5月19日 旅のリアル

 
イメージ 4
 
小さなロンドンの町を出て、ダーダネル湖を突っ切って走る。
 
昨夜は日本語がたくさん出てくる夢を見た。
まだ先にあるコンウェイなどといった町にもう進んでいるような夢。
ルートについてあれこれ考え過ぎなのだろうか。
 
 
イメージ 1
 
本日最初のマトモな町、ラッセルビルのスーパーで買い物。
 
暑いので水は欠かせない。
最近では1ガロン(3.78リットル)で水を買うのが当たり前になっている。
ガスステーションのコンビニなら2、3ドルはするが、安いスーパーだと1ガロンの水は1ドルもしない。
供給が不安定な国と違って、生活必需品が手に入りやすいのはやはり助かる。
 
クレジットカードがどこでも使えることも非常に便利なのだが、
小額と思ってレシートの値段を毎回確認しないのは悪いクセだ。
これは直さなくては。
 
イメージ 2
 
通りがかりの客のおじさんが、なんと1ガロンの水を差し入れてくれる。
もう買ったって!2つは重いって!泣けるぜ。
特に用もないのに7キロ以上の重りを背負って一輪車で旅をするほど俺はマゾではない。
1つは駐車場の端っこで、盛大に手と顔を洗うことによって消費させていただくのであった。
 
このラッセルビルの町は思いのほか大きく、またクルマも多く、歩いて通過するだけで疲れてしまう。
午前中にはこの町に入ったのに、
結局は午後3時過ぎまであちこちの路肩で休んだり寝たりしながらウダウダしてしまった。
大きい町はつくづく嫌だ。
 
ついでに、数日前から花粉症で目が痒い。
北海道暮らしのおかげでここ数年は花粉症と無縁だったのに、まさかアメリカで再発とは。
だが幸いなことに、ザックの中に日本縦断の時に買った目薬がまだ入っていた。
あれも3年前だから結構古いものだが、ちゃんと効いてくれている。
この目薬とサングラスを併用すれば花粉症はなんとかなりそうだな。
 
イメージ 3
 
ラッセルビル、ポッツビル、アトキンズなどの小さな町を経て、次のモリルトンまであと7マイル。
 
ただひたすら次の町に近づき、通過し、離れる。そして次の町へ。
長旅はこの繰り返しだ。
今まで世界のあちこちで、どれぐらいの町を通過してきたのだろう。
 
イメージ 5
 
下道走行にも慣れてきた。
しかし晴れると暑いなー。ずっと向かい風だしかなわん。
 
アメリカには親切で陽気な人が多い。
が、たまーに、無言でクルマの中から窓を閉めたまま、こっそり撮影してくるヤツがいる。
どう考えても気分が悪い。
まるでサファリパークの珍獣だな。いやまさにそうなのだろう。
やれやれ、安全なところからおいしいとこだけ取ろうとしても、どうせ大したものは得られまいに。
 
逆に、一輪車に乗れ乗れと言って来るヤツは、キューバに比べればずっと少ないが、これもたまにいる。
そういうのはやはり南米系の顔立ちをした人々が多い。
これも人種なんだか文化なんだか。
明るく声をかけてくれりゃあニコヤカに手ぐらい振るものを。
 
とにかく、こういったキモい奴らはこれからもう全部無視しよう。
明るく声をかけてくれるいい人がたくさんいるのもまた事実なんだけどな。
今日もレストランに誘ってくれた若い男がいたりもした。
 
イメージ 8
 
モリルトンの町。ボロいガスステーションで休憩中。
 
大体いつも、こんな感じで休んでいる。
看板の「 NO LOITERING! 」ってのは「たむろするな!」という意味なんだが。
 
イメージ 7
 
店員と客の白人&黒人コンビに話しかけられ、
その流れでバケットスタートを披露することになってしまう。
緊張したのか何度か失敗したが、うまく乗れた勢いでそのまま走り去る。
まぁ、こんな感じで和やかに乗ってみせるならまだいいんだ。
 
夕暮れのモリルトンを出ると、そろそろ寝床を探さなくてはならない時間。
このあたりのハイウェイ64号線はフリーウェイと付かず離れずなので、
いい場所がみつからなければまたフリーウェイの出入口にお世話になるしかないだろう。
 
プラマービルという本当にささやかな町を通過。
ここにも良さそうな野宿ポイントはなかった。
しかし夕方に湧いてくる怪しいパワーのおかげでまだもうちょい走れる!
ってところで、大きな声が聞こえる。
どうやら道から少し離れた場所にある、プレハブ住宅っぽい家からのようだ。
暗くて見にくいが、威勢のよい感じの男性が俺に向かって、
 
「茶でも飲むかー!?」
 
と大声で叫んでいる。
こんな時間に茶って。まぁいいけど。
 
イメージ 9
 
まさしく茶をいただいているところ。
 
この広いとは言えない家には、男性とその奥さん、そして年頃の一人娘が住んでいるようだ。
オヤジさんの方はユニサイクルツーリストに興味津々のようであれこれと尋ねてくれるのだが、
とにかく何がつらいって、他の2名の素っ気なさがつらい。
ダンナが気を遣ってか天然なのか、俺の話題を嫁と娘に振ってくれるも、彼女らはまったく興味がなさそう。
むしろ、「また変なヤツを家に上げて!」という不機嫌そうな気配がもうバッシバシ伝わってくる。
これは居心地悪いぞー。痛い痛い。
 
気持ちはわかるんだけどな。
俺はたしかに胡散臭いし。
そしてこれはあくまでも俺の経験上の話なのだが、
俺がやるような旅のスタイルってのは、男にはウケても女性には理解してもらえないことが多いのだ。
驚いたり珍しがったりはしてくれても、共感のようなものはまず得られない。
男と女では、モノの見え方も、見られ方も違うということだろう。
 
お茶だけ飲んでこの雰囲気をサッサと脱したかったのだが、外はもう暗い。
豪快だが人の良いオヤジさんの勧めもあり、今日はこの家の庭先でテントを張らせてもらうことに。
ヴァン・ビューレン以来の庭先テント泊かー。
それはありがたいんだが一応奥さんにもちゃんとことわっておこうと思い、
「庭でテントを張らせてもらっていいかな?」と聞いてみる。
彼女、クビをタテに振ってくれたよ。実にイヤそうな顔で。
 
イメージ 10
 
なんにせよ、今夜の寝床は決まったようだ。
明日は早朝から出発するつもりだし、この庭を提供してくれた家族とこれ以上交流することはあるまい。
サッサとテントを建てて寝てしまおうか。
 
イメージ 6
 
写真を撮りながらテントを出入りしていたら、偶然オヤジさんが出てきて、水を置いていってくれる。
 
どういうんだろうな、こういう空気。
彼はたぶん、もっと俺と話がしたかったのだろう。
他の家族は、胡散臭い俺が迷惑だったに違いない。
そして俺自身はといえば、ありがたいが半分、面倒だなが半分。
 これが旅の現実だ。
 
よし、寝よう。
今日の走行は68キロでしたよっと。