4月30日(金)その1 街にさまよう

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朝起きて部屋を出たら猫がお出迎え。
油断してると部屋の中にも入ってくるからな…それだけは阻止しなければ。

昨日このお宅に入った瞬間からずっと思っていたんだが、
この家、毛が凄い。
でもきっと住人はまったく気にならないのだろう。

これは愛だ。そして慣れだ。

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さっそく朝食を出してくれるグンラ(73)。

「たくさん食べてストロングになるのよ!」

その言葉どおり、全力で止めるまでは無限にトーストが出てきそうな雰囲気である。

グンラの手作りというジャムがとてもおいしいのでそればっかり塗って食べてたら、
「バターは塗らないの?」としきりに勧めてくれる。
どうやら俺が遠慮していると思っているようだ。

バター、というかこれはマーガリンだが、日本でもほとんど食べないものはやはり外国でも食べない。
でもグンラには英語がそれほど通じないので、うまく説明もできない。

「アイスランド人って、なんにでもバターをつけて食べるよね…。」

しみじみとそう語っていたヴァレリオのことを思い出した。

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ちなみに足元には犬が待機中。
この家の動物たちの中では比較的おとなしめでお利口な娘さんです。
名前はソールかな。

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どうやら今夜もここに泊めてもらうことになりそうな流れになっているが、
だからといって一日中家の中にいるのもつらい。

自転車屋を探してくると告げ、街の散策に出発!

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アークレイリのショッピングストリート。
昨夜はかなりの人がいたのだが、今朝はまだ早いのか、閑散とした様子。
これなら誰にも怪しまれることなく写真だって撮れる。

とりあえず、港のほうにでも行ってみるかー。

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おや、これはケンパのようなものだろうか?
同じようなのがあちこちの道路に書かれているので、
たぶんアークレイリのお子さまたちの間ではメジャーな遊びなのだろう。
時々2が反対になってたりするのは世界共通らしい。

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アイスランド第2の都市だけあって、港もそれなりに立派。
朝から造船所の機械音が鳴り響いている。

ここだけ見てると景気が良さそうにも見えるのだが、実はこの国は経済破綻中なのだ。

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船の名前がスレイプニル。
北欧神話に出てくる馬の名前だ。
さすがは北欧。

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ついでにアイスランドのビール、ヴァイキングの工場を発見。
アイスランド語の発音としては、ヴィーキングのほうが近いのかもしれない。

ちなみにアイスランドのスーパーでは、
日本では発泡酒にあたりそうな、ライトビールというアルコール度数の低いものは買える。
たいがいジュースと一緒に売られているので、大して酒だと思われていないフシがある。
その他のちゃんとした酒は、飲みに行くか酒屋に行かないと買えないシステムになっている。と思う。

さて、そろそろ本来の目的である自転車屋を探すとするか。

昨日場所を聞いたフレデリクが『だいたいこのへん』と教えてくれたあたりに行ってみるが、
俺が何か勘違いをしているのか、どうも見つからない。
試しに近くにあったデカいショッピングセンターに入ってみると、オシャレな自転車屋を発見。
しかしここはオシャレ過ぎて、細かい修理をしてくれそうな感じではない。

その時、ショッピングセンター内にあるファーストフード店の開店を待っていた風なオジサンが、
おもむろに話しかけてきた。

「キミはひょっとして、そのユニサイクルを修理したいのか?
 それならこの店ではダメだ。近くにいい店がある。場所を教えよう。」

詳しく教えてもらった場所は、たぶんフレデリクの言っていたのと同じ店だ。
やはり俺が場所を少し勘違いしていたらしい。実はもっと遠かった!
アークレイリは俺が思っていたよりもずっと広い街のようだ。

目印のトヨタの店で国道から左に入り、ゴチャゴチャした工場地帯を歩いて行くと、
どうやらそれらしい自転車屋を発見した。かなり大きく、色んな自転車が置いてある。
近寄っていくと、開店準備中らしき店内から中年の男が出てきた。

「こんにちは!実は、このユニサイクルの修理をお願いしたいんだけど。」

「……。」

「ほら、ここからブレーキフルードが漏れてるみたいなんだ。直せるかな?」

「それは直せない。レイキャヴィークに行け。」

おい!ロクに見もせずに即答かよ!それでもプロか!?

「オッケー、あなたでは直せないと言うことだな。よくわかったよ。」

速攻で撤収。
なんなんだアレは…。
ヤル気がなさ過ぎるというか、もうそれ以前の問題だった。
アジア人嫌いとか外国人嫌いとか、そういうことだろうか?
よくわからないが、とにかく、アイスランドにもああいう人がいるんだな……。

もはや自転車屋はアテにならない。
気を取り直して、やっぱりこの程度は自分で直すとしよう。

ホームセンターを見つけたので入り、そこで小さなスパナを1本買う。
そしてさっそく修理を試みる。
うーん、どうかなぁ。イマイチかも知れない。

やれやれ。
難しいと思ったことが簡単に解決したり、簡単だと思ったことが意外に難しかったりする。
これも旅の醍醐味ってヤツなのかなぁ。

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街の中心部にあたる広場は、昼を過ぎてもこんな感じ。
昨夜の喧騒は一体なんだったのだろうか。

ふぅ、散歩に疲れた。
アークレイリが広いことはよーくわかったよ。
そして、目的を見失った。俺は今一体何がしたいのか。
外国を1ヶ月も旅していると、時々はこんな感じになるものかもしれない。

さっきスーパーで昼メシがわりに買って食べたデンマーク製のラズベリーケーキは、
大きくて安かったがメチャクチャ甘かった。

あー、牛丼みたいなのが食いたいな。

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坂の上の教会からアークレイリを見下ろす。
家がたくさんある。

もっと何か、グッと来るものが欲しい。
良かれ悪しかれ、人は慣れてしまうのだ。
アイスランドに来た初日は、外国を一輪車で走っているというだけで興奮したのに。

退屈しないためには、常に新しい刺激が必要なのかな。
それはそれで、難儀なことだ。

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アークレイリの植物園、というのに来てみた。
妖怪人間ベムの背景にしか見えない。

今日は晴れているが、今後の天気がどうもよくない。3日連続で崩れるらしいのだ。
その間、やはりこの街でやり過ごすのが得策なのだろう。

「ここを自分の家だと思って自由に使ってちょうだい。」

リンダはそう言ってくれるが、さすがにそう何日もいられない。
かと言って、最初に泊まろうと思っていたキャンプ場はリンダ宅の超目の前。
今さらキャンプ場に移るわけにもいかない。

親切にも泊めてくれる人がいるというのに、ゴチャゴチャとぜいたくなヤツだな。
でも、感じることは止められない。

そろそろ戻るとするかー。