4月29日(木)その2 アークレイリが黙っちゃいない

よーーーうやく、アークレイリに到着!!


ルンルン気分で、まずは街の中心部を目指す!

おっと、かなりデカい看板を発見。
街の詳しい地図と各種の店や施設が網羅されているな。これはチェックしなければ!

で、地図に向かって走っていこうとしたその時。
道の反対側を走っていたランナーが、おもむろに道を渡ってこっちに来た!

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ちょうど看板の前で鉢合わせになったそのランナーは、かなりのお爺ちゃん。
何やらやたらと話しかけてくるが、アイスランド語はサッパリわかりません!
でもどうやら、一輪車に油を差したほうがいいとかなんとか、そんなことを言っているようだ。
確かに油は差したほうがいいだろう。そして彼の意味不明な話はその後もとめどなく続く!
どうやら今度は、自分が速く走れるというところを誇示したいらしい。
おもむろに反対方向に向かってダッシュして行った!

…ありゃー。まぁいいや。やっとゆっくり地図が見られる。
しかし猛ダッシュで戻ってきた!
そしてまた何やら話し始めるのである。

うーん困った。
アークレイリに着いた途端になんという理不尽な出会いだ。
もう18時半だし、早く落ち着き場所を探したいというのに…。
えーいやむをえん、地図をゆっくり見るのはもう諦めた!

「それではボクは行きます!さようなら!」

そう爺ちゃんに挨拶し、素早く一輪車に乗る!そして走り出す!

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うわああああああ!!ついて来たあああああああ!!!

悪夢だ!せっかく街に着いたのに、なんで俺がこんな目に!!

それからの俺が、普段は絶対にありえない神がかったスピードで激走し、
爺ちゃんを完全に振り切るまで決して振り向かなかったことは言うまでもない。

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ハァ…ハァ…。
なんとか振り切ったか…。
本日の残りの体力をすべて使い切ったような気分だぜ…。

おおっ、さすがはアークレイリ!信号なんて久しぶりに見た!
レイキャヴィークにはあったけど、エギルスタズィールにはなかったよなぁ。

よし、気を取り直して、まずはキャンプ場を探そう。

地図だとキャンプ場は街の中心部から近い位置にありそうだったのだが、
これが地図の怖いところで、実際にはかなりの急坂をのぼって行く必要がありそうなのだ。
キャンプ場を目指して、たくさんのオシャレな店が立ち並ぶアークレイリのストリートを歩く。

うわ…俺、めっちゃ目立ってる!!

平日の19時なのに多くの人で賑わっているショッピングストリート。
そんなところに、
20キロのリュックとヘルメットとマウンテンユニサイクルな人間がいて、目立たないワケがない。

ひえぇぇ、飲食店の中でメシ食ってる人々ですら、驚愕の表情でこっち見てるよ!

『ほらアレ、この前ニュースに出てた変人よ!!』

とか言われてるに違いない!絶対!!

俺はなぁ…ささやかに目立つのは嫌いじゃないんだが、グレートに目立つのは苦手なんだよ!!

人々の視線を縫うようにしてストリートを抜け、急な坂をのぼって行く。
坂をのぼればそこは住宅街だ。
さすがにさっきほどの喧騒はない。

このへんにキャンプ場があるハズだが…。

何度か同じような場所を行ったり来たりしているうちに、
街には不自然な広場のようなものを見つけた。
ちょうどそこに子どもたちが入っていくところだったので、聞いてみる。

「やぁ!ちょっと聞きたいんだけど、ここがキャンプ場なのかな?」

「そうだよ!」

「そっか、やっぱり。ここはきっとシーズンオフだと思うんだけど、テントを建てても大丈夫かな?」

「大丈夫だよ!」

か、軽いな…。
彼らはすぐ近くのスーパーに行ってしまった。
よし、まずはキャンプ場を偵察してみよう。

どうやらこの広場全体がキャンプ場のようだ。野球場ぐらいは充分ある広さ。
シーズンオフでも出入りは自由らしいが、トイレ&炊事場はやっぱり閉鎖中。

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そこにはこんなプレートが。

要するに、6月4日までは閉まってるよと。
街の郊外にもう1つキャンプ場があるらしいけど、
こんな時間からそんな街外れの果てしなく遠いところまで誰が行くものか!

