5月13日(木)その2 マリアの園
今この人、コーヒーをご馳走したいって言った?
なんだかとてもハキハキと元気よく、鬼気迫った感じで話すこの男。
てっきり「大丈夫か?」とか「クルマに乗って行くか?」とか言ってくるのかと思ったら、
なんとお茶のお誘いかよ!!
てっきり「大丈夫か?」とか「クルマに乗って行くか?」とか言ってくるのかと思ったら、
なんとお茶のお誘いかよ!!
すっかり意表を突かれて、フラフラと彼に着いていってしまう俺。
トラックの車内には、おばさんと背の高い若い男も乗っていた。家族だろうか?
俺はこの場でポットか何かに入ったコーヒーを振舞われるのかと思っていたが、
どうやらそうではなかったらしい。
男は俺のユニサイクルと激重リュックをポイッとトラックの荷台に乗せ、
「さぁ乗ってくれ!」と俺を促す。
俺はこの場でポットか何かに入ったコーヒーを振舞われるのかと思っていたが、
どうやらそうではなかったらしい。
男は俺のユニサイクルと激重リュックをポイッとトラックの荷台に乗せ、
「さぁ乗ってくれ!」と俺を促す。
トラックの中に横並びに4人。さすがに狭い。
彼は異様なテンションで何か話しているが、英語はあまり得意ではないのか、
基本的には「ビューティフル!!」とあまり脈絡もなく連呼している。
基本的には「ビューティフル!!」とあまり脈絡もなく連呼している。
しかしありがたいことに女性のほうは常識的な人であるらしく、ニコニコしながらも、
「彼はおもしろい人でしょ。ちなみに私の夫じゃないわよ。」
と、聞いてもいないのに説明してくれるのだった。
トラックは幹線道路を左折して脇道に入る。
どうも俺が行こうかなーと思っていたロウガラウスに向かうらしい。
どうも俺が行こうかなーと思っていたロウガラウスに向かうらしい。
クルマはさすがに速く、あっという間にロウガラウスに着く。
しかしここ、町と言うよりは完全に農村だ。
道は砂利ダートだし、店があるかどうかも怪しい。
しかしここ、町と言うよりは完全に農村だ。
道は砂利ダートだし、店があるかどうかも怪しい。
トラックで連れてこられたのはここ。
オーガニック・ハーブ・ファームと書いてあるな。
中にはビニールハウスがたくさんあって、
トラックから降りた俺はさっそくそのビニールハウスの1つに案内される。なんで?
トラックから降りた俺はさっそくそのビニールハウスの1つに案内される。なんで?
中には野菜の世話をしているおじさんが。
どうやら彼女の夫はこっちらしい。
「やぁ、ようこそ!キミは日本から来たんだね。ぜひ見せたいものがあるんだ!」
彼はそう言って、世話している野菜を指し示す。
「これはミズナだよ。日本の野菜だろう?」
おぉっ、水菜。
言われてみれば確かに水菜だ。
言われてみれば確かに水菜だ。
他にも小松菜?やらチンゲン菜?やら、名前はわからんけど見たことはあるような、
日本や中国の野菜がたくさん植えられている。
日本や中国の野菜がたくさん植えられている。
「私はアイスランドで実験的にアジアの野菜を作っているんだ。
いずれは出荷して、アイスランドのスーパーにアジアの野菜が並ぶようにしたいんだよ。」
いずれは出荷して、アイスランドのスーパーにアジアの野菜が並ぶようにしたいんだよ。」
へー、それはすごいな。
そもそも野菜が少ない上に輸入品が多いアイスランドのスーパーに、
近々国産のアジアン野菜が並ぶかもしれないというのは夢のある試みだ。
こんなところにおもしろいことをしている人がいるもんだな。
そもそも野菜が少ない上に輸入品が多いアイスランドのスーパーに、
近々国産のアジアン野菜が並ぶかもしれないというのは夢のある試みだ。
こんなところにおもしろいことをしている人がいるもんだな。
でもこの人、なんでまた日本の野菜なんか植えようと思ったんだろう?
そう思ってると、さっきのおばさんに連れられて若い女の子がやって来た。
「はじめまして。私はマリアです。日本に留学したことがあります。」
えっ、そうなの…?
