サラリサラリ

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結局この夜、ターミさんは家に帰って来なかった。

7時半に町中に響き渡る朝の放送で俺は起きたが、
今日は学校があるはずのジン君が起きる気配はない。
それはそうだ。
やんちゃな中1の少年が、
誰にも起こされずに一人で起きて学校に行くだろうか。

声をかけようかと思ったが考えてやめ、静かにアパートの一室を出る。
彼は起きていたのかもしれない。

5階の廊下から見下ろす佐敷の町は、雨に煙っている。
また雨か。まだ雨か。
しかし、今日はもうどこかで雨宿りはしない。
飽きたのだ。

折り畳み傘をさし、歩き出す。
誰かの家の壁にはハイビスカスが雨に濡れている。
ここは沖縄だ。

雨の中を黙々と歩いていても、今日は心が荒れたりはしない。
町にいるせいかもしれないし、
自分に何か変化が起こったのかもしれない。

この旅で俺は、日本を見に来たんだ。
今の日本がどんな国なのかを、全身で感じ取りたい。
今度はガソリンを使わず。
体力と、バランス感覚を使って。

沖縄復帰記念の拝所を見つけた。
後ろにあるのはたぶん、クルマエビの養殖場だ。

知念岬の近くでは、なんだかわからん幸せの架け橋に乗ってみたり。

この半島のあたりはアップダウンが忙しい。
坂は疲れるが、上からは雨でもなかなかの景色を眺められる。

雨は止みそうで止まず、いつまでもサラサラと降り続けている。
服はしっとりと水を吸う。
旅の服はいつも、濡れては乾いてを繰り返す。

半島を終え、本島最南部へ。
平和祈念公園にやって来た。

戦争で亡くなった人々の名前が、
刻々と緻密な模様のように並び続ける場所。
ここに来ると言葉はない。

本島最南端は荒崎というところだ。
しかし道路にそれらしい表示もなく、
また考え事をしていたので、あっさり行きそびれた。
なに、いいんだ。
荒崎よりもさらに先に、まだ日本があるのだから。

考えていたのはまさにそのことだ。
その先のこと。
いやー、困った。

なんと、那覇から石垣島に行くフェリー、今はもう無いらしい!
今日何気なく調べて発見した。これには驚いた。
石垣から台湾に渡る船がなくなったとは聞いていたが…。

それだと11年前、那覇からフェリーで石垣島に渡り、
島をバイクで散々走り回ったなんて、今となっては貴重な体験じゃないか。

さて、どうしたものか。
石垣島まで行くなら、もはや飛行機しかないらしい。
調べたらフェリーよりは高いが、まぁ目が飛び出るほどでもない。
こりゃ飛行機かなぁ。
このまま本島で旅を終えてもなんかシマらないしな。

やれやれ、まさか日本縦断の旅の途中で飛行機が出てくるとは。
ちゃんと一輪車積んで乗れるといいけど。

なんてことを考えながら進んでいたら、もう糸満(いとまん)市である。
本島南部を進み終え、もう北上して那覇に戻りかけている。
そろそろ夕暮れだ。
結局雨はマトモには止まなかったな。

たしか、この辺に糸満の道の駅があると聞いた。
表示があったので従って曲がってみるが、あれ、おかしいな。
あっちへ行けこっちへ行けと、指示が錯綜してないか?

調べてみたら、なんとこの付近、近所に道の駅が2つもある!
糸満と、豊崎。その間ほんの数キロ。
ちなみに糸満は日本最南端の道の駅、豊崎は日本最西端の道の駅らしい。
知るかっ!そんなことっ!!

混乱はしたが、とりあえず着いた。最西端のほうに。
都市に近いわりにはなかなかよさげだ。
那覇まであと10キロの距離だし、寝るにはちょうどいいだろう。

今日は43キロ。
ずっと雨っぽかったので下り以外あまり走れていないのだが、
ちゃんとここまで来れてしまった。
本島一周完了は、あともうほんの少しだ。
明日はどうなるやら。