7月5日#2 食いまくろう ブラックベルト
そんなわけで、ハバナの中華街に来てみた。
前に来た時は真っ暗闇だったので規模なんてまるでわからなかったが、
こうしてみるとチャイナ風エリアは思ったりも狭いようだ。
日本の中華街でいえば、神戸以上横浜未満ってところかな。
しかしそんなことよりよほど気になるのは、中華街なのに中国人がいないこと。
道行く人々も店の従業員もみんなキューバ人で、アジア人種をまず見かけない。
一体どこにいるんだ中国人。ひきこもりか。
そして中華街なのにキューバ人の婆さんにチーノチーノとしつこく呼ばれる俺も一体なんなんだ。
結局、中華街で目ぼしいものは見つけられなかった。
まぁもうじき日本に帰るんだし、なつかしの味わいにこだわる必要もないか。
非常に暑いとすぐ喉が乾く。
中華街の外れでようやく缶ビールとジュースを買えそうな店をみつけて喜んだのも束の間、
なんとビールは20ペソクワーノ、ジュースは1CUCだと言われた。
同じ店に並んでる商品なのに何それ!?
ビールはコーラの2倍程度はするはずなのに、この店ではビールより缶ジュースのほうが高い。
なぜだ。
答えはシンプルで、ジュースが割高だから。通常の2倍以上の価格なのだ。
なぜこういう料金体系なのかは謎だが、きっとこの店にとっての経済的必然なのだろう。
こういうところからなんとなく二重通貨制の混迷ぶりを感じてしまう。
中華街を出て、屋台でまた地獄から甦って来たぐらいに甘いケーキを食う。
でもこの甘さが暑い国には合うのだよ。
今日のペソクワーノ使用額、これでもまだ60ペソ。
ハバナでは1日100ペソもあれば身体に悪影響が出るぐらいに食えそうだが、
そんなペースでは全然なくならないのだ!
はあ。
やっぱり街をただ歩いてもおもしろくないな。
どこも同じだ。ただ広大なだけ。
そりゃあ東京だって大阪だって、ただの市街地を歩きまくったところで楽しくないもんな。
同じ街に何日も滞在するのは、やはり俺には合わないものらしい。
それでもまだ4日間はキューバにいなければならない。
もう明日が帰国ならいいのに。
適当に散策を切り上げ、カサに戻る途中でまたしても近所のメルカードに寄ってみる。
今日はそこのおばちゃんにそそのかされて、スゴイモノを買ってしまった。
フルタボンバという果物。直訳すると爆弾フルーツか。
名前のとおりと言うべきか、左にある俺の手やマンゴーと比較しても明らかにデカい。
これが1コ22ペソ。
3ペソのマンゴーと比べてさすがにいい値段だが、さて味はいかに。
とりあえず、絶対に一人じゃ食えなさそうだ。
さらにトドメとして、朝も寄ったカフェテリアでまたステーキ挟みを食う。
同じ値段で名前が少し違うメニューを意味もわからず頼んでみたら、
パンからハミ出すあの肉が今度は揚げられている。
前のは焼いてたよな。なるほど名前の違いはこういうことなのか。
これもボリュームがあってうまいけど、個人的には焼いたヤツのほうが好みだな。
店のメニュー。
よくよく見ると、右下に50ペソもする高いメニューがある。
50ペソのメニューなんて初めてみた。レストランかよ。
ちょうど隣のお姉さんが注文したので観察してみたら、なんとこのメニューは皿に盛られたプレート料理だ。
おぉ、ちゃんとしたメシじゃないか。
これは明日にでも試してみたい。
今日はムリだ。なぜならフルタボンバが控えているから。
カサに戻り、アレハンドロを見つけて声をかける。
「実は、君たち家族に手伝ってもらいたいんだが…。」
そう言って巨大なフルタボンバを見せる。
もちろん一人じゃ食えないから一緒に食べようという意味なんだが、
なんとアレハンドロ、コイツをその場で切ってくれて、しかも全部を渡してくれる。
「え、一人じゃ多すぎるって!」
そう訴えても、
「冷蔵庫に入れとけばいいんだよ!」
爽やかな笑顔でこうおっしゃる。
おいおいおい…。
うわあ、これはちょっとなあ。
まぁいい。とりあえず食ってみる。
あー、意外とうまい。でも見た目ほど甘くない。
大味なメロンにちょっとブドウ果汁を混ぜたような味。
薄々感じていたが、フルタボンバとは結局、大きいパパイヤのことだと考えて良さそうだ。
大きいパパイヤ。
脳内に『巨乳』というコトバが駆け巡ったりするハズがない。
そんなわけでフルタボンバは嫌いじゃない味わいなのだが、とにかく多い。圧倒的に。
気合いで半分まで食って降参。
しかしこの部屋の冷蔵庫、残りのボンバ半分を入れるスペースなし。
でもなんでフルタボンバってこんな特殊な切り方をするんだろうね。
メルカードで切り売りされてるのもそうだった。
日本ならスイカみたいにまっぷたつにしてそうだが、何か意味があるんだろうか。
食べやすいから?
それとも切りやすいから?
ホテルの1階にあるハイソなCUC売りのスーパーで買ってきた変なジュース。
サンティアゴぐらいから、もはや変なジュースを見つけては買って飲むぐらいしか楽しみがない。
そして期待どおりの変な味。
フルタボンバとの相性も微妙。
色々食ったがシメは今夜もマンゴー。
正直もうフルーツは食いたくない気分なのだが、買ってしまったんだからしょうがない。
ためしに冷蔵庫で冷やしてみたらそれなりにうまいけど、マンゴーは別に冷やさなくてもいいと悟った。
満腹かつフルーツに飽きているこの状態ですら、マンゴーはボンバよりも美味。
やはり南国のフルーツといえばマンゴーである。
ところでマンゴーはともすると刺身の味がするとよく思うが、今回は肉の風味を感じてしまった。
つくづく不思議な果物だ。
あー、もうダメだ。今日は食い過ぎた。ダウンだ。
フルーツはしばらくいらない。見たくもない。
フルーツはしばらくいらない。見たくもない。
そしてこれだけ全力を尽くして買い食いしたのに、使ったのはたった108ペソクワーノ。
やはり銀行で両替せざるをえないのだろうか…。