5月3日#1 プリシラ

 
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ようやくアルバカーキの気配を完全に抜け、元の荒野に戻ってきた。
 
さっくり一輪車に乗って進みたいところだが、
昨日あれほど痛かった両脚の痛みが今朝になって治っていたりするはずもない。
ステイシーのマッサージクリームを毎晩せっせと塗っているおかげか、少しはマシなような気もするんだが。
 
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いつもどおりに左足をひきずりながら歩いていると、通りがかりのサイクリストが話しかけてきた。
トニーと名乗る彼、俺を目撃したのがこれで3回目だと言う。
最初はフラッグスタッフ、次がウィンズロー、そしてここ。
全然違う場所なのによくもまぁ。
 
それはいいんだが、町の名前を聞いて思うのは、
その3回の目撃のすべてにおいて俺は歩いていたんじゃないかということだ。
いやー、乗らないユニサイクリストで申し訳ないよ。
 
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トニーと別れたら、今度はこいつ。
 
クルマを路肩に突っ込ませ、すごい勢いで俺に話しかけてきた彼。
何を言ってるのかと思えば、単に一輪車旅行に感激していただけだった。
近くの農場に働きに行く途中だという彼は、俺の手にチョコケーキを握らせて陽気に去ってゆく。
そして…。
 
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溶けてるぞ…チョコケーキ…。
その場で食ったのは言うまでもない。
 
その後は、次の町までクルマで送ってやると言って本当に次の町まで1kmぐらい送ってくれたおじさんなど。
今日はなぜかほんのりと変わった人によく出会う。土曜日だからか?
 
歩き疲れてちょっとした広場に座り込み、休憩のつもりがいつの間にか寝てしまっていた。
どれぐらい眠っていたのか。
目が覚めると、一台のピックアップトラックが俺のほうに向かってくるところだった。
トラックが向かってきたから目が覚めたのかもしれない。
 
クルマには50代ぐらいの女性と、助手席に犬が乗っている。
いつもどおりの「何をやってるの?」という会話から自然に日本から来たという話になった時、
彼女、プリシラはこう言う。
 
「私は昔、日本に住んでたのよ。」
 
どうやら彼女は日本との関わりが深い人物らしい。
 
「疲れてるんでしょ。ウチで休んでいきなさいよ。」
 
そんなお言葉に甘えて、少し休ませてもらうことにしよう。
 
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犬が助手席におさまっているので、俺は荷台に乗せてもらうのである。
いいねこういうの。アメリカの旅って感じ。なんとなく。
 
トラックは大通りを外れ、ダート混じりのよくわからん奥地へと突き進んでいく。
これが犯罪組織の誘拐とかだったらもう結構絶望的なシチュエーションだろうが、
彼女プリシラと愛犬ダンカンのユルい顔を見ているとその心配はなさそうだし、そもそも心配していない。
 
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クルマはやがてこんなところに。ここがプリシラのお宅か。
住所や番地がちゃんとあるのか気になるぐらいの立地だが、ここはアメリカだ。
たぶん水道もしっかり通っているのだろう。
 
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あれ、どこかで見たような光景だな。
アルバカーキに引き続いて足の治療の図。
 
会話によって俺の両脚の具合が悪いことを知ったプリシラは、
家に着くなりアイスパックを持ってきて冷やすよう勧めてくれた。
そしてこの長椅子でゆっくりと昼寝をするように言い渡し、
彼女はなんと愛犬ダンカンを伴って買い物に行ってしまうのであった。
 
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来たばかりの家で一人きり。えーーー。
 
プリシラはどうやらダンカンと2人暮らしのようだ。
部屋のあちこちには古い写真が飾られているが、あまりジロジロと眺め回すのも気が引ける。
今はプリシラが帰ってくるまで、ひと眠りさせてもらうとしよう。