…と言うわけで。
今日はここで寝るとしよう。
明日のことはまた明日考えればいい。

おや、さっきの子どもたちが帰ってきた。

「そこで寝るの?」

「ああ、そのつもりだ。誰かに怒られるかな?」

「大丈夫だよ!」

親切なような軽いようなどうでもいいような…。

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右がフレデリク、まんなかはビョルク。左の子は小さいので英語は話せませんとのこと。

へー、男でもビョルクって名前をつけるのか。
ビョルクと言うのはアイスランドではメジャーな名前らしい。
ハプンで会ったローザもミドルネームがビョルクだったし、
ビョルクという名前の世界的に有名な女性歌手というのもいるそうな。
ちなみに彼いわく、ビョルクは『熊』という意味なんだと。

とりあえず今夜はここでこっそり寝ることに決めた。
後はそうだな、せっかくだから明日のために自転車屋の場所でも聞いておこう。

フレデリクが熱心に自転車屋の場所を教えてくれているちょうどその時、
広場の金網の外側から、一人のおばさんがジーッとこちらを見ているのに気づいた。

あ、しまった。もはや現地住民にみつかってしまった…。
また退去だろうか。つらいねぇ貧乏旅行者は。
とりあえず先手必勝。満面の笑顔で挨拶しとこ。

「ハロー!」

「あなた、ウチに泊まれるわよ。」

「…ええッ!?」

なんだかいきなり過ぎてよくわからないが、泊めてくれるそうです。
信じられない展開だ…。

「アークレイリはいい人が多いからね。」

横で聞いていたフレデリクが、さも当たり前のようにそう言う。

おばさんには少し待ってもらって、まずはフレデリクから自転車屋の場所を教わる。
彼はさっきからニコニコと嬉しそうなのだが、
ひょっとして俺がおばさんの家に泊まれることになったのを喜んでくれているのだろうか。
まだ幼いのにイイ奴じゃないか。
そんなフレデリクに礼を言って別れ、広場から出て、金網の外側にいたおばさんと合流。

「ありがとう、助かります。どうぞよろしく。」

「私はリンダ。家はすぐ近くよ。あ、犬と猫は平気?ウチにはたくさんいるの。」

「全然大丈夫!」

リンダの家は本当に広場のすぐ近くにあった。目と鼻の先と言っていい。
2階建ての家の2階部分が彼女の家らしい。

中に入れてもらうと、さっそく猫が!
しかも玄関先で花瓶を割ってしまった直後らしく、お婆さんが花瓶のカケラを掃除している。
いきなり凄まじい光景を目撃してしまった。

お婆さんはグンラと言う名前で、リンダの母親。
どうやらこの家に住む人間は2人だけ。後は、犬が2匹に猫が5匹!!

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お腹が空いているでしょうということで、さっそく夕食をごちそうになる。
魚のフライのような料理だ。
なかなかうまい。これもある種のアイスランド料理なんだろうか?

この料理の名前が知りたくて、
英語がそんなに得意ではないらしいリンダとグンラに苦労して名前を尋ねると、
フォスクル、という返答が得られた。
フォスクルか…。それはたぶん、『魚』という意味だと思います。

食後、リビングでテレビを観ながら、彼女たちと少し話す。

彼女たちはこのテレビでニュースを観て、俺の存在を知った。
そして今日、家から広場のほうを見ていて偶然に俺をみつけ、声をかけることにしたんだそうな。
へー。そりゃ確かに偶然だ。
それにしても、女性2人の家によく俺のようなナイスガイを泊める気になったものだ。
やはりテレビに出ているというだけで、なんとなく安心感が芽生えてくるものなんだろうか。

テレビの天気予報をチェックしていると、
なんと、日、月、火、水と4日連続で雨っぽい。
今日は木曜日なんだが…うーんこれは、実に難しい。

天気予報を見ながら悩んでいる俺を見て、
「なんなら明日も泊まっていいのよ。」と言ってくれるリンダ。
すごい。どうやったらそこまで人に親切にできるんだ。

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通されたのは、娘さんの部屋。
娘さんは今はレイキャヴィークに住んでいて居ないのだという。

おおっ、まさか女の子の部屋に泊まることになるとは!!
似たようなことが確か台湾でもあったな。
それにしても、布団のカバーまで猫なんですね…。

ふーっ。
なぜかマトモなベッドで寝ている。
なんでこんなことに…。
眠いし疲れているのに、眠れない。どこか緊張している。
もてなされるのも難しいものだ…。

まだうまく、自分のおかれている環境を理解できていないのかもしれないな。

まぁいい、明日考えよう。