この家の娘であるらしいマリアが、父に代わって温室内の野菜をあれこれと説明してくれる。
どこからかもう1人小さい女の子が現れて一緒についてくるけど、この子はマリアの妹かな。
どこからかもう1人小さい女の子が現れて一緒についてくるけど、この子はマリアの妹かな。
マリアとブッパ。
また随分と仲の良い姉妹だな。
やがて温室を出て、マリアに連れられて農園のあちこちを案内される。
「これは桜。去年はたくさんチェリーができたけど、今年はできないの。なぜかしら。」
おぉっ桜!まさかアイスランドで桜を見るとは思わなかった。
でも花のカタチが何か違うような気もする。
サクランボができるぐらいだから何かまた別の品種なんだろう。
でも花のカタチが何か違うような気もする。
サクランボができるぐらいだから何かまた別の品種なんだろう。
今年はチェリーができないという問いについては、
「たぶん花粉を運ぶ虫がいないせいだろう。」
とかなんとか、知ったかぶりで適当なことを吹き込んでおく適当な俺。
この農園、なぜか立体植物迷路がある。
家族みんなで作ったんだそうな。
遊び心に満ち溢れた楽しい一家なんだな。
俺としては、逃げるブッパを追うので精一杯だ。
そして路頭に迷うブッパ。マリアが応援している。
俺はもうゴールに着いてるんだが…君は逃げてたんじゃなかったのか。
そしてお茶に呼ばれる。
どうやら俺をお茶に呼ぼうと言い出したのは、あの異様な男ではなく彼女であったようだ。
ニュースに出ていた日本人の俺を道で偶然発見したので、
日本野菜を作っている夫と日本に留学していた娘に会わせてやろうと思ったらしい。
ニュースに出ていた日本人の俺を道で偶然発見したので、
日本野菜を作っている夫と日本に留学していた娘に会わせてやろうと思ったらしい。
これはステビアのハーブティーだそうな。
ステビアって甘味料に使われるやつか。実物の草は初めて見たけど、やっぱり甘い。
そしてお土産に四葉のクローバーと大量のプチトマトを貰った。こんなにたくさんどうせよと。
ここで初めてマリアとゆっくり話す機会ができたので、色々と聞いてみる。
彼女はダイナマイトボディなわりにまだ女子高生。
去年まで1年間、交換留学生として鹿児島の高校に通ったそうだ。
日本語は日常会話ぐらいなら充分できる模様。大したもんだ。
今はレイキャヴィークの学校に通っているが、今日は実家でテスト勉強をしているらしい。
彼女はダイナマイトボディなわりにまだ女子高生。
去年まで1年間、交換留学生として鹿児島の高校に通ったそうだ。
日本語は日常会話ぐらいなら充分できる模様。大したもんだ。
今はレイキャヴィークの学校に通っているが、今日は実家でテスト勉強をしているらしい。
ふーん。
アークレイリに居たころに思いつきで日本に興味のある学生と会いたいと思ったことはあったが、
まさかこんなところで日本に留学してた女の子と出会うとはな。
アークレイリに居たころに思いつきで日本に興味のある学生と会いたいと思ったことはあったが、
まさかこんなところで日本に留学してた女の子と出会うとはな。
マリアともう少し話をしたいところではあったが、
彼女はテスト勉強があるので、そちらに専念してもらうことにする。
彼女はテスト勉強があるので、そちらに専念してもらうことにする。
で、俺とブッパだけが残された。
この小さな女の子としばらく話しているうちに、ふと気づく。
彼女は8歳だというが、8歳にしては妙に賢い。
さっきは無邪気に迷路で路頭に迷っていたのに、今は何かを質問すると必ず的確に答える。
彼女は8歳だというが、8歳にしては妙に賢い。
さっきは無邪気に迷路で路頭に迷っていたのに、今は何かを質問すると必ず的確に答える。
そこでわかったことは、ブッパはマリアの妹ではなく、あの異様な男の娘であること。
あの異様な男、フラフンの家はこの近くにあって、この家とは家族同士の付き合いであるらしい。
トラックに同乗していた若い男はフラフンの息子ではなく、彼の仕事のパートナーのデビット。
そして俺は今夜、フラフンとブッパの住む家に泊まることができる、とのこと。
あの異様な男、フラフンの家はこの近くにあって、この家とは家族同士の付き合いであるらしい。
トラックに同乗していた若い男はフラフンの息子ではなく、彼の仕事のパートナーのデビット。
そして俺は今夜、フラフンとブッパの住む家に泊まることができる、とのこと。
ブッパの家って…。
つまりトラックの中でフラフンが、「ビューティフルホステル!」とか叫んでいたヤツか。
ビューティフルホステル…。ある意味、興味はあるな。
つまりトラックの中でフラフンが、「ビューティフルホステル!」とか叫んでいたヤツか。
ビューティフルホステル…。ある意味、興味はあるな。
そもそも俺、ここでお茶をご馳走になったのはいいが、
それ以降のことはまるで決まっていないのだ。
ブッパ宅に泊めてくれるというのであれば、そうさせてもらうのもいいかも知れない。
それ以降のことはまるで決まっていないのだ。
ブッパ宅に泊めてくれるというのであれば、そうさせてもらうのもいいかも知れない。
ブッパにそう伝えると、彼女は「じゃあ早くウチに行こう!」と俺を急かす。
そこでお茶をご馳走してくれたおばさんに一言挨拶をしようと思って母屋のベルを押すと、
なぜかおばさんではなくマリアが出てきた。
そこでお茶をご馳走してくれたおばさんに一言挨拶をしようと思って母屋のベルを押すと、
なぜかおばさんではなくマリアが出てきた。
そこでマリアにこれからブッパ宅に行くことを告げ、
ついでにレイキャヴィークで再会する約束もしといた。我ながら見事な手際である。
ついでにレイキャヴィークで再会する約束もしといた。我ながら見事な手際である。
結構広いマリアの農園を出たら、入り口にこんなモノが。
正直、不気味だ。