対馬旅 7月2日 その3
#夢中スパート
それからだいぶ標高を下げ、ようやく霧は晴れる。
そしてあれは。
ひょっとして、厳原の町か?
おおっ、帰ってきたか!!
ここに来て、しばらくアルティメットに乗ってる写真を撮っていない、ということに気づいた。
そしてあわてて撮ってみる。
ウルトライマイチ。
やはり実際に乗り続けて一周したわけでもないと、なんだか全然サマになってないな。
あとはこの長くてキレイな下り坂をくだっていくだけで厳原に着くだろう。
ここはなかなか眺めがいいな。
できればここでもう一回、ライディング写真にしつこく挑んでみたい。
これを逃せば、もういい写真は撮れないような気がするんだ。
この場所のすぐ左側に、カメラを置くのに適したコンクリのテラスのような場所があるのだが、
そこはクルマ屋さんの敷地であって、勝手にカメラを置いたりはできない。
残念だが…ってところで、中からちょうど人が出てきた!
すかさず撮影の許可を求めると、この整備士風のおじさん、許可どころか、
「じゃあ私が撮ってあげますよ。」
とのこと。
おおっ、願ってもない!
厚意に甘えて何度か撮ってもらい、中にはわりと良いモノもあった。
これでひと安心!と思ったら。
「いや、もうちょっといいのが撮れると思う。もう一回やりましょう。」
なんとこのおじさん、写真が趣味というアマチュアカメラマンだった!
自分のカメラならうまく撮れるのに…と無念そうに言いながら、俺に何度もリテイクを迫る。
こうなったら俺も当然、彼が納得するまで何回でも乗るぜ!(短距離なら!)
そしてこれでもかというぐらいに何枚も撮ったが、一番気に入ったのはコレかなぁ。
この写真を見ると、対馬を一週間で一周して、やっと厳原に帰ってきたんだなって感じがするよ。
思いがけず非常にお世話になってしまったカメラ好きのおじさま。
あなたの情熱のおかげでいい写真が撮れました。
どうもありがとうございます!
長い坂を下り終われば、厳原まではあと少しだ。
急速に町が開け、クルマは帰宅ラッシュでちょっと渋滞。
そしてあれは、なつかしの厳原港フェリーターミナル!
あの場所からクロスカブで対馬に降り立ったのは1週間前の未明、雨の中であった。
あれからいろんなことがあったもんだが、とにかく帰ってきたんだな。
対馬一周の完成が実感を伴う瞬間。
厳原市街に入った。
以前はじっくり見られなかった町並みが、徒歩だとよくわかる。
この看板はしみじみとわかる気がするなー。
で、ここは一体何屋さんなんだ。
そしてこれは…。
孫にあまり相手にしてもらえないじい・ばあの熱い訴えなのだろうか。
どちらにとってもいい想い出になることを願ってやまない。
さて。
厳原の町並みが眼下に見えるようになってからは、やたらと強力に脚が動いた。
普段ならもう足裏の痛みで長々と寝そべっているところだが、
すぐ目前にゴールがあると人間、全身を覆うような不思議な力が湧いてくるものだ。
ズッガズッガと早足で歩いて厳原中心部まで来てみたら、時刻は19時。
6月なのでまだ明るいが、午後7時といえばもう夜だ。
こんな時間にバイクを預かっていただいている修行さん宅を訪れるのはご迷惑だろう。
港あたりで野宿して翌朝にすべきだったが、面倒なことに、寝るにはまだ早い。
もうあと2時間ぐらい早いか遅いかすれば簡単に決められたのに、困ったものだな。
しばらく迷いつつ意味なく町をさすらっていた俺。
結局は、思い切ってお宅にうかがうことにした。
家は大通りから脇に入って少し入り組んだ坂の上にあり、迷うこともなくあっさりと到着。
1週間ぶりの帰還だ。
頼もしく俺のバイクを守ってくれていた、気合いの入った犬にワンワン吠えられつつ、チャイムを押す。
そして俺は、トンネル出口以来の修行さん夫妻に温かく迎えられるのであった。
突然の帰着だというのにある程度予想していたような…と思ったら、
俺のブログを見て今日あたりに戻ってくるかもと想定されていたらしい。
それはよかった。
電波と電池が怪しい中でできるだけ毎日ブログを更新していたのは、
1つには夫妻に現在位置を報告するという目的があったのだ。
妙な時間に現れた俺のためにわざわざご馳走とビールとさらに風呂までちょうだいし、
布団まで敷いていただいて思いっきり宿泊コースである。
よもやここまでお世話になってしまうとは。恐縮しきり。感謝しきりだ。
地下足袋で対馬を一周、約250キロぐらい歩いた足。
ジンジン痛むし足の裏も指も分厚く腫れていて血豆みたいなのも一部できているが、
それでもやはり比較的マシな状態だと思う。
もう対馬で長距離を歩くことはないからこれが疲労のピークだ。
ここまで大きなトラブルもなく、よくがんばってくれた。
さすがは俺の足、やる時はやるな!
ラストスパートで痛みや疲れを忘れて歩いたのが今頃になって効いてきた。
今、俺は非常に疲れている。その上、ひさびさの酒だ。
旅の話を夫妻に長々と聞いてもらいながら調子に乗って飲みすぎたようだ。
これはもう限界である。
お母さんにいただいたシップを足の裏に貼り付け、栄養ドリンクを飲み、携帯を充電器に差し込み、、
一度横になったら、もう最後。
朝まで絶対に起きない。