私のバード
11月26日は、サンクスギビングという祝日であった。
日本じゃクリスマスやハロウィンに比べてまったく印象の薄い日だが、
アメリカ人にとってサンクスギビングは結構大事な日であるらしい。
超手短に言うと、イギリスからアメリカに逃げてきたピューリタン(清教徒)たちが現地のインディアンの助けを借りてなんとか食料自給にこぎつけて良かったねありがとう感謝感謝!というような成り立ち。
で、こっちでサンクスギビングと言えば、ターキー(七面鳥)の丸焼き。
この時期スーパーに行くと死ぬほど(死んでいるが)ターキーが並んでいて焦る。
1年間ちょっとずつ生産した七面鳥を冷凍保存して今一気に放出しているのだろうか。
それともサンクスギビングが近づいてきたある日、一斉に…いやいや、よくわからない。
とにかく、こっちの人はサンクスギビングには鳥を焼くのだ。
日本ですらイベントごとにあまり関心のなかった俺はこの日ももちろんスルスルーのつもりであったが、
諸般の事情によりそうもいかなくなってしまった。
はい、粛々と買ってまいりました。
冷凍ターキーでございます。
思ったよりデカいし重い。ニワトリの1.3倍ぐらいありそう。
これでも売り場で一番小さいヤツを選んできた。
31ドル。4000円ぐらいか。高い。
とはいえ一度焼けば数日分はあるだろうから、長い目で見ればお得かもしれない。
失敗しなければの話だが。
えーさて、丸焼きの作り方は当然のごとくインターネッツルのお世話になる。
しかしこれがまた、レシピの種類が無数にあって困るのだ。
各家庭の好みとか伝統とか秘伝とか一子相伝とか色々あるのかもしれない。
そこでひとまず、一番シンプルで簡単そうなやつをチョイス。
手始めにタイムとローズマリーをザクザク刻む。
今までロクに使ったこともないオシャレ風味なハーブなので、味もわからなければ量の加減もわからん。
まあ適当に粉々にしとけばいいだろう。
刻んだハーブにバターとオイル、塩などを混ぜた物体を、このかすかにグロいターキーさんにすりこむ。
表面のみならず、肉と皮の間を剥がしてまで揉みこまねばならんらしい。
レシピいわく、肉をよくマッサージするようにと。
人生において鶏肉を念入りにマッサージする日が来ようとは思わなかった。
大変なんともいえない作業だ。
こんな感じでいいのだろうか。いいに違いない。
ちなみに、中の空間には首がそのまま収納されていた。
本来は一旦取り出された内臓も一緒に入っているものらしいのだが、なぜかこれにはなかったな。
そんな猟奇的な話はともかく、その空間に詰め物をせねばならんのだ。
はい、見てのとおりに適当に詰めました。
タマネギとセロリとレモンをザクザク切ってボンボン入れた。
店にはスタッフィングというパンの切れ端みたいなのも売っていたがそんな面倒くさそうなものは当然買わない。
詰め切れなかった野菜は首と一緒に煮込んで鶏ガラスープにしてやるぜ。
ウチにあった一番大きな耐熱皿になんとか乗った。
焼いてるうちに肉汁が溢れてくるので本当はもうちょい大きく深いものがいいはず。
一般的には下に鉄網のようなものを敷いて肉を浮かすそうだが、それも無いのでパス。
フッ、たかが丸焼き、なんとかなるだろう。
さあ焼きますか。
普段はパン焼きぐらいにしか使わないムダにデカいこのオーブンに、今日は活躍していただく。
いくつかレシピを参考にして、低めの180度(華氏350F)でまずは1時間ほど裏面から挑んでみよう。
1時間後。
ほんのりと色がついたな。
よしじゃあ裏返して…、熱い!重い!!
さらに2時間ほど焼く。
思ったとおり、肉汁がずいぶん垂れて溜まっている。
この肉汁を使って後でグレービーソースとやらも作る必要がある。
丸焼きと言えば両足をたこ糸で縛るのがセオリーだろうが、そんなものはなかったので開脚オーケーだ。
はいできたっぽい。
うーんまあ、初めてにしては上出来じゃないか?
ターキーはチキンに比べてパサパサ度がもともと高いらしいのだが、
低温で裏返しつつじっくりやったおかげか、そこそこジューシーさがあり、皮もまあまあパリパリ。
薄味に仕上げたから残りは冷凍して日常の料理にいくらでも使えるだろう。
個人的にはこんなもんでいいんじゃないかと。
ちなみにこの鳥を焼いたのはサンクスギビングから2日後のことであった。
おそるべきことに前日や当日には2ヶ所からターキーをいただいてしまったので、
さらにすぐ自分で焼いて食う気にはとてもならなかったのだ。
別に信心深くサンクスギビングを祝うつもりもないので何ら問題はない。
そういえば英語教室に来るスパニッシュ系の人々も、サンクスギビングは祝わないという人がチラホラいた。
そりゃ北米大陸にやって来たピューリタンとインディアンの交流なんか関係ないもんな。
ところで、グレービーソースについては今さっき作ってみた。
なんともいえない味だ。
ほなまた。