6月11日 自分潰しの旅
俺は死ぬのかもしれないが…。
どうせいつかは死ぬのだが…。
死にはしなくても、えらい目には遭うのかもしれないが…。
成田空港にある大荷物運搬用キャリアの扱いも、今や手慣れたものである。
これは初めて使うと、ブレーキングとステアリングの操作にちょっと手間取るんだぜ。
午前中に家を出て旭川空港から飛びたち、昼には成田空港へ。
スカイマークはいつのまにか、旭川から成田に直行する便を作ってくれていた。
これは便利だ。
北海道の片田舎に住んでいても、その日のうちに国外脱出ができてしまうなんて。
今回はエアカナダ。
カナダのトロントを経由して、キューバの首都ハバナに着く。
時差が14時間ぐらいあって計算がややこしいんだが、たぶん合計17時間ぐらいのフライトになるだろう。
もう寝まくるしかないな。
さあ乗った!あとはもう知らん。
機内食は、あいかわらず微妙な日本食。
これを目の当たりにした瞬間、ああもうここは日本じゃないんだなーと感じてしまう。
チキンかビーフかと言われてチキンを選んだが、それじゃベジタリアンはどうするんだろうな。
せめて肉と魚にすりゃいいと思うんだが。
まあ肉だけ食べないか、頼めば別メニューがあったりするんだとは思う。
いずれにせよチキンもビーフも大した違いはないのが機内食の醍醐味。
あとは飲み物を聞かれるたびに、ビールとワインを頼んで酔っ払う。
このまま眠ってしまえればいいのだが、エコノミーの窮屈なシートはあまり上手に眠気を誘ってはくれない。
成田からトロントまでは11時間らしい。意外と早い。
しかしトロントってのが、カナダでも東側、ニューヨークのすぐ近くにあるとは知らなかった。
太平洋側にあるバンクーバーあたりとすっかり勘違いしていたようだ。
キューバに行くのにわざわざそんなところを経由するんだな。
逆回りだった2年前のアイスランド行きも合わせれば、ほとんど飛行機で世界一周するようなもんだ。
遠いな…。
この先、何が起こるのか。
ありきたりだが不安と期待、いや不安と不安。不安と心配。これに尽きるか。
なんにせよ、まずはキューバまでたどり着かねば。
眠れそうもないので、機内のプライベートモニターで『麒麟の翼』という邦画を観る。
これが良かった。
楽しい海外旅行におもむく途上で、日本の映画を観て不覚にも涙してしまったよ。
こんな家族愛モノを見せられたら、知らない島でハメをはずして思う存分遊べないじゃないか。
そう、そういうものかもしれない。
飛行機がようやく太平洋から北米大陸に乗っかりかかった頃、今度はカップヌードルが出てくる。
日清のカップヌードルではあるが、日本向けではないのか、なんだか妙な味。
薄ボケたエスニック風味と言おうか。麺もちょっと太いかもしれない。
隣に座っている何人だかわからないアジア系の親子は、付いてきた箸を使わずフォークを頼んでいる。
何も考えなくても箸が使える日本人というのはなかなか凄いのかもしれない。
ところで、地球が回るのと同じ方向に飛んでいるのだった。
夕方成田を飛び立ったのに、アメリカ上空に来てもまだ外が明るい。
今は時間を巻き戻して、6月11日の朝ということになっているらしい。
一瞬得したようにも思うが、日本に帰ってくるのであれば、いずれは借りを返す時が来るわけである。
ただ移動したまま帰って来なければ、人生を生きた日数が多少伸びたり縮んだりする可能性はある。
そんなことを考えているうちに。
ようやくか…、長かった。
あとは五大湖を越えればトロントだ。
ここまで来れば、まだ見ぬニューヨークも近い。
実際は知らないが、トロントからナイアガラの滝を越えて3日ぐらい歩けばニューヨークに着きそうな気もする。
よし、乗り継ぎだ。
乗り継ぎ所要時間は1時間ちょい。ちょっと焦るぜ!
…で。
エアカナダの大きいのから小さいのに乗り継ぎ完了!
いやー、ヤバかった。あやうく乗れないところだった。
そもそもトロント到着が遅かった。
平気で20分ぐらい遅れてしかも降機場が塞がってるとかで機内で長々と待ち。
これは焦る!
そしてトロント空港、狭いくせに案内が少なくてややこしいのなんの。
インフォメーションデスクも見あたらず、聞ける人が少ないのには困った。
それでも入国審査をパスして一旦カナダに入り、自力でターミナルを探して小走りで移動。
長時間のフライトでイヤな疲れも相当たまっていたが、そんなことも忘れて走り回ったよ。
そして搭乗口に着いたのは15分前。仮にも国際線で15分前に搭乗はヤバイって。
日本での俺みたいにボーッとしてたり、とりあえずウロウロ…なんてやってたらまず間に合わなかったな。
やれやれ、もしここで乗れなければどうなるのかね。荷物とか。人とか。
日本にいる時と違って、もう他人の親切に甘えるわけにはいかなくなってきた。
そう、これが海外旅行だ。
なんとか乗れたキューバ行きの飛行機は、小さい。
客は半分ぐらいで、二人がけシートの隣が空いていて快適。
これならあと3時間のフライトぐらいは耐えられる。
カナダ産のコカコーラは変に甘く、炭酸にもヤル気が感じられない。
でも今回の客室乗務員のお姉さんは笑顔が素敵で気立てもよく、これには大変癒されるのである。
フライトも半分を過ぎた頃、さあ色々渡されたぞ。
カナダ入国の際は税関申告書1枚だけでよかったが、今度は3枚。
左が税関申告書。
右上が出入国カードかな。
右下は、キューバ独特のツーリストカード。
ツーリストカードはキューバを旅する外国人には必須の代物で、
パスポートと一緒に常に携行していなければならない、感覚的にはビザに近いもの。
入出国のハンコもパスポートではなくこちらに押される。
俺は日本で先に入手していたので、今回もらったこの白紙のツーリストカードは不要。
エアカナダの機内で配られるこのツーリストカードはカナダ人しか使えないという話もあるので、
ツーリストカードはやはり事前に用意しといたほうが無難だと思う。
ところで、申告書類はスペイン語だ!ついに来たか…。
でも今回はまだ英語が併記してあるのでなんとかなる。
よくわからんところは適当に書いておいたが、後でイチャモンをつけられんことを祈るばかりだ。
眠れてないし疲れてるのに調子に乗って機内ドリンクを飲み過ぎたか、ちょっと腹が微妙。
まあハバナまではもってくれると思う。もう着くハズだ。
おや、窓から見えるあれは。
あれがハバナ、かな。
初めて見たキューバの光だ。
煌々とした日本の夜景と比べれば、心配になるぐらいに規模が小さい。
でもとにかくあれが、キューバなんだ。
夜中に着いても予定なんかまるでナシだが、まずは降り立たなきゃ始まらないよな!