イナイチ

京都市街を抜けてすぐのネットカフェより、早朝に発進。

昨日までの国道1号線から、今日は171号線を進む旅となる。
171号線は通称イナイチ。
京都・大阪・兵庫にまたがる、地元ではメジャーな3ケタ国道だ。
昼過ぎぐらいから雨予報が出ている。今日はどこまで行けるだろうか。

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いきなりこれは…。
いい練習になるのはいいが、草が痛い。

向日市、長岡京市と来て、イナイチ京都編はあっさりと終了。
いつのまにか大阪府に入っていたようで、いつもの都道府県看板をうっかり見落とした。

今日は日曜日か。
早朝はクルマも少なかったが、やはりだんだん増えてきたな。

大阪のクルマの運転は荒いとよく言われるけど、それはどうだろうと思っていた。
北海道でも東北でも名古屋でも地元のクルマは飛ばすから危ないと言われているし、
結局はどこも似たようなもんなのではと。
だが今回、こうやって歩道走行をメインとした日本縦断旅をしていると、
やはり関西はちょっと違うかなと気づく点はある。

人が横断歩道を渡る際、曲がってきたクルマが止まらずに目の前をズバッと走り抜けていく率が高い気がする。
これまでなら向こうが止まってくれるなと思うタイミングでもガンガン入ってこられるので、オオッ!?という感じだ。
さすがは関西、ツッコミが激しい。
俺も相当気をつけているので、そうそう危険なことにはならないけどな。

これは交通マナーというよりは、単に関西人のせっかちな気性の表れだろうか。
北海道から人力で時間をかけて南下してくることで、こうした土地ごとの習性の変化にもよく気がつくようになる。
ちなみに、関西ではドライバーも強引だが、自転車・歩行者はそれ以上に強気だったりするので、ある意味バランスが取れていると言えよう。

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いつものごとくコンビニで休憩していたら、
駐車場に並んでクルマを停めた別々の2人から、同時に話しかけられる。これは珍しい。
ところでこういう時、ナンチャッテでも名刺を持っていると、名刺交換で相手の素性がわかって実におもしろいのだ。

左の方は、京都で『運転塾・塾長』をしているらしい。
えっ、塾長?シブい!
そして右の青年は、広島で『森のバイオマス研究会』というNPO法人で働いているという。
ページを拝見したが、なかなか興味深い活動だ。久々に広島弁を聞いた。

日頃はまず出会わない人に、路上で出会う。旅が楽しいと思える瞬間だ。

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このポスターを見て、いかにも大阪に入った気になる。

高槻市。このあたりから、イナイチもいよいよ俺の土地勘が冴え渡るエリアに突入だな。

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そうだ、この道だってバイク便時代に走っている。わりと忘れないもんだな。

しかし…。
そういえば、イナイチの歩道は走った事がないんだった。

何だコレ、大阪に入ったあたりから、歩道が変だ。
妙に激しくアップダウンがつけてあり、さらには右や左にも意味不明に傾いている。
なんで歩道がこんなことに。すごいセンスだ。

車道ではのっぺりとした路面をクルマがビュンビュン行き交っているのに、
なぜかすぐ隣を走る俺は、懐かしのエキサイトバイク(ファミコンのゲーム)な気分でいっぱいなのである。
一輪車で来た俺を楽しませようとしているか、もしくは鍛えてようとしているに違いない。
そりゃあ何か考えがあっての構造なのだろうが、
ユニサイクル的に急なアップダウンの連続って、結構シンドイんですよー。

さらには、問題は立体的な歩道だけではない。
大阪名物、チャリンコの多いこと。歩行者もたくさんいるし、これは気を遣う。
歩道ではどう考えても一輪車の俺がマイナーなので、彼らの通行のジャマをしてはいけないわけだ。

こんな風に書いていくと、大阪って難しいところだなぁ、と思うかも知れない。

人が1人しか通れない幅の歩道で、前方をゆっっっっくりと歩く紳士がいる。
俺はその男性に追いついてしまい、背後をゆっっっっくりと走る。
そしてどこから湧いたか、その様子を固唾を飲んで見守る、大勢の子どもたち。

ヤバい、俺のテクではもうギリギリだ。落車するかも…。

もう限界か、というところで、何も知らない紳士は道を曲がってくれた。
すかさず彼をかわし、安定スピードを取り戻す俺。
子どもたち、オーーッ!!と拍手喝采。
手を上げて歓声に応え、フフ…とニヒルに笑いつつ走り去る俺。

通り過ぎる人々も笑顔で道を譲ってくれる人が多く、雑然としているのに冷たい感じがしない。
単純に言えば…ノリがいいのだ。
大阪、結構楽しいよ。

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同じ建物に、ペットショップと焼肉屋が同居。
やるな。思わず唸る。

あいかわらず謎のアップダウンが続く歩道を高槻市、茨木市、池田市と来て、ここで大阪府は終了。
意外と短いもんだな。
しかし、京都からあのまま1号線を進んでいれば、今頃は大阪市内で、紫色の髪の毛に豹柄を着た濃いおばちゃん達に絡まれていたのは疑う余地もない。
土地勘があるというのは、それほど重要なことなのだ。

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お、今度は見つけた兵庫県の看板。でも反対側か!
兵庫県伊丹市でございます。
ここまで来ると、いよいよ地元に近づいた感じ。

