対馬旅 7月3日 その3

#メシと城と人の気配

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おなじみ万関橋、4回目!
もういい加減慣れたので走りながら適当に撮る。

これで上島一周は完了。あとは下島だけだ。
どうにか夜までには帰り着きたい一方で、実はどうしても対馬で食べておきたいものがある。

対馬にもご当地グルメというのはあって、
それは熱した石の上で魚や野菜を焼いて食べる石焼とか、対馬産の蕎麦粉で作る対州蕎麦とか。
もともと俺はどこに行ってもグルメにはあまり関心がないほうではあるが、
ここ対馬には、そんな俺にぜひとも食べてみたいと思わせる料理があるのだ。

その名は、『ろくべえ』。

観光パンフレットにある写真は一見して蕎麦のようだが違い、
麺の原料はサツマイモから取れるデンプンなのだという。
しかし俺が何より気になるのは、ろくべえが、『胃腸に優しい食べ物』と書かれてあるからだ。
おぉ、胃腸に優しい対馬グルメ!
お腹の弱い俺としては、これだけは避けて通れまい。

さっき強い雨の降りこめる佐須奈の町で探していたのは、このろくべえが食べられるという店だった。
そこでは残念ながら見つけられなかったが、心当たりはもう1つある。
たしか空港と鶏知の間ぐらいの国道沿いに…。

あった!

民宿と食堂を兼ねているような店で、看板にちゃんとろくべえと書いてある。
よっしゃ、さっそく突入!

店内に入ると誰もいない。
夕方近い中途半端な時間だからな。心配である。
しかし食卓の上にはいくつかの皿と割り箸が整然と並べられている。
どうやら宿の夕食をここで出すというシステムらしい。
迷惑な時間帯に来てしまったようだと一瞬躊躇したが、
奥からのっそりと現れたおばさんに「実はろくべえが食べたいんですが…!」と熱く訴えると、
「それじゃあ作ってあげようね。」といってくれた。
やった、ろくべえにありつけそうだ。

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これがろくべえ!

サツマイモデンプンの麺は太く短く、蕎麦のようにツルツルと食べるものではない。
ダシは魚と鶏肉だろうか。味つけは穏やかであっさりしていて俺好みだ。
お腹に優しいという触れ込みも充分に頷けるな。
ろくべえ、気に入ったわ。
これが対馬でしか食べられないというのは実に勿体ない気がする。

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客は俺一人の食堂。
対馬の旅で初めて、そしておそらく最後になるだろう外食。
これはうまかった。ごちそうさま。

念願のろくべえを堪能したら、今度こそ下島一周にとりかかろう。
そろそろ夕方に近い時間。急がねばなるまい。
急がねばなるまい、が。
ここでまたぜひとも寄っておきたいところがあるんだよなぁ。

鶏知から下島一周の地方道に入り、バイクならほどなくのところで、看板に従って林道に突入。

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道はところどころダートで、昨夜から降り続いた雨のせいか、
小さなダムなんかは溢れてちょっとした川になっている。

おおっ、よもやこんなところでクロスカブのダート能力を試す機会があろうとは!
いやーおもしろいな。
グリップもそこそこ。サスもまあまあ。パワーもそれなり。
スタンディングでのライポジは身長177センチの俺でも良好。
普通のカブよりよほどいい。これぐらいの林道なら充分に楽しめるわ。
いい買い物したかも。

夕暮れ時には少々不安になるぐらい長い林道を進むと、行き着くのはこれだ。

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金田城跡。

今はただ石垣が残るだけの城跡なのだが、凄いのはその建造時期。
この説明によると、なんと7世紀。
大化の改新あたりと同じ時代かよ!
これは間違いなく日本最古級の城跡だろう。

ここまで来ればもちろん7世紀の石垣も見たいところだ。
が、史跡へと続く急な登山道は滝のごとく流れる水で覆われている。
夕方からこの道を上がっていくのは無理か…。
金田城跡は修行さんのお父さんが最も勧める観光地であり、
俺自身も非常に興味があった史跡なので残念である。
しかし、しょうがない。
日が暮れる前に林道を後戻りだ。

地方道に復帰し、夕暮れ間近の下島を急ぐ。
美しい漁港のある箕形(みかた)、寝ようと思ったのに通り過ぎた吹崎、
バス停に入ろうとしたらおっちゃんが酒を飲んでいた今里、最澄が流れ着いた阿連(あれ)。
苦労して歩いてきた道のりをバイクで快走する。
このあたりはほとんどクルマに出くわすこともなく、バイクツーリングにはいい道だ。

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阿連から長いワインディングを経て、小茂田(こもだ)の集落へ。
ここでは歩き旅で唯一の強い雨に降られたのだった。
その強い雨のせいでその時はすっかり忘れていたのだが、
l小茂田は重大な歴史的事件の現場でもあるのだ。

元寇。

13世紀、元から襲来した大軍が、小茂田浜に押し寄せた。
迎撃した少数の武士は全滅。
対馬の民は男は殺され、女は手に穴を空けて紐を通された上で連れ去られたという。
この、今では何の変哲もないように見える海岸のあたりで、
約700年前にそれほど凄惨な出来事が起こったのだ。
そんな場所で、こうしてバイクを止めて佇んでいる自分。
時の流れの不思議さを感じずにはいられない。