜けた…!

長い坂をゆっくりと下って海へと標高を下げながら、
自分でもよくわからない充実感を覚える。
これまでを思えば大したことのない距離、高度、時間の峠越えだった。
それなのに、まるで小さな人生を一通り味わったような気持ちにさえなっている。
詳しくはわからない。わからないが、
それはきっと凝縮された、なにか幸せな時間だったのだ。

別府湾に降り立つと、そこは日出町。これでなぜかヒジマチと読む。
ここですでに20時。
いつもの俺ならそろそろ寝床を探す時間だが、
今日に限っては、もう少し進んでおいたほうが良いように思う。
ここから別府市街までは、あと13キロ。うぅむちょっと長い。
少し悩んだが、どうせ行くんだろ!ってことで、俺はさらに行く。

大きく弧を描いた別府湾の対岸では、
別府なのか大分なのか、明るい街の灯りが輝いている。
おぉしかも、おもむろに花火まで上げはじめやがった。イベントか?
対岸は明るくて、楽しそうだなぁ…。
あーしんど。
気温はなんと2度だが、ずっと動き続けている俺は寒くもない。

2時間後、別府に到着。
我ながらよく来たよ。
まずは探し求めたマクドに入り、早く書きたかったブログを仕上げる。
さすがに連休、深夜でも客が多い。
恋の悩みを話し合う女性コンビ、なんだか痴話喧嘩中のカップル、
謎の中東系外国人群など、イブイブのマクドは騒々しい。
それにもめげず、なんとかブログは書いた。

後は寝床だ。
この時間からならもはや、寝転べればどこでもいい。
ここまでの走行距離は、72キロ。
後半の冬の旅路では最長記録であった。