見知った道を、不思議な心持ちで走る。
なんだかだんだん旅をしてるような気分じゃなくなってくるな。
人に聞かれて「北海道から来ました!」なんて言っていても、
実は自分自身、本当に北海道から走って来たんだったかちょっと自信がなくなる時があるぐらいだ。
走ってきた一日一日の記憶はあるのに、まとめて一気に走ったという実感には乏しい。
長く移動する旅なんてのは、本人でもそんなもんなのかもしれない。

それでも、人からはよく声をかけられるし、やっぱり一輪車で長旅の途中なのだ。
そういえばクルマの助手席から「ブログを拝見しましたー。」って言いつつ走り去った女性がいたが、
あれは一体どういう…いや、深くは考えまい。

そしてまたもや、走行中の軽トラから大声で俺を呼ぶ声が。
おや?
キケンジではないこの呼び方、そしてこの声は。

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おぉ、小松さん!!
元バイク便仲間である。
俺がこの辺を走っているであろうと見当をつけ、仕事の途中に探してくれたらしい。
まさかここで、彼に声をかけられるとは思わなかった。

10年ほど前から始めて5年ぐらいは続けたバイク便稼業であったが、
当時のバイク便仲間で今も現役ライダーを続けている人はほとんどいない。
彼もまた引退して長いけど、今は何を?と聞くと、
なんと最近、クルマ&バイク関係のビジネスを立ち上げたそうだ。
今もちょうどその仕事の途中なのだという。

ほぅ、独立か。やるなぁ!!

当時親しかったバイク便仲間の中でも、独立を果たした人は彼ぐらいだろうか。
いやー、大したもんだ。
俺が北海道でブラブラしているうちに、彼は着実に基礎を固めていたのだなぁ。
意外で、かつ嬉しい再会であった。

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見事なセンス。

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兵庫県も、伊丹、尼崎ときて、もう西宮。
京都から走ってきた171号線は西宮で終わりだ。
早いなぁ。イナイチをユニサイクリングして1日で完走できるとは思ってなかった。
北海道、東北と走ってきた俺からすれば、関西というのは意外と狭いんだということに気づかされる。

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171号線の終点は国道2号線に繋がっているが、そこは地元民。
いかにも走りにくそうな2号線よりも、海側の43号線を選んでしまうのは当然の選択だと言える。
片側3車線のこの広い道。バイク便時代に最も多く走った道だと思う。
一輪車で走るのは初めてだが。

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海にもいろいろあるが、これは見慣れた感じの海。
何度も走った道だし、さっきは知り合いにも会ってしまい、いよいよ旅という感じがしなくなってきた。

ふと我に返ったのは、芦屋市内で、高そうな外車に乗ったカップルがだ。
一度は俺を追い越し、気になったのか減速して側道に入り込んで俺の前に割り込み、
出てきて話でもするのかと思いきや、助手席の女(たぶん)がデジカメで俺の写真を撮るだけ撮って、
そしてサッサと走り去っていった、そんな時だ。

おいおい…。
頼むから、俺をあんまり怒らせないでくれよ。
俺が怒ったところで、なんにも怖くないけどな…。

俺の写真を撮るのは別に構わないし、今までも気がつかないところで何度も撮られているだろう。
そりゃあ珍しいモンが走っていたら、誰だって写真を撮りたくなるもんな。
アイスランドでだって散々撮られているし、その気持ちはよくわかる。
しかし、アレは。あまりにもヒドかった。
さすがにアイスランドでもあれほど失礼なヤツらはいなかったぞ。
そんな風にして撮った写真を、あいつらは一体どうするつもりなんだろうな。
俺も逆にクルマの写真を撮ってやればよかったと、しばらく後悔しながら走るのであった。

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国道43号線、ユニサイクリングしやすい。
だが防音壁などで車道と隔絶されているので、いつも以上に孤独といえば孤独。
あまり騒がれることなくひっそりと走りたいと思う一方で、
やっぱりちょっとは騒がれたいとも思う、微妙なユニサイクルツーリスト心理。
そりゃ『日本縦断中』なんて書くぐらいだから、少しは目立ちたいのである。
走りにくくても2号線を行ってればよかったかなーなんて思ってるうちに、神戸市に入る。

神戸市は東西にも結構広いので、目標である俺の実家までは、まだあと50キロほどはある。
東灘区、灘区、と走ってきて、快適な43号線も終了。
そういえばこの辺に、ヤツが働いているバイク屋があったな。
もうそろそろ営業終了の時間だろう。
そう思って、ヤツにメール。
返事がないうちにバイク屋に着いてしまったので、他の店員さんにヤツを呼んでもらう。
あの店員さん、よく何も聞かずにあっさり取り次いでくれたよなぁ。

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いきなり現れて驚かしてやろう企画第一弾、タッキンの職場襲撃。
コイツとは小学校から続く細く長く危うい付き合いではあるが、案の定、俺がまた旅をしていることを知らなかった。
北海道にいると思っていた俺が一輪車に乗って現れたらさぞやビビるだろうと思ったら、わりと普通の対応でやんの。
チッ、これだから脳のセッティングが出てないヤツは困る。
写真は店の終了を待って近くのマクドでヨタ話をした後の図。

さて、タッキンは帰ったし、時間はもう0時近くだ。
まだちょっと灘区に居たいので、めんどくさいからその辺のベンチで寝るとしよう。